毎年夏になると、猛威をふるう台風。年々威力を増しており、人的・物的被害を及ぼすことも増えています。いざ接近したとき、どういう行動を取るべきなのか、平常時から把握しておきましょう。今回は、普段からそして台風上陸時に、それぞれチェックすべき情報やサービス、連絡手段などを、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに教えていただきました。
この記事でわかること
普段からしておくべきことは?
「ハザードマップ」で危険度と避難経路をチェック!
まずは、自分の住む場所にはどういった危険が潜んでいるのかを把握するために、ハザードマップを確認することが大切です。
「ハザードマップとは、その地域にある災害のリスクの有無や想定される被害の大小を示した被害予想図のこと。台風や地震、洪水、高潮、土砂災害、火山など、災害別に用意されています。
ハザードマップではまず、災害の種類によって、どのような場所にどんな指定避難場所があるのか、避難場所への避難経路を確認することが大切です。避難場所に指定されていた場所が、別の災害時には危険になる場合も。地震や土砂崩れの場合はこの避難場所へ、でも、浸水時にはこの場所は危険になる、といった具合です。また、災害時には通行規制の入る可能性が高いルートについても、ハザードマップには記されています。台風によって家屋が倒壊した、床上浸水をしたなどというときに、どの経路でどこへ避難をすればいいかを想定しながら、台風に関するハザードマップに沿って実際に歩いておきましょう。
ハザードマップは、一般的に市役所や区役所に置いてあったり、自治体のホームページからプリントアウトができたりします。自治体でハザードマップを発行していない場合は、国土交通省が公開している『ハザードマップポータルサイト』から入手できます」(災害機器管理アドバイザー・和田隆昌さん、以下同)
国土交通省「ハザードマップポータルサイト」https://disaportal.gsi.go.jp
ニュースでは何をチェックする?
台風の進路と大きさを確認すること
台風が発生した際、こまめにチェックしたいのはその進路予想です。
「気象庁では、台風の実況を3時間ごとに発表しています。その内容は、台風の中心位置、進行方向と速度、中心気圧、10分間平均の最大風速、最大瞬間風速、暴風域、強風域です。地震と違って、台風は事前に予想して備えることができるので、台風の状態や進路はこまめにチェックしておきましょう。
このとき、台風の中心から見て、自宅や今いる場所が左側なのか右側なのかによって、風力も雨量が大きく変わってきます。ニュースを確認するときには、『台風の中心から見て東側の地域は注意してください』など、台風の回転方向と進行方向に関する情報にも注目して、確認をするようにしてください」
普段から使い慣れておきたい、
台風情報に役立つおすすめ無料防災アプリ4
最新の台風情報にリスクのプッシュ通知、欲しい情報へのアクセスなどはアプリを使うのが便利です。ここでは、台風情報をキャッチするのに便利なおすすめアプリを4つピックアップしました。
・知りたい地域情報をプッシュ通知でお知らせ
「防災用のアプリをなにか入れておきたいという場合は、こちらがよいと思います。4000万ダウンロードされている人気のアプリで、現在地ほか、自宅や職場、実家など、国内3地点まで設置が可能。登録した地域の災害発生情報をプッシュ通知で知らせてくれます。災害状況をユーザー同士で共有できるので、どんな災害がどこまで迫っているのかをリアルタイムで把握できるのも便利です」
・全国に支局を持つNHKだからこその情報網
「マップ機能では雨雲の状況のほか、河川の氾濫、河川のカメラ画像などを確認できます。洪水や土砂災害のハザードマップも掲載されているので、地域の災害リスク対策をする際にも便利。最大3地点まで地域指定登録ができるので、実家や職場の気象・災害情報や避難情報についてもいち早くチェックできます」
・台風の動きを詳しく確認するなら!
「気象予報のプロ集団が24時間体制で気象情報をチェック、更新しているところが人気です。AIを活用した高解像度な雨雲レーダーや、予報精度は90%以上というのが他の情報との差だといえます。月額360円の有料版になると、異なる3つの台風予測を比較したものをチェックできるので、より備えがしやすくなります」
・余計なものがないシンプルさが魅力!
「日本気象協会が発表している天気に関する大元の情報が手に入ります。天気、気温、降水確率、湿度、降水量、風向きや風速について、1時間ごとの変化が把握できます。津波情報、警報注意報、台風情報などがまとまって表示されるので、欲しい情報が見つけやすい。台風の動きや大きさなどの正確な情報をチェックしたいときは、このアプリが使いやすいでしょう」
おさえておくべき通信手段は
「171」と「ファイブゼロジャパン」
今や誰もがスマホを持っているので、災害時にもすぐに連絡がつくと思いがち。
「もちろん、連絡がつく場合もありますが、アクセスが一気に集中する可能性や、通信網が被害に遭うことも想定されるので、災害用伝言ダイヤル(171)の存在と使い方は把握しておきましょう」
災害用伝言ダイヤル(171)〜伝言の録音方法〜
1)「171(イナイ)」に電話をかける。
2)ガイダンスに従って、録音の「1」を入力。
3)電話番号を市外局番から入力する。携帯番号でも可。
4)数字の「1」を入力。
5)「避難所の○○にいます」などとメッセージを録音して、「9」を押す。
身内など、特定の人以外に伝言を聞かれたくない場合は、(2)の工程で暗証番号を利用する録音の「3」を入力する。ただし、暗証番号は事前に決めておき、家族で共有することを忘れずに。
災害用伝言ダイヤル(171)〜伝言の再生方法〜
1)「171(イナイ)」に電話をかける。
2)ガイダンスに従って、再生の「2」を入力。
3)登録している電話番号を市外局番から入力する。携帯番号でも可。
4)数字の「1」を入力。
5)「避難所の○○にいます」のメッセージを確認できる。
「また、災害時に無料開放される公衆無線LANサービス「00000JAPAN」を選択すれば、パスワードの入力なしでフリーWi-Fiにつながります。これを使えば、普段通りにLINEやメッセンジャーで、家族との安否確認が可能になります。ただし、多くの人のアクセスが集中するので、安否確認や避難所の情報収集など、必要最低限の内容での利用にとどめ、緊急でないことや動画視聴などの使用は控えましょう」
台風や地震などの防災を考えるときに、どのように避難するべきなのかを把握しておくことが大切だという和田さん。そのためには、自分の住む場所のハザードマップを手に入れて、日ごろから確認しておくべきだそう。防災に役立つ無料アプリもたくさんあるので、いろいろと触れてみて、自分に合ったものをスマホに入れておくことも、情報迷子にならない秘訣です。
【プロフィール】
防災士・災害危機管理アドバイザー / 和田隆昌
元アウトドア雑誌の編集長。豊富な知識を活かした災害リスクの専門家。災害や危機管理問題に積極的に取り込んでいる。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。屋外でのサバイバル方法やSNSの災害時利用法などリアルな防災対策を行なう。自治体の災害対策マニュアルの作成やセミナーの開催も。主な著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』(ゴマブックス)があり、講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。
HP= http://trend-risk.com