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音楽
2016/10/31 20:00

朱里エイコ「窓あかり」にみる女の純情

ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第2夜

こんばんは。ギャランティーク和恵です。めっきり寒くなってきましたね。秋もあっという間に終わって、冬の気配がすぐそこまで感じられます。明日からは11月。11月と言えば、11月9日にはワタシのCD「ANTHLOGY#3」が発売され、そのリリース記念として11月5日にライブ「anthology vol.3」が南青山MANDALAで開催されます。あ、早速宣伝でごめんなさいね。

 

「ANTHOLOGY」シリーズは、3ヶ月に1度のペースでリリースしていまして、今年の4月に第1弾を出してから、7月、そして11月と続き今回が3枚目になります。毎回、その時の季節感や物語を意識した歌謡曲を3曲、ワタシなりに選曲し、そしてカバーしています。今回リリースするにあたって決めたテーマは「秋冬」、そして「叶わぬ恋」です。ワタシの得意分野でございます。

 

歌謡曲には、どちらかというと幸せな恋の歌よりも、報われない恋の歌のほうが多い気がします。よく営業などで結婚式で歌謡曲を歌ってほしいと頼まれることがあるのですが、だいたいワタシが唄う歌は、別れ歌だったり、道ならぬ恋の歌ばかりで、結婚式には全く向かないタイプの歌手なのでいつも困ってしまいます。結果、新沼謙治さんの「嫁に来ないか」を女装で唄うという支離滅裂な感じで、まぁそれはそれでウケてくれるんですけど。

 

【今夜の歌謡曲】

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02.「窓あかり」朱里エイコ
(作詞/山口洋子 作曲/梅垣達志)

 

話は戻って、今回の「ANTHOLOGY#3」で選ばせていただいた曲は、ハイ・ファイ・セットさんの「燃える秋」、朱里エイコさんの「窓あかり」、梓みちよさんの「クリスマス・イブ・シック」という3曲です。どの曲も情念深く、そして叶わぬ恋に心を揺らす女心が描かれていて、どちらかというとあまり幸せな歌ではありません。でも、どれも大好きな歌でワタシのライブでもよく歌っていて、特に、朱里エイコさんの「窓あかり」には、並々ならぬ思い入れがあります。

 

朱里エイコさんという歌手については、あまり語られることはないかもしれませんが、一般的には「北国行きで」のヒット曲でお馴染みですね。日本人離れしたパンチのある歌唱力の持ち主で、ラスベガスの舞台でも活躍した実力派、というイメージかと思われます。似たようなタイプの歌手で、しばたはつみさんがいらっしゃいますが、この朱里エイコさんとしばたはつみさんの大きな違いは、しばたはつみさんは、歌もダンスもスマートで完璧なのに対し、朱里エイコさんはどちらかというとカロリー高めでちょっとばかり「鈍臭い」というところかと思います。これ、貶しているように思われるかもしれませんが、ワタシにとっては愛情表現です。この、「ちょっぴり鈍臭い」朱里エイコさんが「窓あかり」という歌に出会っていなければ、きっとワタシはこの曲を好きになり、そして歌おうとは思わなかったかもしれません。

 

「窓あかり」という歌は、簡単に言うと男に捨てられる歌で、しかも、たった2週間しか付き合ってもらえなかったみじめな女の歌です。それなのに、ずーーーっとその恋愛を引きずっていて、しかも今頃その男は他の女を抱いてるのでは……と想像してはモンモンとしてるくらい、引きずってます。でもそれをこの歌の主人公は、「1番綺麗な恋」だったと言ってしまうのです。なんて純情で不器用なんでしょう……。しかし、そんな詩の世界が彼女のなかの「純情」さや「不器用さ」を引き出し、妙なリアリティが生まれているのです。しかも、どこかワタシ達「ゲイ」の世界のゆきずりな恋愛体質とシンクロするところがあり(というと半分のゲイの方たちから怒られそうですが、半分のゲイの方たちは頷いてくれると思っています)、ワタシにとっても非常にシンパシーを感じてしまう歌なのです。

 

恋愛に不器用で臆病になり、恋愛を諦めてしまうようなタイプって、この歌で歌われているように「つかまえ損ねた恋こそ美しい思い出になってしまう」体質の方、多いんじゃないでしょうか?それって美化されてつい陶酔しがちですが、やっぱり幸せになれるタイプじゃないんですよね。そんな主人公を、朱里エイコさんのハスキーな声に乗った純情な女心と、ちょっぴり大味で鈍臭い(愛です!)身振りで歌われることにより、この歌の不器用でみじめな女の姿が見事に描き出されているように思えるのです。これはしばたはつみさんでは出せない世界だなと思います。しばたはつみさんも大好きな歌手の一人なんですけどね。

 

2008年くらいでしょうか。CSチャンネルで再放送されていたTBSの伝説の歌番組「<サウンド・イン・S>」で朱里エイコさんがこの曲を歌っているのを観て、「この曲はワタシが唄うしかない!」と勝手な使命感を抱いてから以降、ずっとずっとこの曲を大事に歌い続けてきました。

 

そしてこのたび、とうとうワタシの歌唱での「窓あかり」を録音することになりました。ワタシのライブでいつもサポートしてくださっている素晴らしい演奏の皆さんに加えて、今回はゲストミュージシャンとして、ヴァイオリニストの斎藤ネコさんに参加していただきまして、ネコさんの素晴らしい弦の音色と共に、ワタシにとって大切なこの曲を音源としてパッケージ出来たことは本当に幸せです。ぜひ、ギャランティーク和恵バージョンの「窓あかり」も聴いてみてくださいね。きっと気に入ってもらえると思います。だって、朱里エイコさんと同じようにワタシ自身も、とっても恋に億劫で不器用で、純情を絵に描いたようなオンナなんですもの。

 

<和恵のチェックポイント>
1979年にリリースされたシングル。ジャケット写真の、足の綺麗さを売りにしていた朱里エイコさんのこれでもかっというほどに惜しみなく出した両足をまずは堪能しましょう。この食い込むようなデニムのホットパンツに彼女の我の強さを感じずにはいられません。この我の強さにしてどこか不器用で純情な女、それが朱里エイコさんの魅力であることをまずは知ってもらいながら、是非彼女の歌声を聴いてもらえればと思います。

 

そして、この歌の歌詞で最大のフックでもある「想い出ポルノ」という言葉。この言葉の意味、ワタシは長年歌いながらもずっと理解出来ていませんでした。しかし、最近少し流行りつつある「○○ポルノ」という表現を知ってから、ようやく意味を理解することが出来ました。「ポルノ」とは「ある感情を刺激する」という意味の言葉として使ってたんですね。そんな言葉を40年も前に使っていた山口洋子さん、やはりタダ者ではありません。

 

【INFORMATION】

ギャランティーク和恵さんが昭和歌謡の名曲をカバーする企画「ANTHOLOGY」の第3集「ANTHOLOGY #3」が、2016年11月9日(水)に配信&CDでリリースされます。それに合わせて、ライブも連動して開催。詳しくはANTHOLOGY特設ページをご覧ください。

20161031-i02(3)

LIVE「anthology vol.3」

日時:2016年11月5日(土)
会場:南青山MANDALA(外苑前)
時間:開場18:00 開演:19:00
料金:4500円(1d付)

 

<演奏>
中山 努(key)
サリー久保田(b)
中森泰弘(g)
白根賢一(ds)
井谷享志(parc)
松本健一(sax,fl)

 

<チケット予約・公演詳細>
http://gallantica.com/anthology.html