アップルのティム・クックCEOは、優れたコミュニケーション能力を持つことで知られる人物。そのスキルが、アップルを批判していたイーロン・マスク氏との対立を解消する上でも発揮されたと見られています。
実際に、どうやってクック氏がマスク氏を宥めたのか? アップルの元幹部らが、それを深く考察しています。
マスク氏は先週まで、次々とアップルへの批判をくり出していました。同社がツイッターへの広告をほぼ停止した、App Storeから削除されると脅かされたなど。ついには「アップルは米国での言論の自由を憎んでいるのでは?」とツイートしていたほどです。
クック氏はこうしたマスク氏の口撃に、公の場では応じませんでした。その代わりマスク氏をアップル本社に招待し、対面しての会談を行っています。その後、マスク氏は会談とアップル社屋内の見学についてクック氏に感謝し、すべてが「誤解」だったと付け加えています。
Good conversation. Among other things, we resolved the misunderstanding about Twitter potentially being removed from the App Store. Tim was clear that Apple never considered doing so.
— Elon Musk (@elonmusk) November 30, 2022
さて英Financial Timesは、クック氏がマスク氏のような人物を宥める能力について「勤務歴10年以上の元アップルのベテラン」に取材しています。
その1人によれば「ティムが彼(マスク氏)を魅了したんだと確信しています」とのこと。「彼は(マスク氏の)話を最後まで聞きたかったのでしょう。それから、ティムは自分の見解を述べたのでしょう。彼は袖をまくり上げ、問題を解決していくのです。彼は、PRのための論争であろうと、もっと物議を醸す話であろうと、公の場での論争には加わりません。それは、彼のやり方ではない。イーロンのような人ではないのです」と語られています。
またアップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏も、クック氏の最高のスキルは「とにかく全員の面倒を見る必要性を理解していること」、「多分野にまたがり、ひいきをしないことだ」だと述べています。
そしてスティーブ・ジョブズ氏が復帰する前にアップルのCEOを務めたジョン・スカリー氏は、さらに詳しく説明しています。
すなわち「最初の1兆ドルはジョブズとアイブ(ジョニー・アイブ。元デザイン最高責任者)から、次の1兆ドルはティム・クックの功績からもたらされた。しかし、ティム・クックは、それを黙々とこなし、注目を集めることもなく、素晴らしい仕事をしている。iPhoneを手にしたとき、すぐに思い浮かぶ名前はスティーブ・ジョブズとジョニー・アイブだが、ティム・クックが行った貢献は、それと同じくらい重要なものだ」とのことです。
たしかに、誰よりも気難しそうなジョブズ氏からアップルの将来を託されたクック氏にとって、マスク氏は扱いやすかったのかもしれません。
Source:Financial Times
via:9to5Mac