僕はお笑いが好きで、生まれ変わったらお笑い芸人になりたいなとすらうっすらと思っているくらい好きだ。
今はお笑いの内容もかなり多様化している。先日開催されたM-1グランプリでは、世の中のことに不平不満を言う、いわゆる毒舌漫才(または悪口漫才)のウエストランドが優勝。もちろんリアルタイムで大会を見ていたが、非常におもしろかった。
その対極とも言えるのが、女性4人組のグループ「ぼる塾」だ。
しんぼる+猫塾=ぼる塾
ぼる塾について簡単に説明すると、しんぼると猫塾という2つのコンビが合体して4人組になったグループ。テレビに出るときは3人であることが多いが、実は一人は育休中。ぼる塾は、誰が結婚・出産をしても休める育休制度と取り入れた日本初のお笑いグループらしい。
その育休中の酒寄さん(一応リーダーらしい)が、メンバーの日常をおもしろエピソードを綴っているのが『酒寄さんのぼる塾日記』(酒寄希望・著/ワニブックス・刊)だ。
しゃぶしゃぶは一期一会
たとえばこんなエピソードがある。メンバーのあんりと田辺さんが、週5日でしゃぶしゃぶ食べ放題に行っているという。なんでそんなにしゃぶしゃぶ食べ放題に行くのか疑問に思った酒寄さんは、あんりに「しゃぶしゃぶ飽きないの?」と尋ねる。その返事は以下の通り。
あんりちゃん「飽きないですねー。しゃぶしゃぶって味変自在なんですよ。スープも変えられる、具材も変えられる、薬味も変えられる、同じしゃぶしゃぶは存在しないので」
(『酒寄さんのぼる塾日記』より引用)
同じしゃぶしゃぶは存在しない。なるほど。僕もたまにしゃぶしゃぶ食べ放題に行くが、確かに毎回スープを変えたり、タレをアレンジしたり、野菜のバリエーションを変えたりする。しゃぶしゃぶって一期一会なんだな。
うどん屋がだめならカレーがあるじゃない
メンバーそれぞれのエピソードが載っているが、ボリューム的に一番おなかいっぱいなのが、やっぱり猫塾時代から付き合いのある田辺さん(「まあねー」という決め台詞がある)だ。
田辺さんは27歳で渋谷でギャルデビューしたり、食べ物全般やファッション、コスメなどにも詳しいが、基本的にめちゃくちゃ天然で変わっている人だ。
そんな田辺さんのエピソード。昔酒寄さんと新宿を歩いているときに外国人の女性に話しかけられた。どうやら韓国語で話しかけられたらしい。しかし田辺さんは流暢な韓国語で受け答えし、その家族を見送った。
田辺さんが韓国語が話せることに驚きつつも、酒寄さんはことの顛末を尋ねた。なんでも、その家族はつるとんたん(うどん屋さん)に行く道を聞いてきたということ。
しかし、その場所からは少々遠かったということで、その家族から「あなたのオススメの店に連れてってほしい」とお願いされた。そこで田辺さんが案内したのが……。
「だから、ゴーゴーカレーに連れてったわ」
(『酒寄さんのぼる塾日記』より引用)
韓国から来て日本食を食べたいであろう人たちに、田辺さんは自分の本当にオススメのお店を紹介。それが田辺さんだ。
ぼる塾がどんなグループなのかがわかる一冊
僕はぼる塾に数年前からハマり、YouTubeチャンネルなども結構見ている。なんとなくほのぼのした感じ+少々の毒+女性特有の華やかさみたいなものが融合した、なかなか似ているお笑いグループがいないなと思っている。
ぼる塾のことを知っている人も、あまり知らないという人も、この本を読むとなんだか楽しい気分になれるのではないだろうか。酒寄さんの小気味よい文章力で綴られる選りすぐりのエピソードは、ぼる塾がどんなグループなのか、そしてメンバーがそれぞれどんな人間なのかがよくわかるだろう。
これからもその独特なほのぼの感で、お笑い界で独自のポジションを築いていってほしいなと思う。そして、おばあちゃんになっても4人で漫才やコントをしていてほしいなと願っている。
【書籍紹介】
酒寄さんのぼる塾日記
著者:酒寄希望
発行:ワニブックス
大人気の女性お笑いグループ「ぼる塾」の育休中メンバーが描く笑いと友情エッセイ。