地球上には、名前が付いている生物は約200万種と言われている。しかし、まだまだ発見されていない生物も、この地球上にはいる。
では問題。
現在、毎年どのくらいの新種が発見されているのだろうか?
新種発見は科学の進歩と親密な関係
正解は、約1万8000種だ。この世の中には、まだまだ発見されていない生物がいるのだ。ジャングルの奥地や標高の高い場所、深海など、人間がなかなか近づけない場所などには、まだ見たことのない生物が生きているのだ。
なぜ、これだけの生物が毎年発見されているのだろうか。それは、文明の進化と関係している。
交通手段が発達して、地球のあらゆる場所へ行けるようになったこと。インターネットの進化により、未開の地を見つけることがたやすくなったこと。また、Google Earthなどの人工衛星画像が簡単に見られることになったことで、新種がいそうな地域の場所を絞りこめるようになったこと。
このような技術の進歩があることで、ここ10年間で20万もの新種が発見されている。そして、これからもどんどん発見されていくことだろう。我々が知っている生物は、おそらく地球上のごくごく一部なのだ。
驚愕の新種生物大集合!
『新種の冒険 びっくり生きもの100種の図鑑』(クエンティン・ウィーラ、サラ・ペナク・著、西尾香苗・訳/朝日新聞出版・刊)は、21世紀に入ってから発見された生物から、厳選した100種類が紹介されている。
基準は、著者の二人が「魅了され驚愕したもの」だ。
例えば、マダガスカル島に生息する「リオピディウム・パットニ」は、黒地に赤や白の斑点があり、頭部や腹部は黄色という、なんとも派手な蛇だ。マダガスカル島は生物多様性のホットスポット。長期間隔離されてきた島のため、独自の進化を遂げた生物が多数いるのだ。
「アルクティコタントゥルス・クリステンセニ」というヒメヤドリエビの一種は、全長0.147〜0.192mmしかない。こんな小さな生物は、捕獲するための機器や観察するための顕微鏡が発達しなければ発見できなかっただろう。
クマムシにあのビッグアーティストの名前が付いている
変な名前が付いている新種生物も掲載されている。「最強生物」との呼び声も高い緩歩動物、クマムシの一種「エキニスクス・マドンナエ」は、あのアーティスト、マドンナの名前が付けられている。
“発見した科学者によれば、マドンナは「この時代のアーティストとして最重要級」だという。(中略)エキニスクス・マドンナエは、マドンナのような魅力とタフさを兼ね備えたスーパーな生きものなのである。”
(『新種の冒険 びっくり生きもの100種の図鑑』より引用)
なかなか粋な科学者のようだ。
「名前」のない生物が少しでも減るように
新種の中には、もう数百年前から存在は知られているものもある。現地の人たちにとっては当たり前の生物も、世界的には未知の生物ということも多い。
もしかしたら、我々の身近なところにもまだ発見されていない生物がいる可能性だってあるのだ。
「こんなところに生物はいないだろう」という、北極や南極の海や何千mもの深海、人間が近づけないような場所にも、確実に生物はいる。
そして、発見されないうちに絶滅してしまっている生物もいるはずだ。
長い地球の歴史で、名前も付けられずに地球上から人知れず消えてしまっては、せつない。一種類でも多く新種が発見され、ちゃんとした名前が付けられることを切に願う。
(文:三浦一紀)
【参考文献】
新種の冒険 びっくり生きもの100種の図鑑
著者:クエンティン・ウィーラ、サラ・ペナク、西尾香苗
出版社:朝日新聞出版
今世紀になって発見された最も珍しい生物100種を、米国の生物種探査国際研究所が選定。体色を変えて身を守る美しいタツノオトシゴや、幅1センチほどの極小蘭など、へんな生き物の生態を貴重な写真とともに紹介する。驚きの姿を楽しめる。