岩手県遠野市、みなさんはどんなところかご存じですか?
ビールがお好きな方は、毎年秋に岩手県遠野市産のホップを使ったビールが出回るので、ご存じかもしれませんね。読書が好きな方や、民俗学に興味のある方は柳田國男の『遠野物語』の街、という印象があると思います。
今回は、私が生まれ育った岩手県遠野市の魅力を勝手ながら、お伝えさせていただきます! 巷では、モンスターをゲットするなんてのが流行っておりますが、岩手県遠野市には昔々から妖怪と人間が共存し、暮らしているのでございます……。
岩手県遠野市ってどんなところ?
岩手県の内陸部に位置する、面積が825.97㎢と、東京都23区(619㎢)がすっぽりと入る大きさに、人口が2.5万人。私が小学生の頃は2クラス、中学生で4クラス、市内の高校に進学すると6クラス編成と、ちょっとずつ学区が広がり同級生が増えて行くため、市内の人はほぼ知り合い……という状況でした。気候も360度を山で囲まれている盆地構造のため、冬の寒さは尋常ではなく、自分の吐く息で髪の毛が凍ります。
高校時代は、年末年始とお盆の時のみにできる「砂糖詰め」のバイトをしていました。これは、お歳暮とお中元にお世話になった方へ「砂糖」を送る習慣があり、砂糖をつめた箱を包装するというとても忙しいバイトでしたが、この習慣が多分遠野だけのことだと知ったのは、随分大人になってからでございました。
他にも、
・高校生サッカーが強い
・野球部のスタメンで、9人中7人の名字が「菊池」で全国ニュースに出る
・河原ではBBQではなく、ジンギスカン
・カッパを見たことのあるおじさんがいて、現在2代目
・約20年ほど前からお盆近くになると「まぬけ節フェスティバル」というフェスがあり、コスプレをした住民が躍りまくっていた(現在は残念ながら開催していない)
・遠野市のゆるキャラ「カリンちゃん」は約20年前からいた(一般公募で、私も小学生の頃、投票へ行きました)
など、オリジナリティ溢れる物語がいくつもあります。こんな珍現象が起こるのも妖怪のせいなのでしょうか…?
こんな妖怪がいます
『遠野物語』には、119の物語が収録されていますが、人間のいや〜な部分を描いたお話や神様のお話、そして妖怪のお話など様々な物語が収録されています。中でも人気のお話を3つご紹介させていただきます。
■赤いカッパ
遠野のゆるキャラカリンちゃんは緑色ですが、遠野のカッパは「赤い」と言われています。
■ざしきわらし
ざしきわらしが走る音やしゃべり声が聞こえているとその家は栄えるけれども、いなくなった途端貧乏になってしまうという神様。小さな女の子だという説と、12〜3歳だという説があります。
■サムトの婆
昔、神隠しにあった娘が、風の強い晩に戻ってきたという話から、今でも風の強い晩には「今日はサムトの婆が帰ってくるぞ」と言われています。特に悪さはしません。(私も小さい頃言われて育ちました!)
口頭伝承されている『遠野物語』
『遠野物語』の著者は柳田國男さんですが、遠野市出身の佐々木喜善さんとの出会いがなければこの作品は生まれていませんでした。と、いうのもこの中に掲載されている物語は、佐々木喜善さんから聞いたお話をそのまま柳田國男さんが執筆されたものだからです。
佐々木喜善さんが、お話できたのには理由があります。それは、『遠野物語』が刊行された1910年よりも前から「語り部」さんたちによって口頭伝承で、数多くの民話が残されていたからです。もちろん、語り部さんのお話は、現代でも聞くことが可能です。直接聞いてみたい! という方は、どうぞ遠野へ! 無料で聞ける場所も数多くあります。
また『遠野物語 ~まんがで読破~』(柳田国男・著 、バラエティ・アートワークス・絵/イーストプレス・刊)には、ゼミ学習で遠野を訪れた学生の不思議体験を通じて『遠野物語』を読み解ける内容になっていますので、ちょっと気になる…という方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
妖怪に出会える街、民話のふるさと遠野で、あなたも本物の妖怪に出会ってみませんか?
どんどはれ。
(文:つるたちかこ)
【参考文献】
遠野物語 ~まんがで読破~
著者:柳田国男(著) バラエティ・アートワークス(絵)
出版社:イーストプレス
近代化が進む明治時代末期。急速に変化していく日本の姿に、「日本人とは何か」という問いを募らせた官僚・柳田国男は、岩手県遠野地方に伝わる民話を書き留め、自費出版で世に送り出した。そこには天狗や河童、座敷童子などの妖怪や死者の話、地元でまつられる神々の記録などが伝承のまま、格調高い文体で書き記された。芥川龍之介や南方熊楠らにも影響を与え、日本民俗学の出発点となった名著を、読みやすくマンガ化。
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