Vol.123-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはソニー・ホンダモビリティがCES 2023で披露したEVの話題。これから登場するEVに期待したいところを見ていく。
EVがスマートフォンのように“ソフトで決まる”時代が来ると、どうなるのだろう?
もちろん、自動運転・運転補助などの出来が重要であるのは間違いない。ただ、それは当然のようにどのメーカーも競う、基本的な部分になると考えていい。そうすると、特に初期に差となってくるのは“運転以外の部分でいかに良い要素を搭載できるのか”ということだ。
そこでは、自動車に搭載されているセンサーをいかにほかのことに活用するかが重要になってくるだろう、と予測している。たとえば、自動車にはカメラやLiDARを使った距離センサーが搭載されているが、それを自動車や人を避けるために使うのは当然と言える。
だが、そのセンサーを使い「ドライバーがこれからいく場所で雨が降りそうなら教える」とすればどうだろう? ちょっとしたことだが、いままでの自動車とは違った要素が生まれる。
要は、スマホで「アプリからセンサーを使う」ようなものなのだ。現状では、どんな使い方が良いかはまだわからない。それはスマホのときも同じだった。だが、初期に「モーションセンサーを使ってビールを飲む画像を出す」アプリが作られたように、とてもくだらない使い方からでも、始めてみることに意味がある。そのうち、EVに向いた新しい用途が開拓されてくることだろう。
特に今後は、自動運転の進歩により、“自動車に乗っているが、運転はしていない”時間も長くなっていく可能性がある。そんな時間をどう快適に過ごすか、そのためにどんな機能が必要となるのか、もポイントになってくる。そこでは単に「カーオーディオが充実している」レベルを超えるなにかが求められるはずだ。自動車内のディスプレイでゲームをする機会は少ないだろうが、これから行く場所や交通状況などを3Dグラフィックスで表示するケースも増えていくので、ゲーム機クラスの処理性能を求められるようになるとも予測されている。
ただこうなると問題になるのは、「スマホやゲーム機は安価で、数年おきに買い替えることもできるが、自動車はそうもいかない」という点だ。ソフトで機能が変わるということは、機能アップに耐えられるだけの性能を持ち、10年単位という“クルマのライフサイクル”のなかでも、IT機器としての性能が陳腐化しない方法論を考える必要が出てくる。
そのためAFEELAは、発売段階から「数年先を見据えた処理性能」を搭載することになる、と考えられている。もともと高級車を狙っており、IT系のパーツで高価なものを選んでも価格面でのバランスは取れるだろう。その先には、内部のプロセッサーなどを交換できるようにするかもしれない。
どちらにしろ、EVでは従来の車と異なり、プロセッサーの性能なども気にする必要が出てくるだろう。そうなったらまさに“スマホのような存在”と言えるかもしれない。
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