先週は紅茶大国・イギリスの人に、日本人があまり知らない本場の紅茶事情を教えてもらいましたが、今回はいわばその逆。イギリス人のジョアン・エステヴェスさんに日本の紅茶を飲んでもらい、感想を聞いてみました。
ジョアン・エステヴェス さん
ロンドン出身。たこが好きで、日本のたこ焼き屋に興味津々。
缶やペットボトルは邪道でアイスティも飲まない
用意した紅茶は、寒くなるにつれて需要が高まるミルクティ。そこで自販機に売っている缶タイプのものを用意したところ、驚くべき声が聞こえてきました。
「オゥ、ノー。だれが缶入りの紅茶なんて飲むんだろうと思っていたけど、まさか自分が体験することになるとは。イギリス人は缶入りの紅茶なんて普段飲まないから、もし売っていても買わないと思いますよ」(ジョアンさん)
缶はもちろん、ペットボトル入りの紅茶も飲まないとか。多くのイギリス人は、ティバッグやフレンチプレスなど、お湯を沸かして丁寧に淹れるのが主流のようです。そうやって缶を開けて手渡すと、さらなる驚きが!
「アゥチ! え、温めてくれるのかと思ったら、日本人は冷たいまま飲むの? 冷たいミルクティを飲むなんて、イギリスでは邪道ですよ」(ジョアンさん)
なんと本場の基本はホットで、アイスティはあまり飲まないのだとか。ただ、フルーツ系のフレーバーティなら、アイスティとして飲む人もいるようです。
日本の甘いミルクティのことをロイヤルミルクティと呼ぶ?
そしていよいよ実際に紅茶を飲んでもらい、感想を聞いてみることに。すると、またしても大きなブーイングが巻き起こりました。
「シュガーが多すぎるし、全体的に濃厚ですね! 紅茶味のケーキやアイスクリームみたい。スウィートな要素が強いから、紅茶の芳醇な香りが飛んじゃってる気がしますよ」(ジョアンさん)
香りが弱い点に関しては、淹れたてでない缶入り紅茶の宿命かもしれません。とはいえ、甘さに関して疑問に思われたのは、日本の緑茶は甘くないのになぜ紅茶の場合は甘くして飲むのかということ。確かに、ミルクティに限らず日本の缶やペットボトル入り紅茶は甘いものが主流。一方、抹茶や甜茶は例外として、甘い緑茶はありません。考えてみれば不思議ですよね。
ひと通り飲み終えた後は、パッケージのデザインの話に。ミルクティにはなぜ暖色系ではなく寒色系の色が使われているのかという話のなかで、突然ジョアンさんは缶を凝視。そしてある名称に気付きました。
「ん、ロイヤルミルクティ? ロイヤルってなんですか? ポーカーのストレートフラッシュと、ロイヤルフラッシュ(ロイヤルストレートフラッシュは日本独自の呼称)の違いみたいなものですかね? イギリスにはロイヤルミルクティなんてものは存在しませんけど」(ジョアンさん)
これは驚きの事実。調べたところ諸説あるようですが、ロイヤルミルクティのロイヤルは「英国風」、「英国王朝風」ということらしく、日本独自の名称なのだとか。実はいまから50年ほど昔、日本の飲料メーカーがミルクたっぷりの紅茶を売り出す際にロイヤルミルクティと名付けたことが始まりだそうです。
ただ、その定義は割とアバウト。たとえばミルクが50%以上を占めるなど、牛乳の割合が多いミルクティのことを指すようです。また、通常のミルクティはあらかじめ作った紅茶にミルクを混ぜるところ、ロイヤルミルクティの場合は茶葉を直接牛乳で煮出す点に特徴があるとか。ミルクティのデザインが青いのも、イギリス王室の公式カラーとして使用される「ロイヤルブルー」にあやかったものなのでしょう。
バレンタインデーやホワイトデーにチョコレート文化を盛えさせてしまうなど、販売方法に関して日本のメーカーはなかなかしたたか。商才のセンスもさることながら、アイスティを好んで飲むわれらは色んな意味で「クールジャパン」なのかもしれませんね!
※この企画は、外国人留学生へのリサーチから得た知見をもとに、海外向けに日本企業のブランディングや商品PRのサポートを行う「LIFE PEPPER」とのコラボによるものです。