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2023/4/7 18:00

ムロツヨシ&宮沢氷魚「2人で初めて飲んだ日の翌朝、ホワイトボードに選手の名前とポジションが。僕たちは何の話をしていたんだろう(笑)」

プロ野球のスカウトを主人公とした同名漫画をドラマ化した連続ドラマW-30『ドラフトキング』が4月8日(土)よりWOWOWにて放送・配信がスタートする。未来のスター選手獲得に奮闘し、選手たちの人生にも深く関わっているスカウトたちの姿を描いている本作。主人公でスカウト・郷原眼力(ごうはら・オーラ)を演じたムロツヨシさんと、郷原とともに仕事をする新人スカウト・神木良輔を演じた宮沢氷魚さんに、本作の魅力を伺いました。野球好きなお二人だからこその熱い野球愛を語っていただきました。

 

【ムロツヨシさん&宮沢氷魚さん撮り下ろし写真】

 

物語の中心人物ですので責任を取るという意味でもやりがいを前面に(ムロ)

──ムロさんはもともと原作を読んでいらっしゃったそうですね。

 

ムロ 物心がついたときから、いろんな視点の野球漫画を読んできました。『ドカベン』『キャプテン』など、熱血もの、根性ものいろいろありますが、夢を描いたものが多い中、スカウトマンをメインにプロ野球の世界を描くという着眼点がすごいなとまず感動しました。

 

宮沢 僕も最初に読んだとき、「マニアックなところにいったな」と驚きました。野球好きでもなかなかスカウトマンには意識が向かないので、「わ〜、なるほどな。新しいタイプの野球漫画だな」って思いました。

 

ムロツヨシ…1976年1月23日生まれ、神奈川県出身。1999年大学在学中に作・演出・役者として活動を開始。映画『サマータイムマシン・ブルース』から映像作品に活動の場を広げ、個性派俳優として人気を集める。WOWOW『連続ドラマW 雨に消えた向日葵』、映画『川っぺりムコリッタ』などに出演。現在NHK大河ドラマ『どうする家康』に出演している。TwitterInstagram公式HP

 

ムロ 僕ら野球好きから見ると、人間ドラマが詰まっていて、みんな違う人生を歩んでいるんですよね。夢が叶う者と叶わない者が出てくる、その残酷さがまた心揺さぶるんですよ。

 

宮沢 僕は18年間野球をやっていたので、一通り野球のことは知っているつもりなんですけど、『ドラフトキング』には全然知らないことが描かれていて、プロ野球のスター選手たちが生まれるまでのプロセスというものを一から学んだ気がしました。

 

野球って一度沼にハマってしまうとなかなか抜け出せないくらい魅力的なスポーツ(宮沢)

──郷原眼力と神木良輔、それぞれどんな人物と捉えて演じられたのかお聞かせください。

 

ムロ 郷原は独特の価値観と独特の言葉を使って、叱咤激励する役で、そこが魅力的でした。漫画を映像化するとき、僕らはプレッシャーとやりがいの両方を感じていると思うんですが、今回は楽しみながらやることができました。演じることが決まる前から郷原という男のファンだったので、それはもううれしさのほうが勝つわけですよ(笑)。ただ塗り絵のように原作のまねをすると、一気に薄っぺらいものになってしまうので、あえて自分がやる意味というものを付けるようにしました。しかも物語の中心人物ですので、責任を取るという意味でもやりがいを前面に出していきました。

 

宮沢 僕が演じた神木君はすごくピュアで正直な人間です。ただ一生懸命過ぎて空回りして、先輩のスカウトマンたちからボロクソ言われたりもするんですけど、それでも心が折れずに前を向いて走り続けているんですね。それは根底に野球が大好きという気持ちがあるからだと思うんです。それがなければすぐ辞めていると思うんですよね。大変な仕事だし、直属の先輩である郷原は本当にひどいし(笑)。でも僕もそうでしたけど、野球って一度沼にハマってしまうとなかなか抜け出せないくらい魅力的なスポーツなんです。神木は一軍出場の経験がないままプロ野球人生を終えて、とても悔しい思いをしているんですけど、大好きな野球を裏で支えたいと思っているんです。その熱い思いを僕はかっこいいと思いました。

 

宮沢氷魚●みやざわ・ひお…1994年4月24日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。2015年「MEN’S NON-NO」専属モデルオーディションでグランプリを受賞しモデルデビュー。2017年ドラマ『コウノドリ』第2シリーズで俳優デビュー。2023年映画『エゴイスト』にて「第16回アジア・フィルム・アワード」で助演男優賞を受賞。主演映画『はざまに生きる、春』が5月26日(金)公開。Instagram公式HP

 

──ドラマを拝見してスカウトマンの仕事が実は選手の人生そのものに関わってくるのだなと思いました。スカウトマンを演じて野球を見る視点に変化はありましたか。

 

ムロ 僕も以前は有望な選手を選んで、プロのチームに入れるのが仕事だというイメージしかありませんでした。郷原が1、2話に登場する高校球児に「お前が入団することで、誰か1人がクビになる。そういう厳しい世界だ」と話すセリフがあり、プロのルールの厳しさを改めて感じましたし、プロ野球選手になるという夢が叶って喜ぶところでもあり、その先にはとてつもなくつらい現実が待っていると思うと、すごく印象に残りました。

 

宮沢 実際にスカウトマンを演じて分かったのは、球場をはじめ日本中の学校や練習場などいろんな場所に行って、カメラを回してスピードガンで球速を測って記録したり、スコアを取ったりしているんですね。毎日のように移動して、多分狭いビジネスホテルに泊まるだろうから体も相当疲れていると思うんです。プロ野球の華やかなイメージとは違って、かなり過酷な仕事なんだろうけど、そこまでして自分たちの球団にスター選手を1人でも多く入れたいと思うスカウトマンの熱量に僕はとても感動しました。

 

初共演で印象的だったのはお酒を飲むペースが一緒でした(ムロ)

──ムロさんと宮沢さんは初共演だそうですね。お互いの印象はどんな感じでしょうか。

 

ムロ 僕は初共演のときは印象をあえて持たず、フラットというか透明な形で会わせていただくようにしているんですね。ただ野球経験者ということで、体育会系の礼儀正しさを持っている青年ということがよく分かりました。

 

宮沢 ムロさんは郷原とは全く違い物腰柔らかく、非常にフレンドリーな方なので、毎日現場に行くのがすごく楽しみでした。基本的に郷原と神木のシーンが多いので、毎日のようにムロさんにお会いして、朝から笑って最後まですごく楽しかったです。もう楽しい思い出しかない(笑)。

 

ムロ そうですね。楽しかったです(笑)。それと印象的だったのはお酒を飲むペースが一緒でした。

 

宮沢 一番大事! おかわりのタイミングが一緒でした(笑)。

 

ムロ これはすごいことですよ! 無理して合わせているかどうかは見ていれば分かるので(笑)。タイミングを合わせているわけじゃなく、本当に一緒だったんです。世代が違うと飲みニケーションの価値観も違うと思うんですよね。

 

──今の若い方はあまり飲みに行かないとも聞きますし。

 

ムロ 僕らほど飲む機会は多くないと思うんです。でも飲みニケーションの価値観が一緒だったことにびっくりしましたし、酒もうまかったね!(笑)

 

宮沢 はい、楽しかったですね(笑)。

 

ムロ 2人で初めて飲んだ日に飲みすぎたんです。最後はウチに来て。ウチにはホワイトボードがあるんですけど、選手の名前とポジショニングとかが書いてあったんです。これは……僕たちは何の話をしていたんだろうと思いました(笑)。

 

宮沢 書いてあったかも(爆笑)。

 

ベイスターズだと佐野選手に注目です。さらに今年は飛躍の年になるんじゃないかと(宮沢)

──お二人とも相当な野球ファンだとお聞きしています。ムロさんはベイスターズファンですが、今年は期待できそうですか。

 

ムロ いやもう、今年はずっと優勝争いの中にいると思いますよ。

 

宮沢 そうですね。

 

ムロ 昨年はスタートで遅れましたが、それでも2位でしたから。ヤクルトの勢いは止められなかったけど……私が見に行く日はだいたいヤクルトに負けてしまって。責任を取って試合を見に行くのをやめようと思ったくらいで(笑)。ファンってそういうときあるよね? 「オレのせいだ……」みたいな。

 

宮沢 あります、あります(笑)。

 

──ベイスターズはルーキーや若手のうちから活躍しているイメージもありますが、若手に限らず今年注目されている選手はいらっしゃいますか。

 

ムロ 僕は(山崎)康晃選手。日本に残る決断をしたじゃないですか。その意志を見届けたいと思いますし、去年以上に応援したいです。そして今年はまだ一軍として出られるのかどうか分かりませんが、キャッチャーの松尾(汐恩)選手も楽しみにしています。確か谷繁(元信)さん以来のドラフト1位キャッチャーなんじゃないかな。

 

宮沢 他の球団もチェックしていますが、ベイスターズだと、僕は佐野(恵太)選手です。キャプテンですし、守備ではいろんなところを守れるという強みもあるし、ホームランも打てて、打率も残せるっていう。すでにチームの中心選手になっているんですけど、さらに今年は飛躍の年になるんじゃないかと思っています。

 

──初めてお二人で飲んだときもこんな感じで野球話に花を咲かせていたんでしょうね(笑)。

 

ムロ そうです、そうです。もっと深い話をしました(笑)。

 

──ここからは「モノ」や「コト」に関するお話をお聞かせください。神木は球場に行くときは必ずスピードガンとビデオカメラを持っていましたが、お二人が仕事に絶対に持っていくものはありますか。

 

ムロ 作品ごとに台本入れを替えるんです。高級ブランドではなく文具メーカーのタブレットケースを買い替えて台本入れにして、その中に台本とペンを入れています。

 

──ボールペンのこだわりはありますか?

 

ムロ ジェルタイプが好きです。今は細いタイプを使っていて、色は紺と黒。台本に書き込むパターンの作品のときは、消えるボールペンにしています。発売されたときは僕らの世代は「ボールペンが消える時代になったの?」って驚きました(笑)。

 

──宮沢さんは必ず持って行くものはありますか。

 

宮沢 携帯歯ブラシと台本、ボールペンも持っていきます。ちっちゃいポーチのようなものに消毒、ハンドクリーム、リップ、替えのコンタクトレンズを入れています。

 

ムロ あと必ず入っているのは「恥じらいの心」と書いておいてください!

 

宮沢 ハハハ(爆笑)。

 

ムロ 恥じらいの心は絶対に忘れてはいけない。僕らはいつもカバンの中に入っているかなって確認して、今日も持っている、良かったってなっているんです。「自信を持っちゃいけない。恥じらいの心を今日も持っている」とすべて文章で書いて、括弧を付けて「こいつ何言ってんだ」って付け加えてください(笑)。

 

宮沢 じゃあ僕も持って行きます(笑)。

 

恥ずかしさや自分の持っている欲を毎日再確認する(ムロ)

──郷原は信念を持って仕事をしている人間でしたが、お二人の仕事や生活のこだわりを教えてください。

 

宮沢 1日のスタートみたいなものを大切にしています。理想としては、朝起きて「今日も仕事が楽しみだな」と思いたいので、そう思えるための準備をするようにしています。どんなに仕事でうまくいかないことがあって落ち込んでも、寝たらリセットしようと思っているんですね。だから新しい1日が始まったら、昨日までのことを忘れるようにします。そのためにも朝起きてからのルーティーンが結構あって、コーヒーを淹れてゆっくり飲んでから家を出るんです。そのために出かける1時間から1時間半前には起きて、ゆっくり目を覚まして、コーヒーを飲みながら音楽を聴きます。最近レコードプレイヤーを買ったので、レコードを聴いて、朝ご飯を作って食べて現場に行きますね。

 

──朝はどんな音楽を聴くことが多いのでしょうか。

 

宮沢 その日の気分ですけど、今はジョニ・ミッチェル。すごくテンションがダウンしているときはポリスのライブ音源を聴いて、気分を上げます。

 

──ムロさんの生活や仕事のこだわりは?

 

ムロ どう言えば大げさじゃないですかね(笑)。それは冗談で。自分は恥ずかしいことをやっていると、常に考えるようにしているんです。他人様の前に立ってお金をもらったり、テレビのチャンネルをつけてもらって、人を感動させよう、笑ってもらおうなんておこがましい考えを持って生きているわけですから。だから恥じらいを感じながら、自分のおこがましさをしっかり毎日確認するようにしています。その上で、それでも(人前に)立ちたいなら立ちなさいよ、そして立つなら、褒め言葉に限らず何を言われようが覚悟しなさいねと思っています。いろんな価値観の方が見てくださるわけですので。

 

──なるほど、それ故の「恥じらいの心」ですね。

 

ムロ そう、半分冗談半分本当のことです(笑)。昔は自分を知ってもらいたいと、自分の芝居の種類を知ってもらおうという意識が強すぎたんです。それはそれで良かったんでしょうけど、自分の本来の姿を見てもらうには、恥ずかしさや自分の持っている欲を毎日再確認する、この作業はやるしかないなと思っています。

 

 

連続ドラマW-30「ドラフトキング」

4月8日(土)スタート
毎週(土)後10:00~WOWOWプライム、WOWOW4K、WOWOWオンデマンドにて放送・配信(全10話)

 

【連続ドラマW-30「ドラフトキング」よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
原作:「ドラフトキング」クロマツテツロウ(集英社「グランドジャンプ」連載)
監督:山本透(第1~2話、第5~10話)吉川祐太(第3~4話)
脚本:鈴木謙一
出演:ムロツヨシ 宮沢氷魚 平山祐介 藤間爽子 川久保拓司 阪田マサノブ
/ 上地雄輔 伊武雅刀 / でんでん

公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/draftking

 

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/池田真希(ムロ)、吉田太郎(W)(宮沢) スタイリング/森川雅代(ムロ)、庄 将司(宮沢)