家の中に花があるだけで、明るくやさしい気持ちになります。そんな憧れの “花のある暮らし” を、まずは花一輪を飾ることから始めてみましょう。 フローリストの小野木彩香さんに、初心者でもすぐに取り入れられる、花を生けるコツや楽しみ方を教えていただきました。
部屋に花を生けることは丁寧に暮らす第一歩
「季節の花や自分の好きな花を選んでもいいですし、お気に入りの花器を飾りたい、という理由からでもかまいません。最初は簡単に、1本の花を飾ってみましょう。気負わず楽しんでみてください」と、小野木さん。
「花を飾ることは、心を癒すだけでなく、季節を家の中に取り込むことでもあります。花をきっかけにして四季の移り変わりを意識するようになると、自然と旬の食べ物を選んだり、季節に合わせた食器や洋服を選んだりすることにつながっていきます。暮らしに丁寧に向き合うようになります。花を生けることは自然に寄り添った丁寧な暮らしの第一歩なのです」(フローリスト・小野木彩香さん、以下同)
花のボリュームや形状に合わせて花器を選ぶ
花を飾るときには、ボリュームや花のつき方など、形状に合わせた花器を選ぶことが大切です。具体的に見ていきましょう。
・スプレー咲きの小花は、花と等しい幅の花器に生ける
「アストランティアのように、茎が枝分かれして小さな花がたくさんついている “スプレー咲き” の花は、花全体の大きさ(幅)と花器の底の幅の大きさが近いと安定感が生まれ、バランスよくまとまります」
・縦のラインに咲く花は、口径が細く、高さのある花器に生ける
「ルピナスのように縦のラインに咲く花は、口径が狭い花器に生けるとふらつかず、伸びやかなラインを楽しむことができます。花器の高さとのバランスは、1:1か1:2くらいが最適です」
・上向きに咲く大きな花は、口径が広めの花器に斜めに生ける
「バラのように上向きに咲いている大きな花は、口径が茎より広めの花器を選び、斜めに挿して飾るのがポイントです。花の顔が下に少し傾くことで、奥ゆかしさも演出することができます」
同じ花を生けても陶器とガラスの花器では印象が変わる
主な花器の素材にガラスと陶器がありますが、飾ったときにどのような違いがあるのでしょうか?
「ガラスの花器(左)では、茎の様子までよく分かり、植物が持つ躍動感も感じることができます。陶器の花器(右)では、陶器と花の一体感がより強調された印象になります。そのほか、ガラスは夏らしい涼やかな印象をもたらし、陶器はほっこりと温かい和のイメージに。季節に合わせてガラスの花器と陶器の花器を使い分けてみるのもいいですね」
“いつも花を飾る場所” を決めて習慣化。広めのスペースなら一輪挿しを寄せて飾っても
「棚の一角など、 “いつも花を飾る場所” を決めておくと、花を飾ることが習慣化します。少し広めのスペースがあれば、もっと変わったアレンジも楽しめます。このような場合も、まず小さな花を花器に1輪ずつ生けましょう。生ける花や花器の形がさまざまでも、自然とまとまって見えるポイントはグリーンです。花だけでなく、グリーンを生けた花器も織り交ぜることで、全体に統一感が生まれます」
花器から選ぶ飾り方もおすすめ。1つあると便利なボトル型花器
「お気に入りの花器から飾りたい花を選ぶ方法もおすすめです。一つ持っていると重宝するのが、口径2cm、高さ23~25cmくらいのボトル型の容器。1輪から3輪くらいの花を飾るのにぴったりで、枝ものもセンスよく飾ることができます。素材はガラスでも陶器でもOK。お気に入りの花器を持っていると花を飾る楽しみがもっと広がります」
「茎がスッと伸び、大きな花としっかりした葉がつくボリュームのあるユリは、ボトル型花器に生けるとバランスがよく、落ち着いた印象になります(左)。また、ライラックのような枝ものも、ボトル型花器と相性抜群です(右)。枝ものは枝のしなり具合により重心がとりにくいのですが、ボトル型花器なら安定感も抜群です」
皿やボウルに花を飾り、テーブルまわりのおもてなしにも。
「モッコウバラのようなツル系の植物は、水を張ったトレイの縁に沿わせて生けても(上)。皿のふちに沿わせることで、自然な雰囲気にまとまります。水を浅めに張るので切り口がしっかり水につかっている状態を保てるように注意します。
また、飾っていた花の元気がなくなってきてしまったら、花の部分をカットしてボウルなどに浮かべて飾っても(写真下)。夏には涼を感じるおもてなしにもなります。最後まで花を楽しむ方法としてもおすすめです」
ブーケを飾るときは、花器の細くなった部分に束ねてあった部分がくるように
「ブーケは紐などで束ねられている場所が、ちょうど花器の細くなったあたりにくるように、茎の長さを調整するのがポイントです。飾ることきは、まず周りのセロハンや薄紙は除き、束ねてある紐なども外します。そして、水に挿す前にそれぞれの花の茎を切ることを忘れずに」
最後の「花を長持ちさせる3つのPoint」も参考にしてください。
花を長持ちさせる3つのPoint
花を長持ちさせるには花を生ける前の準備と日頃のお手入れが大切です。押さえておきたい3つのポイントを確認しましょう。
1.茎を切る
花を生ける前に下から1cmくらいのところで茎を斜めに切ると水の吸い上げがよくなります。毎日水を替えるときにも切るようにしましょう。
2.水の量は多すぎず少なすぎず
水は切り口がしっかり水につかっていることが鉄則です。数本まとめて生けるときは茎が絡み合って水から出てしまわないように注意を。茎がやわらかいガーベラやカラーなどは茎が腐りやすいので水を少なめにします。
3.水替えは1日1回
1日1回、新しい水に取り替えます。細菌が繁殖すると茎が腐りやすくなります。
「花のお手入れを楽しむことができるようになると花との暮らしがもっと楽しくなります。水やりを忘れそう、ちょっと面倒かもと思う人は、まずキッチンや洗面所など、すぐに水が取り替えられる水回りに飾るのもおすすめです」
気負わずに、まずは1輪から。今日から花との暮らしを始めてみませんか?
プロフィール
フローリスト / 小野木彩香
夫婦で営む北中植物商店の「花部門」を担当。ウエディング・店舗装飾のほか、アトリエでアレンジの販売や教室を開催。近著は『毎日、一輪。はじめて花・葉・枝を生ける人のための手引帖。』
北中植物商店
・所在地=東京都三鷹市大沢6-10-2
・TEL=0422-57-8728
・営業日=土曜、金曜、日曜
・営業時間=土曜13:00~17:00(予約不要)、金曜・日曜11:00~17:00(完全予約制)
HP
『毎日、一輪。はじめて花・葉・枝を生ける人のための手引帖。』(エクスナレッジ)