覗けば深い女のトンネルとは? 第2回「男子が自分を取り合って大げんか、は女子の夢」
先日、「天下統一恋の乱 Love Ballad ~序章~」という舞台を見に行きました。
「天下統一恋の乱」は、戦国武将と恋愛する乙女ゲームです。信長とか秀吉とか幸村とか、まあよく知ってる武将たちが出てきて、我こそはとプレイヤーである自分に対して猛烈に恋のアプローチをしてきます。ゲームの設定だけでも女の妄想ダダ漏れでおかしかったんですが、舞台はそれに輪をかけて“液状化”って感じでした。
ゲームだと、武将全員が一堂に会することはあんまりないんです。プレイ画面にはマックスで2人しか現れません。せいぜい信長さまと秀吉くんがあれこれキャッキャしてたら、今度は家康さんが来た、といった感じです。
だけど舞台のほうは、信長、幸村、才蔵、政宗、小十郎、家康、信玄、光秀、三成、秀吉、利家、謙信、慶次と、武将+αがずらーっと全部出てきます。
それで、
「あっ秀吉くん!」
「お前、まーた酔っぱらってるのかよ!」
みたいに男子同士キャッキャしたかと思えば、
「あの子は俺のものだ!」
「いいや、俺がもらう!」
みたいに女子(私)を取り合うんですよ。
腹筋がよじれて割れるかと思いました。歴史の教科書に出てくるような人たちが、お茶屋に集合してボーイズトークを繰り広げるんですよ。そして女子(私)を取り合って剣を抜いたりするんですよ。そして剣を抜いたらそのままジャジャーンと音楽が鳴って剣舞を舞い始めるんですよ。
あんたたち、どんだけヒマなの。
これが女子の妄想じゃなかったら、なんだというんですか!
それにしても、武将全員お茶屋に集合して女を取り合うとか、いったい戦国時代ってなにを戦っていたんでしょうか。
領地争いしてたんじゃないんですか!
男子が自分を取り合って大げんかとか、女子の夢ですよね。しかも武将レベルの高給取り(?)ですよ。ザッカーバーグとジョブズがスタバでバッタリ会って私を取り合ってケンカするような感じです。どっちが勝っても別によくないですか? さあさどうぞ争って、私に対する思いの強さを主張してくださいよ!
ちなみに男性の場合、自分を取り合って女子がケンカって憧れなんでしょうか。よくわかんないですけど、どちらかというと女子同士がケンカするより全員いっぺんにヌメヌメ迫ってきて欲しそうな感じがします。想像ですけど。女同士のケンカって面倒くさそうだし……。
「自分を取り合ってケンカして欲しい」と思うのは、それが自分への思いの強さの証だからです。それほどまでに私を……! みたいな。思いだけではなく、力、能力の高さの証明でもあります(たぶんね)。
実際やられたら面倒くさいかもしれないですが、「ケンカをやめて」なんて歌があったり、乙女ゲームや、それを原作とした舞台でこういうシチュエーションが描かれたりするってことは、「複数の男性から猛烈に求められたい」っていう願望が女の心の奥底にひそんでるってことなんですよね、きっと。
というわけでたいへん楽しんだ舞台だったんですが、こっちもいい加減年とってるんで、夢見てばかりもいられません。若干二十歳前後の青年くんたちが、
「黙って俺についてこい」
的なえらそうなことをいっぱい言うんですよ。
いやいや、あんたたち、つい5年前まで少年だったような新成人でしょ? 黙ってついていったらなにが起こるのか分からないじゃん。不安でいっぱいだよ。
いや、もしかしたら戦国武将さまたちなら、ものすごーく頼りになるのかもしれないけれど……。
こっちも一緒くらい若ければ、「ステキ! ついてく!」って思うんですが、いい加減「口だけの男ってけっこういるなあ」みたいなことに気付いちゃってるんですよね。初々しい青年たちが大きなことを言うと「わあ、背伸びしてるのかな?」と思っちゃいます。
とはいえ、たいへん面白い舞台でした。人気ゲーム「人狼」を舞台の上で披露してくれたりもしました。「人狼」って、自分でプレイするのは私はあんまり楽しめないんですが、外から見る分にはたいへんワクワクしました。みごと「人狼」を当てて、商品をもらいましたよ。
こういう女子向けミュージカル、デートとかで見に行くのも、もしかしたら面白いかもしれませんね。