平尾アウリ氏の累計100万部超えの大人気コミックを実写化した『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』が、5月12日(金)より全国公開。昨年放送された連続ドラマに続き、岡山のローカル地下アイドル・ChamJam(チャムジャム)の“推し”に人生のすべてを捧げる“えりぴよ”を演じた松村沙友理さんが乃木坂46卒業後、初となる主演映画の魅力などを語ってくれました。
【松村沙友理さん撮り下ろし写真】
作品を観て「さゆりんごを推していた時の気持ちが甦る!」と言ってくださった方も
──今回、連続ドラマから『劇場版』に繋がるプロジェクトということで、意識されたことはありますか?
松村 私の中では「連ドラから映画になる」ことで特別に意識したことはありませんでしたが、もともと好きな原作コミックスで、とても人気ということが分かっていたので、「この作品を大切にしたい」「一生懸命やりたい」という気持ちでいっぱいでした。完成した『劇場版』をスクリーンで観た時に、連ドラをテレビで見た時とだいぶ印象が変わることに気付いたのですが、その時に、このプロジェクトの大きさというか、重要さを実感したような気がします。
──「ドラマ版」放送時・放送後、周囲の反響はいかがでしたか?
松村 乃木坂46の時からずっと私のファンだった皆さんが、すごく喜んでくださいましたね。それで、「さゆりんごを推していた時の気持ちが甦る!」と言ってくださった方も多かったのですが、アイドル時代の私を知らない方が『推し武道』の私を見て、ChamJamにめっちゃハマってくれたりもしたので、それはどこか新鮮な気持ちでした。
──えりぴよの役作りについて教えてください。
松村 できるだけ、舞菜のことばかり見るようにしていました。怖いぐらいに(笑)。それで一度、舞菜役の伊礼(姫奈)さんに「ずっと見られていて恥ずかしいです」と言われたことがあるんです。それで休憩中に他のオタク役の皆さんが集まってChamJamの話をするんですが、「ライブ中のウチの推しのここがいい!」という話になっても、私全然ついていけないんですよ。舞菜ばっかり見ているから(笑)。あと、えりぴよは舞菜に対しては真摯で一生懸命ですが、それ以外のことに関してはガサツで、いい意味での適当さがあるので、あえて脚を開いてイスに座るとか歩き方とか、自分の私生活から変えていきました。
今まで見たことのない『推し武道』を提供できることが楽しみ
──えりぴよと言えば、興奮して鼻血を噴出するシーンも印象的です。
松村 撮影全体を通して、一番大変だったのが鼻血だったんです。今だとCG処理をしていていると思われるかもしれませんが、実際に私の鼻の中に血糊を詰めて撮影したんです。それで、私は本番直前まで上を向いていて、「よーい、スタート!」で顔を下げるという方法で撮影しました。そのタイミングがなかなか難しいので、1回につき、30テイクぐらい撮りました。一番時間をかけたような気がします(笑)。
──ドラマ版と劇場版を続けて撮られたそうですが、劇場版はオリジナル・ストーリーになっています。
松村 連ドラでは原作の自分が好きなシーンを演じられることも嬉しかったですし、本当に原作から飛び出したような、くまささん(ジャンボたかお)と基さん(豊田裕大)と3人一緒に練りながら、和やかな雰囲気で撮っていったことも楽しかったですね。それを踏まえてのオリジナルの劇場版だったので、ファンの方が今まで見たことのない、私も知らなかった『推し武道』をお届けできることが楽しみでした。
──岡山ロケでの思い出も教えてください。
松村 かなり長い期間、岡山に滞在しましたが、すごく素敵な街で、ご飯もおいしかったです。「晴れの国」と言われているので、「めっちゃ暑いかも?」と警戒していたのですが、とても過ごしやすい気候でした。あと、撮影には多くの現地の方に協力していただいたのですが、皆さんいい方ばかりで、「今年の桃は出来がいいので必ず食べてくださいね」と、会う人会う人に桃を勧められました(笑)。私もえりぴよのトレードマークであるジャージ姿で、首にタオルを巻いて歩いているのが当たり前だったので、地元の方たちは「あぁ、あのドラマの撮影ですよね」という感じだったと思います。
劇場公開と同時に全国のコンビニで発売していただきたいぐらいです(笑)
──劇中でえりぴよが考案する「さーもんぴんくパン」のお味はいかがでしたか?
松村 劇中では、私が考えたという設定ですが、めっちゃおいしかったです。サーモンや鮭が好きなので、実際に私が考えても、あんな感じになるんじゃないかと思うぐらいのクオリティの高さでした。劇場公開と同時に、全国のコンビニで発売していただきたいぐらいです(笑)。
──松村さんが完成された劇場版をご覧になって感じたことは?
松村 ライブ以外のChamJamの出演シーンは、台本では読んでいても、実際には撮影に立ち合っていなかったので、元アイドルとして、1つの作品を見たときに、アイドル側の視点がとても深く描かれているなと思いました。私はえりぴよという役柄上、本当に推しの舞菜のことばかり見るようにしていたのですが、センターにいるれお(中村里帆)の苦悩とか、それぞれのアイドルちゃんがリアルに見えました。それは見てくださる皆さんも感じるのではないでしょうか。特に私とこのメンバーの話が当てはまるというのはないんですが……。
乃木坂46は何でもできるすごい子が多くて、天才の集まりみたいなグループ
──松村さんがえりぴよに共感する部分を教えてください。
松村 えりぴよは「舞菜のよさを世界中に知ってほしい!」というタイプですが、私も推しができたら、誰かに布教したいというか、「全人類に知らしめたい」タイプですね。私の一番長い推しは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズのルルーシュ。ルル様は、ずっと好きです。魅力はギャップがあるところですが、一番新しい『コードギアス 復活のルルーシュ』は映画館に4回観に行きました。あまりに好きなルル様すぎて、同じ劇場に会いに行っていました(笑)。学生時代はフィギュアや抱き枕などの3Dのルル様を部屋に置いていましたね。
──ChamJamメンバーに共感する部分についても教えてください。
松村 乃木坂46は何でもできるすごい子が多くて、天才の集まりみたいなグループだったこともあり、そこを尊重しすぎて、「私には何もない」と思うことが多かったんです。そのことはChamJamちゃんたちに共感できることですし、その葛藤について、愛を持って、ちゃんと描かれている『推し武道』という作品はすごいと思いました。
──ちなみに、乃木坂46一期生である松村さんから、ご当地アイドルChamJamはどのように見えますか?
松村 私は3次元のアイドル好きから乃木坂46に入ってきたわけではないので、「アイドルはこうあるべきだ!」といった固定概念みたいなものが分からなかったんです。だからこそ、ChamJamちゃんたちの、頑張っているけれどうまくいかないもどかしい気持ちとかも、乃木坂46の初期の頃に重なる部分が多かったと思いますね。なので、原作コミックスを読んでいた時から応援したくなったんです(笑)。
どんな役でも挑戦したいという気持ちになりました
──今後、ChamJamにはどのようになってほしいと思いますか?
松村 やっぱりタイトルのように、明確な目標があった方がいいなとは思うんですけれど、私個人としてはアイドルちゃんの幸せがすべてなので、最悪日本武道館に行けなくても、それぞれのアイドルちゃんが満足して生きてくれればいいと思います。悩まないで、「自分が一番なんだ!」と自信を持って生きてほしいです。
──えりぴよという役柄という出会いは、女優としての松村さんにとって、新境地といえますが、ご自身にとっての心境の変化は?
松村 「私は何でも演じられる!」という自信はありませんが、どんな役でも挑戦したいという気持ちになりました。前まではちょっと恐怖心もあったんですが、演じることの楽しさというか、役者さんが演じることを続ける理由みたいなものを自分でも分かってきたことが大きいかもしれません。こんなこと言うのも何ですが、ドラマや映画の現場って、毎日朝から晩までやっていて、めっちゃ大変で(笑)。でも、この現場では舞菜と心が通じ合う瞬間があったりしたんです。あまり話さなくても、お互いがお互いを理解し合っているような特別な感覚。そういう感覚で演じることが、この仕事の醍醐味なのかなと思いました。
──松村さんが必ず現場に持っていくモノやアイテムを教えてください。
松村 最近はちょっと高級なミカンを持ち歩いています。幼少期から家にダンボールで置いてあったので、自然とミカン好きになり、今は「せとか」を2個ぐらいカバンに入れています。それでお守みたいに持ち歩いているんですが、現場では食べるタイミングを失っています(笑)。
劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ
5月12日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
(STAFF&CAST)
監督:大谷健太郎
原作:平尾アウリ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(COMICリュウWEB/徳間書店)
脚本:本山久美子
主題歌:@onefive「Chance」(avex trax)
出演:松村沙友理
中村里帆 MOMO(@onefive) KANO(@onefive) SOYO(@onefive) GUMI(@onefive) 和田美羽・伊礼姫奈
あかせあかり 片田陽依 西山繭子・豊田裕大、ジャンボたかお(レインボー)
(STORY)
出会いは3年前のおかやま七夕まつり。えりぴよ(松村)は人生で初めてときめいた。ときめきの相手は、ローカル地下アイドルChamJam(チャムジャム)のメンバー、メンカラーがサーモンピンクの舞菜(伊礼)。その日からえりぴよは、収入のすべてを“推し”に注ぎ、自らの服はジャージのみのドルオタになる。今や、古株にして唯一の舞菜推しとして伝説に! そんなえりぴよの推し活仲間は、推し活のために仕事を辞めた、れお(中村)推し古参オタのくまさ(たかお)、空音(MOMO)推しでガチ恋勢の基(豊田)、基の妹でえりぴよに続く舞菜推しになった玲奈(片田)。それぞれの推しをそれぞれの推し方で応援し、充実した日々を送っている。
【「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」よりシーン写真】
(C)平尾アウリ・徳間書店/「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会
撮影/中田智章 取材・文/くれい響 ヘアメイク/吉田真佐美 スタイリスト/鬼束香奈子 衣装協力/COCO DEAL、HIMIKO、オレフィーチェ