いまさらご存知であろうが、ゼブラの「デルガード」といえば、芯が折れない機構で定評のあるシャープペンシルである。これがまぁ、本当になにをどうしたって芯が折れない。
例えば、芯を出して垂直に押しつけるとバネの力で荷重を完全に吸収し、筆記する姿勢でナナメ下に力を入れると金属製のガードパーツが軸から飛び出して芯を守る。もちろん芯を出しすぎるとどうしようもないが、常識の範囲内(最大で4ノックぐらい)なら完全ガードは必至だろう。
ナナメ荷重に関しては筆者の実測で5kgの重さをかけても芯は折れなかった。実際に5kgの鉄アレイでも持ってもらえばわかると思うが、この重さが細いシャープペンシルの芯にかかっても問題ないって相当なことである。
また、デルガードは故障・芯詰まりなどのトラブルが極端に少ない。文房具店員(筆者の知人)によれば、「試し書き用の店頭サンプルのなかでも、デルガードだけ壊れない」というのだ。
筆圧の強い弱いなどさまざまな手グセで扱われ、使用頻度も高い店頭サンプルは基本的にトラブル発生頻度が高い。シャープペンシルを試し書きしようとして、書けなくなっているものに当たったことのある人もいるだろう。そもそも、最初から無茶な筆圧を想定して作られているからなのか、とにかく頑丈なのだ。
ゼブラ
デルガード タイプER
756円
2014年にまず「デルガード」が発売された後、今年1月に高級バージョンである「タイプLx」が登場。どちらも人気を博してきた。そして、つい先日発売となったばかりの最新デルガードが「タイプER」である。
これまで芯を折らない方向にバージョンアップを続けてきたデルガードだが、なんと今度は方向を180°回転して消しゴム側へ大進化。タイプ名“ER”は「消しゴム=Eraser」の頭文字なのだ。
さて、消しゴム方向への進化とはいったいどういうものか? シャープペンシルの消しゴムはペン軸後端、キャップ(ノックボタン)のなかに隠されているのが普通だろう。
では、新たなタイプERはどうか。まず、ペン軸後端を見ていただくと、このとおり、キャップがない。正確に言うと、キャップ風のノックボタンはついているが頂点は穴が開いていて、消しゴムが素通しになっている。
この消しゴムを使うときは、180°回転させて軸後端を下に向けるだけ。すると、素通しの穴から消しゴムがシュッと落ちてくるのだ。落ちてきた消しゴムは、指で押し込もうが紙にこすろうが戻らないので、安心して消すことができる。
戻すにはどうするかというと、ペン軸の向きを元に戻すだけ。どれだけ紙に押しつけても戻らなかった消しゴムが、シュッとノックボタンの中に収納されてしまう。これが「デルイレーサー」と呼ばれる、非常に不思議な消しゴム機構だ。
従来であれば「キャップをはずす」→「ペンを180°回転させて消しゴムで消す」→「元の筆記ポジションに戻す」→「キャップをはめる」というステップになるのだが、タイプERは前後のキャップに関するアクションが無用になっている。「キャップぐらい些細な話じゃないか」と思われるかもしれないが、これが意外と些細でもないのだ。
先述のステップではわざと書かなかったが、キャップをはずしたあとは「キャップが転がらないように、かつ消す邪魔にならない場所を探して置く」という、無意識のアクションが本来あるのだ。これがまた無意識ではあるが、筆記に集中しているときなどにはかなりうっとうしく、集中が大きく削がれてしまう。
そもそもシャーペンの消しゴムを使わなければいけない事態というのが、すでになんらかのトラブル(ふで箱を忘れた、消しゴムを紛失した、など)である可能性が高い。そのうえ、さらに集中力が削がれるような要素はできるだけ排除すべきだ。
デルガードの最大のメリットは芯が折れないこと。つまり“芯の無駄なノックを減らして筆記に集中できる”ということだ。それだけ書く側に集中させてくれるなら、ついでに消す方向でも無駄な作業を減らして、集中力を持続させてくれるのが正しい進化というものだろう。タイプER、筆記具としてはかなり正しい進化をしていると思う。
さらにこれまでのデルガードから変わった点として、グリップがプラ(タイプLXは金属)からゴムに変更に。個人的には滑りやすくてあまり好感がもてなかったデルガードのグリップだが、ゴムになったおかげで使いやすさはかなり良くなった。
また小さな点だが、後部のクリップがなくなり、代わりに転がり防止の小さいでっぱりだけになった。消しゴムユニットが大型化したことでクリップをつける場所がなくなったのだろうか。中学・高校生はクリップをつかって制服の胸ポケットに挿したりという使い方もあるだろうから、これに関してはもしかしたら改悪だと感じる人もいるかもしれない。