はっきり言うけど、これまでの人生で野菜が特別に“大好き”だった時期はまったくない。ブロッコリーだって、違和感なく食べられるようになったのは40歳を過ぎてからだ。
「野菜を食べよう」のコンセプトをあらゆる手法でエンタメに仕上げた
結婚する前の筆者の食生活は、朝は食べないことがほとんどで、昼と夜はひたすら茶色。大学の学食でも、最初の会社の従業員食堂でも、転職して通うようになった町中華の店でも、いろどりなんていうものとは無縁の食生活を送っていた。大きな変化が訪れたのは、フリーランスになって、家でご飯を食べることが普通になったころだ。今は、食生活の中心とまでは言えないけれど、昔と比べれば野菜をはるかに多く食べるようになっている。
『野菜は最強のインベストメントである』(岩崎真宏・著/フローラル出版・刊)は、工夫が尽くされた作りの本だ。計算し尽くされた、とは言わない。作り手が面白がっているだろうことが実感できるから、あえて工夫というワードを使いたい。“クラフツマンシップ”という言い方も遠くないだろう。「野菜を食べよう」という地味なコンセプトを、ここまでのエンターテインメントに仕上げたプロセスには、さまざまなものが必要なはずだ。
第1章 野菜は最強の投資である
第2章 さあ、野菜投資を始めよう!
第3章 もう食べずにはいられない! 野菜だけが持つスーパー栄養素
第4章 野菜投資にレバレッジをかける
最終章 俺の話を聞いてくれ!
Q&Aという体で進む第1章、対談調で進む第2章、逆引き辞典風の第3章、そして対談調に戻る第4章。書き口、そしてフォントの級数まで変わりながら展開していくので、違う本を並べて読んでいるみたいな気になるから、目線が常に変わって飽きることがない。
驚きの振れ幅で野菜不足に持ち込む様はまるで野菜パンク
最初の項目に、次のような文章が記されている。
昨今の日本はさまざまな問題に悩まされています。いじめ・自殺・少子高齢化、そして、コロナに経済停滞。これらの社会問題はメティアで頻繁に見かけることと思いますが、その裏で着実に未来をむしばむ深刻な問題があります。それが『野菜不足問題』です。
『野菜は最強のインベストメントである』より引用
なかなかの振れ幅で読者の視線を本書の命題である野菜不足に持っていくあたり、これはもう確信犯だ。野菜パンクだ。でも、惹かれる。それは、読む側の人間が信ぴょう性を感じるからにほかならない。かなりの熱量で走り出したところで、2ページ後にはきわめて冷静な口調で野菜不足問題に関する事実が示される。
①量不足
忙しさやダイエットによる1日1〜2食の欠食。肉のみ野菜なしな食事により、1日350gという推奨量まで達していない。②質不足
野菜購入時、価格重視で外国産を選んでしまう。昼のコンビニ・夜の外食など、質が低い+保存料など、さまざまな化学物質を含んだ野菜を摂取している。③彩不足
野菜料理のバリエーションが少なく、いつも同じ色味の野菜を食べてしまい、バランスよく栄養補給できていない。『野菜は最強のインベストメントである』より引用
野菜を食べる習慣を手に入れるためにもっとも必要なのは「喜んで、美味しく、進んで」野菜を食べること。著者の岩崎氏はそう語る。そして、われわれが抱いている可能性が極めて高い「野菜なんて」という思いは、ページを追うごとに徐々に小さくなっていく。
野菜を食べて健康リテラシーを上げていく
超有名投資家バフェット氏をもじったウォーレン・ベジットというキャラもしれっと出てきたりして、野菜を食べるということを自分の体への投資にたとえながら話が進められていく。これだけ手を変え品を変えて野菜への意識づけを行っていくプロセスの究極の目的は何か。それは、第4章に記されている次の文章から読み取れる。
これまでに紹介した野菜投資を始めてレバレッジをかける。というのは、確実な健康を手に入れる間違いのない方法です。しかし、健康ということをもっと深く深く考えた場合、本書に書いていることは、まだほんの入り口にすぎません。
『野菜は最強のインベストメントである』より引用
え? まだ入り口なの? 筆者と同じ思いを抱く人の数は決して少なくないはずだ。やる気も野菜も全然足りていない。世の中には、なんだかんだと理由をつけて結局手を付けないまま終わってしまうことがたくさんある。積極的に野菜を食べないというのも、そういうものを集めたリストのかなり上位に位置するんじゃないだろうか。
あえて岩崎氏の言葉に乗っかって野菜を食べて、健康リテラシーを上げていくことを強く意識してみるのもありだと思う。体の調子もよくなって頭も冴えるなら、野菜はまさに誰にとっても最強のインベストメントにほかならない。「今のままで本当にいいんですか?」—岩崎氏から直接尋ねられている気になる。
【書籍紹介】
野菜は最強のインベストメントである
著者:岩崎真宏
発行:フローラル出版
富のすべてはあなたの体と脳が生み出す。その体と脳を作るのが野菜投資である!