エンタメ
映画
2023/9/4 11:30

稲葉友が大いなるお笑い愛を語る「落語やお笑いのラジオは生活の一部」

数々のドラマ、映画、舞台に出演する一方で、ラジオのナビゲーターを務めるなど、幅広く活躍、現在公開中の映画『#ミトヤマネ』では、主人公の玉城ティナさん演じるカリスマ・インフルエンサー・ミトを支えるマネージャーを演じる稲葉 友さん。多趣味で知られる稲葉さんに、生活の一部となっているお笑いラジオと落語についてや、『#ミトヤマネ』の撮影エピソードなどを伺いました。

 

稲葉 友●いなば・ゆう…1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)にて俳優デビュー後、数々のドラマ、映画、舞台に出演。主な映画出演作に、『春待つ僕ら』(18)、『この道』(19)、『シライサン』(20)、『ずっと独身でいるつもり?』(21)、 『恋い焦れ歌え』(22)、『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』(23)など。毎週火曜22:00~放送のドラマ10『しずかちゃんとパパ』(NHK)に出演中の他、毎週水曜24:30~放送の『みなと商事コインランドリー2』(テレビ東京)に出演中。毎週金曜11:30~生放送中のJ-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』にてナビゲーターを務める。公式HPX(Twitter)Instagram

【稲葉 友さん撮り下ろし写真】

落語と音楽は通じるものがある

──稲葉さんは落語をよく聴くそうですが、いつ頃から聴き始めたんですか。

 

稲葉 聴き始めたのは20歳そこそこです。きっかけは役者の先輩で、演劇界の人たちが集まって落語をやるみたいな企画があって、それを何回か観に行って、落語って面白いなと思ったんです。そこからYouTubeやサブスクなどで落語を聴き漁るようになって、新宿末廣亭などの寄席にも行くようになりました。その流れで、神田伯山先生がYouTubeチャンネルに長尺の講談を上げていらっしゃるので、講談も聴くようになりました。

 

──好きな噺家はどなたでしょうか。

 

稲葉 僕は現役でバリバリやられている噺家に惹かれるのですが、特に柳家三三師匠と柳家喬太郎師匠が大好きです。正統派の三三師匠と、新作も古典も組み合わせて今っぽい笑いをやる喬太郎師匠と、それぞれ芸風が違っていて、落語を聴いたことがない方は、まずお二人を聴いてほしいですね。

 

──おすすめの演目は何でしょうか。

 

稲葉 三三師匠だと「壺算」(つぼざん)、喬太郎師匠だと「転失気」(てんしき)ですね。お話で好きなのは「井戸の茶碗」。あとは「寿限無」(じゅげむ)や「金明竹」(きんめいちく)などの前座噺は、噺家さんによってオチも尺も変わるので、それを聴き比べるのも楽しいです。

──稲葉さんは音楽もお好きですが、落語のリズムは音楽に通じるものがありますよね。

 

稲葉 そうですね。落語は実際に演じている姿を見ながら聴いたほうが面白いんですけど、耳だけで聴いても楽しいんですよね。それは音楽と通じるところがあります。個人的に小説を耳で聴こうとは思わないんですが、落語だと物語を耳から取り入れる楽しさがあるんですよね。

 

──どういうシチュエーションで落語を聴くことが多いですか。

 

稲葉 いろいろあるんですが、掃除や料理などをしながら落語を聴くと、楽しく家事ができるので、音楽の使い方に近いかもしれません。あと移動中、寝たいときに聴くことも多いです。初めて聴く話だと面白くなって目が覚めてしまうんですけど、聴きまくっている話だと心地よくて誘眠効果があるんです。

 

同世代の芸人が活躍しているのが楽しくてしょうがない

──稲葉さんはお笑い鑑賞も好きなんですよね。

 

稲葉 めちゃめちゃ好きです。最近はなかなか行けなくなりましたが、10代後半から20代前半は、よく劇場にも足を運んでいました。もちろんお笑い芸人の方のラジオも聴きますし、YouTubeでネタ動画を見漁っています。M-1グランプリの予選が始まると、「この季節か」と思いますし、1回戦から見ています。お笑いは同業他社だけど、フラットに楽しめる数少ないコンテンツというか。映画、ドラマ、舞台を見るのも好きなんですけど、どうしても「自分だったらどうするんだろう」みたいな感じで、俳優として見てしまうところがあるんですよね。その点、お笑いはただただ楽しめますから。

 

──劇場まで見に行くのは相当なお笑い好きですね。

 

稲葉 きっかけとしては、地元の友人がコンビでお笑いの養成所に入ったんですよ。もう解散したパンプアップというコンビなんですけど、すでに僕もお仕事を始めていたので、彼らの出るライブを見に行った流れで、頻繁に行くようになりました。パンプアップの同期がオズワルド、コットン、空気階段など、ちょうど賞レースで結果を出している世代なんです。当時見ていた芸人さんが活躍されているので楽しくてしょうがないですね。

 

──芸人さんのラジオだと、どういう番組を聴いているんですか。

 

稲葉 あんまり聴く番組の数が増えると消化できないので、「このラジオは一旦卒業だな」とか自分の中で入れ替え戦をするんですけど、外せないのは『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0(ZERO)』と『ハライチのターン』です。ポッドキャストやネットラジオアプリもよく聴いていて、最近だとマユリカ、ぱーてぃーちゃん、春とヒコーキが好きです。面白い人たちの面白い話を、無料で聴けるなんてことがあっていいのだろうかと思いながら聴いています(笑)。

──ご自身もラジオをやっているから、芸人さんのラジオを聴き始めたところもありますか。

 

稲葉 まさに僕は自分がラジオを始めてから、ラジオを聴くようになったんです。こんなに面白いことをラジオでしていたんだという衝撃があって、芸人さんの日本語の選び方や言葉のスピード感は勉強になります。

 

──芸人さんのYouTubeはどうですか。

 

稲葉 けっこう見ますね。気にかけて見ているのは、ぱーてぃーちゃん、霜降り明星、ママタルト、春とヒコーキ、あたりですね。ぐんぴぃ(春とヒコーキ)さんの「バキ童チャンネル」なんて最高です。

 

──お忙しい中、よく見る時間がありますね。

 

稲葉 落語と一緒で集中して見るとかじゃなくて、ご飯作るぞとか、移動するタイミングで見たり聴いたりするころが多いですね。

 

──生活の一部なんですね。よく料理はされるんですか?

 

稲葉 コロナ禍で外食や人とご飯を食べる機会が激減したことによって、外に出ること自体が僕の中でイベントになっちゃったので、ベースが自炊になりました。自炊だと、好きな料理を好きな量、好きな品数だけ食べられるのもありますし、外食の感動も増すんですよね。

 

──感動が増すというと?

 

稲葉 自分が作ったことのない料理や、初めての味に出会ったときって嬉しいじゃないですか。それって自炊との相乗効果だと思うんです。あと外食で出会った料理を忠実に再現するのは難しいですけど、何となくこうしているのかなとか、こういう組み合わせはありなんだとか、新しい発見も多いんですよね。

 

──料理がお好きなんですね。

 

稲葉 野菜を刻むとか、日持ちしそうな食材を小分けにして仕舞うとか、一連の作業が好きなんです。その間にラジオや落語も聴けますし、ストレス解消にもなるんですよね。

 

SNSの存在が当たり前になった今の日本が詰め込まれている映画『#ミトヤマネ』

──現在公開中の映画『#ミトヤマネ』で、主人公の玉城ティナさん演じるカリスマ・インフルエンサー・ミトを支えるマネージャーの田辺キヨシを演じています。初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

 

稲葉 今の日本のSNSが過渡期なのか全盛期なのかは分からないですが、SNSの存在が当たり前になった今の日本が詰め込まれているなと感じました。物語も登場人物たちの価値観も多面的で、年月が経って見たときに、2023年の映画だなと感じられるような作品だなと思いました。

 

──インフルエンサーにはどんなイメージを抱いていますか。

 

稲葉 僕自身はインフルエンサーから何がしかの情報を得ることはあまりないんですけど、職業として確立されていて、生計を立てる手段でもあるし、そこから有名になって芸能界デビューするルートの一つでもあるのかなと。

──田辺を演じる上で、どんなことを意識しましたか。

 

稲葉 僕がお仕事を通して見てきたマネージャーさんは、わりと控えめというか、あまり目立たない格好をして、タレントがいるときは、ちょっと下がっているみたいな方が多い印象でした。ところが、田辺は自分の着たい服を着て、自分のしたい髪型やメイクをして、ネイルもしてと、自己主張の激しいタイプ。そういう格好ができちゃう人だから、こういう性格で、こういう話し方やテンション感になるだろうなとイメージしていきました。きっとマネージメントをしているのはミトだけじゃないから、誰に対してもフラットに接して、それでいて仕事はきっちりやるというギャップもあって演じやすかったです。

 

──宮崎大祐監督の演出はいかがでしたか。

 

稲葉 下読みをしたタイミングで、「この役は、どういう人間ですかね?」みたいな話をして、「こういう話し方はどうですか」というご相談はあったんですが、現場ではヒップホップの話ばかりしていました(笑)。フラットにそういうお話ができるということは、ちょっとした疑問があったときにもコミュニケーションが取りやすいんですよね。

 

──独創的な映像や構成が印象的でした。

 

稲葉 初めて完成した作品を見たときに、脚本を読んだだけでは想像しえなかったものが見事に映像化されていて、宮崎監督の頭の中がぎっしり詰め込まれているなと。音楽や映像の使い方はもちろん、カット割りなども独特なんですけど、撮影しているときに違和感はなくて。自分が出演しているというのもありますが、こういう切り取り方をするんだ、こういう組み合わせで、こういう繋ぎ方をするんだと面白い映画体験でした。僕は自分が出ている作品は落ち着いて見られないほうなんですけど、この映画はさまざまな要素が詰め込まれていて普通に楽しめました。

──玉城さんの印象はいかがでしたか。

 

稲葉 カリスマっぽいイメージがあったので、ミトにぴったりだなと思っていたんですけど、実際の玉城さんは気さくで、とっつきやすい方なんですよね。たくさん言葉を知っているから、どういう話を振っても、会話が弾むのも面白かったです。

 

──ミトの妹・ミホを演じた湯川ひなさんの印象は?

 

稲葉 ひなちゃんは過去に舞台でご一緒する機会があったんですが、ちょうどコロナ禍で公演中止になってしまったんです。1週間だけ稽古はしたので、お互いのお芝居は見たんですけど、あまりお話する間もなくて。今回、お久しぶりということで、挨拶に行こうとしたら、「私のこと覚えているかな……?」という表情をしていたんです(笑)。人と慣れるまでに時間がかかるタイプなのかなと思っていたんですが、撮影に入ると、よどみなく話すようになって。ところが本作の試写で久しぶりに会ったら、また距離があるなと感じて、親戚の子みたいな感じがあります(笑)。お芝居面では、すごく吸引力があって、筋道を通して演じる足腰のしっかりした方で。ひなちゃん本人のかわいらしい人間性と俳優としての強さのギャップが素敵でした。

 

──最後に映画の見どころをお聞かせください。

 

稲葉 一筋縄ではいかない作品ではあるんですけど、映画好きの方でも、長い映画を見慣れていない方でも、見やすい作品だと思いますし、実際のテンポ以上に圧倒的な疾走感と緩急を感じられます。人それぞれ、どこにポイントを置くかで見え方も違ってくる作品で、映画の体験として本当に楽しいので、ぜひ映画館で映像と音楽を浴びていただきたいです。

 

 

(C)2023 映画「#ミトヤマネ」製作委員会

#ミトヤマネ

絶賛公開中

(STAFF&CAST)
脚本・監督:宮崎大祐
配給:エレファントハウス

出演:玉城ティナ
湯川ひな 稲葉 友
片岡礼子 安達祐実 筒井真理子

(STORY)
主人公の「ミトヤマネ」(玉城)は絶大な人気を誇るカリスマ・インフルエンサーで、日々さまざまなSNS投稿をして生活を送っている。そんな姉を陰で支えているのは妹のミホ(湯川)だ。そんなある日、ミトが所属しているインフルエンサー事務所のマネージャー(稲葉)から、「ディープ・フェイク」アプリとのコラボ案件を持ちかけられる。アプリは大人気となり、世界中の至る所にミトの顔が拡散された。一方、ミトの顔を悪用する者も次々と現れる。そんな状況すら自分の人気につながると喜ぶミトであったが……。

公式サイト:https://mitoyamane.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/mitoyamane/
公式Twitter:https://twitter.com/mitoyamane

(C)2023 映画「#ミトヤマネ」製作委員会

 

 

撮影/武田敏将 取材・文/猪口貴裕 ヘアメイク/速水昭仁(CHUUNi) スタイリング/添田和宏 衣装協力/メアグラーティア、ヨハン シルバーマン、ティグル ブロカンテ、フラグスタフ、リプロダクション オブ ファウンド、スキャット