「週刊GetNavi」Vol.49-2
Appleとマイクロソフトの作るPCは、OSも違えば、そのうえでのタッチやペンの扱いも違う。
しかし、マイクロソフトは明確に「Apple」を仮想敵としており、Surfaceをアピールする際には必ず、MacBookやMacBook Proを引き合いに出す。キーボードやボディの作り込みについて説明する際には、丹念で凝った部分のアプローチについて、たっぷりと時間を取る。その過程では、Apple製品へのリスペクトを語ることも忘れない。
米マイクロソフトで、Surfaceなど「マイクロソフトブランド」デバイス事業担当の副社長であるブライアン・ホール氏は、凝った作りのPCを狙う理由を、次のように語っている。
「持っている人が誇りを感じられるような製品にするためです。そうすることで、はじめて製品のブランドは生まれるのです。Appleはそうしたことをうまくやっている」
これは別の言い方で表すこともできる。
マイクロソフトは、「マイクロソフトやSurfaceがPCのブランドとして独り立ちするような製品しか売るつもりがない」ということだ。ブランドが独り立ちする製品とは、別の言い方をすれば「付加価値があって、高い値段で販売できて、価格競争をする必要がない製品」ということでもある。
PCはコモデティ製品だ。パーツを集めてくれば作れる、という側面が大きい。昔はそれで作れるのはデスクトップPCくらいのものだったが、いまや、薄型・軽量のノートPCも作れる。シンプルな製品で戦っても、価格競争のなかで苦しむだけだ。多くのPCメーカーがその只中に置かれている。
実際問題、この中にいないのはAppleくらいのものだ。Appleは、単価が高いMacBook Proを指名買いに近い形で買う多くのユーザーを抱えており、それによって業績を維持している。マイクロソフトがAppleのMacBook Proをベンチマークに置くのはそのためだ。
では、MacBook Proがなぜ支持されてきたのか? ひとつは、OSとハードウエアが一体化しているので、品質が高いということだ。また、大量生産を前提に、ボディの仕上げなどにコストをかけているため、「価格の割に品質の良い製品」が得られる、という点がある。
マイクロソフトはSurfaceで完全にこの路線をコピーしている。Surfaceは格安な製品ではないが、製品の作りやギミックを考えると割安で、安心して購入できる。筆者も持っているが、満足度の高い製品だ。世代を重ねることで、Surfaceはブランド構築をなんとか成功させつつある、と見ていい。過去に、PCブランドでこうした評価を得られたのは、ThinkPadやVAIOなど、ごく一部のものだけだ。それも、常にブランド価値を維持できているわけではない。SurfaceやMacBook Proが今後も「PCのなかのハイブランド」でいられるかどうかは、まだわからない。
単価・利益率の高い製品を攻める、という意味で、SurfaceがMacBook Proをベンチマークにしたことは正しかった。
一方で、MacBook Proが「高単価」を維持できていたことには、別の理由もあり、マイクロソフトはそこを攻めようとしている。その市場とはどこか? その辺は次のVol.49-3で解説したい。
※Vol.49-3は12月8日(木)公開予定です。
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