Vol.130-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは新製品が多く登場しているサングラス型ディスプレイ。真のAR機器とは言えないが、高精細な画質で得られる体験は何か。
XREAL
XREAL Air
実売価格4万9980円
ディスプレイとUSB規格の普及が理由
このところ、サングラスのような形状のディスプレイの市場投入が続いている。
顔につけるものだが、いわゆるVR用のヘッドマウント・ディスプレイではない。メーカーは「ARグラス」などの表記を使っているが、アップルの「VISION Pro」などとは異なり、本格的なAR機器でもない。
どの製品も、サングラス状のデバイスをかけると目の前に大型のディスプレイが表示される。そうした製品は昔からあったが、現在のトレンドは「スマホやタブレットと簡単に接続可能」「映画を見ても満足できる高画質・高発色」「PC用ディスプレイとしても使える高精細」が特徴だ。
この種の製品は2022年春に発売された「XREAL Air」(発売当時のブランド名はNreal)から広がり、現在は「VITURE One」(クラウドファンディング後、9月より出荷開始)や「Rokid Max」など、複数のメーカーから似たような特徴のモノが出てきている。細かな仕様・使い勝手には違いがあるのだが、デザインや画質、価格などは結構似通っている。
サングラス型ディスプレイが増えてきた背景には、製品に使われるディスプレイが手に入りやすくなってきたから……という事情がある。こうした製品に使われているのは「マイクロOLED(有機EL)」と呼ばれるもの。多くの場合、現在はデジタルカメラのファインダーに使われている。高画質・高精細なのも当然だ。
画面の見え方で“ARグラス”と名乗る
そうしたデバイスを使って“目にかけることのできる”ディスプレイを作るメーカーが増えているわけだが、同時に、スマートフォンやタブレット、PCなどで「USB Type-C」が普及したことも大きい。DisplayPort規格の場合、USB Type-C経由でも伝送できて、簡単に接続できる。双方が揃ったので、メガネサイズのディスプレイを作れるようになってきたわけだ。
当初彼らは“AR用の機器”の開発を目指していた。だが、現状は技術的なハードルも大きく、実用的にはならない。しかし“映画などのコンテンツを楽しむもの”としてなら、いまでも十分に魅力ある製品になる。XREALがそうした路線への転換で成功したこともあり、多くの中国メーカーが同じ路線で取り組み始めた……というところだ。
実際にはARとは言えないのだが、“空中に画面が浮いているように見える”という要素から「ARグラス」という言い方をするあたり、良くも悪くも中国系のノリを感じる部分だ。
筆者もこの種の製品を複数持っている。基本的にはスマホなどと接続し、リラックスタイムや旅行時などに映画などを楽しむために使うのが良いだろう。昨年以降、移動時間の長い出張時には、タブレットにXREAL Airをつないで“自分だけのホームシアター”にし、映画やドラマを一気見するのが定番の過ごし方になった。コミックなどの電子書籍を大写しにして楽しんだり、ゲームを楽しんだりするのも良い。
では、これらの製品を使う点での課題はどこか? メーカーによる違いはどこか? そのへんは次回以降解説していく。
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