Vol.130-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは新製品が多く登場しているサングラス型ディスプレイ。製品の進化に合わせて出始めてきた、各メーカーの差別化ポイントを探る。
XREAL
XREAL Air
実売価格4万9980円
一般論としてどんな製品も、“こういうデザインで、こういう機能で、こういうデバイスを採用する”という鉄則に近いものが生まれることは重要だ。多くのメーカーが参入し、結果として製品のコストや質の改善が加速する。サングラス型ディスプレイはまさにそのサイクルの初期に到達した、という印象が強い。
一方、似たようなデザインで似たようなデバイスが作られていると、製品ごとの差がわかりにくいという欠点も出てくる。特にサングラス型ディスプレイでは、コアなデバイスとなる「マイクロOLED」で、多くのメーカーが同じデバイスを使っている。そうすると、単純に表示するだけだと差が生まれにくい、ということにもつながる。
だから各社は、それ以外の点で細かな工夫を始めた。特に注目すべきなのは、3つの領域だ。
1つ目は「視度調整」。いわゆる近視・遠視向けの調整機能だが、現状では、VITUREやRokidの製品が視度調整機能内蔵で、XREALは内蔵しない。視力調整用レンズを併用する必要が減ってくるので、多くの人にとっては使いやすくなる。製品ごとに視力調整レンズを作るのは、コスト的にも手間的にも大変だ。ただ、より度の強い調整が必要だったり、乱視への対応が必要だったりする場合、現状の視度調整機能ではカバーできないため、結局は視度調整レンズが必要になる。
2つ目は「3DoF対応」。3DoFとは、自分がどの方向を向いているのかを認識する能力のこと。VR機器ではさらに、自分の位置を加えた「6DoF」を認識することが多いが、3DoFでは、自分を中心としてどの方向を向いているのかだけを認識する。
サングラス型ディスプレイは実景の中に映像を重ねられるが、なんの工夫もしない場合、視界内の同じ位置に映像が出続けることになる。それはそれでいいが、どこを向いても、いつでも映像が中央にあることに違和感を覚える人もいるだろう。乗り物の中などでは「酔い」につながることもある。
ここに3DoFを導入すると、空間のどこかにディスプレイ画面を配置し、自分がそこを見たときだけ映像が見える……という使い方ができるようになる。ただ、サングラス型ディスプレイで映像が表示されるのは視界の中央だけなので、3DoFにすると“のぞき窓からディスプレイの一部を見ている”感じであり、過大な期待は禁物である。
XREALとRokidの場合には、PCを含む外付け機器と連携する形で3DoFを実現するが、VITUREはグラス本体で3DoF対応ができるようになっている。XREALの場合、PC/Mac用の専用アプリケーションを用意し、「ワイドディスプレイ」「3画面表示」などのオプションを選んで表示することも可能だ。
そして3つ目の工夫は、2つ目にも関わる「外部機器」ということになる。外部機器でどのような差別化が行なわれているかは、次回解説したい。
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