湊かなえ氏が作家生活10周年の節目として書き下ろしたミステリー小説「落日」がWOWOWで連続ドラマ化。9月10日(日)午後10時より放送・配信する。吉岡里帆さんは過去にトラウマを抱える新人脚本家・甲斐真尋を演じている。北川景子さん演じる新進気鋭の映画監督・長谷部香と女性二人が手を取り合い、心の傷を克服する姿を美しく感じたという吉岡さんが役作りや北川さんの印象について語ってくれた。
【吉岡里帆さん撮り下ろし写真】
香と真尋、二人のキャラクターの対比みたいなものを一番意識して演じました
──原作は湊かなえさんの小説です。お読みになった感想はいかがでしたか。
吉岡 湊かなえさんの原作小説は、北川景子さん演じる長谷部香と私が演じた甲斐真尋という対照的な二人が手を組んだことにより、トラウマを乗り越え、希望を見いだしていくという構図になっています。原作を読んで、その人間関係がとても素敵だなと思いました。一見相反する二人だけれど、心の奥底で繋がっていて、過去の出来事から負ってしまった心の傷と戦いながら、それでも前を向いていたいという思いを捨てずに進んでいく。その姿がとても美しく感じたので、真尋を演じる上でもそういうところを意識しました。
──真尋は今まで吉岡さんが演じてこられなかった役柄のような印象があります。
吉岡 真尋は過去にあった出来事を乗り越えられず、すごく後ろ向きなキャラクターなんです。そこから北川さん演じる女性監督の香に引っ張り上げられて、救い出してもらうような人間なので、人に影響を受けて前向きになっていく過程を大事に演じました。北川さんが演じる香は強さやかっこよさ、包容力を持ったキャラクターであるのに対して、私が演じた真尋は、弱くて前に進めず、同じ場所で停滞している。二人のキャラクターの対比みたいなものを一番意識して演じていました。
香に自分の話をする真尋のシーンは研究しがいのあるシーンだと臨みました
──過去にトラウマを抱える役なので演じていて苦しかったことはありましたか。
吉岡 真尋がトラウマを抱えていることを香に初めて見抜かれるシーンがあって。香は監督なので会話する相手の心の状態など、深いところを聞いてくるんです。「どういう状況だったの」「あのときはどう思っていたの」みたいに香に問い詰められて、真尋は答えたくないのに答えてしまう。真尋が諦めたように自分の話をするシーンだったので、怖かったし、緊張感もありました。
──自分自身が向き合ってこなかった部分をさらけ出すとも言えるシーンですが、どんな気持ちで演じられましたか。
吉岡 限られた時間の中で一番ピークまで感情を持っていくのが本当に難しくて。子供の頃のトラウマを大人になってから話すことになるので、真尋が溜め込んできた時間みたいなものをイマジネーションする作業というか。なので苦しいという気持ちもありましたし、人がずっと隠してきたものを吐露するときってどういう感じなんだろうって、研究しがいのあるシーンだなって思って臨みました。
──そもそも「知る」ということについて積極的ではない真尋が、どうして脚本家になったんだろうって思いました。
吉岡 個人的に思ったのは、何かを書く仕事って、世の中に発信できるエネルギーに溢れている人だけが書いているわけじゃないと思うんです。真尋は自分が思っていること、抱えていることを言えなかったり、表立って自分というものを出さなかったりするからこそ「書く」ということにたどり着いたのかなと解釈しています。真尋は全然才能がないと言われるところから物語がスタートするのですが、それでも辞めないということは、彼女は書くことに救われているのかなって。文字の世界にいることで安心感を覚えたりもしているんじゃないかって思いました。
人間の関わり合いの優しさをすごく細かく演出されているように感じる
──内田英治監督とはいつかお仕事をしたいと思っていらっしゃったそうですね。
吉岡 仲が良いヘアメイクさんが内田組も担当されていて、「素晴らしい監督さんなので、いつか一緒にお仕事をしてみてほしい」と何度かおっしゃっていて。それで興味が湧いて、そのヘアメイクさんと一緒に「ミッドナイトスワン」を映画館に観に行ったら、あまりにも素晴らしい映画で本当に心が震えました。トランスジェンダーの凪沙と親戚の女の子がだんだんと本当の母と娘のようになっていくんですが、内田監督って相容れない二人が出会ったときの科学反応みたいなものを、本当に優しく撮る方なんだなと感じたんです。人間の関わり合いの優しさをすごく細かく演出されているように感じて、私はそこに惹かれました。
──過去と向き合うために映画を撮ろうとする香と、過去となかなか向き合うことができない真尋、相容れない二人という点では共通しているのかもしれませんね。
吉岡 企画書をいただいたときに、湊かなえさんが描く対照的な女性二人の様が共通しているなって思いました。「ミッドナイトスワン」を見たときも、二人だけの狭い世界で、お互いを思いやるお話だったので、「落日」も二人の小さな世界かもしれないけど、丁寧に表現できるのかなと思うととても楽しみでした。
「かわいいです、北川さん!」と思う瞬間がたくさんありました
──実際に内田監督とご一緒していかがでしたか。
吉岡 印象に残っているのが、内田さんは現場の座組をとても信じている人なんだなということです。現場で出たアイデアを否定せず、「なるほど、そういうのもあるね」って取り入れて撮ってみるというのを何度かお見かけしたので、スタッフの皆さんを信じていらっしゃるんだなと。そして私たち役者のことも信じてくださっているのを感じて、素敵な監督さんだなって思いました。
──北川さんの印象を教えてください。
吉岡 本当に美しくて優しくて、包容力があって面白くて。一緒にいるのが本当に楽しくて、撮影中は幸せでした。お芝居に関しては二人で「こうしよう」と話し合って作るというより、現場にいて自然に出てきたという感じでした。
──一緒にお芝居をして、驚いたことや意外だったことはありましたか。
吉岡 初めは北川さんが美しすぎて緊張していたんですけど、気さくに話してくださって。北川さんってこうクールビューティーで、かっこいい女性のイメージが強かったんですが、お話をするととてもかわいらしいチャーミングな一面をたくさん見ることができました。失礼かもしれませんが、「かわいいです、北川さん!」と思う瞬間がたくさんありました(笑)。
踏み込まれたくないだろうなと感じたらそれ以上は絶対に踏み込まないように
──香と真尋の“真実”に向き合う姿が描かれていきますが、吉岡さんご自身は真実を積極的に知りたいと思うほうですか。それとも隠された真実なら暴かなくてもいいかなと思いますか。
吉岡 ラジオ番組のパーソナリティーをやっているんですが、インタビュアーの立場になるので、相手が話したくないだろうな、ここは踏み込まれたくないだろうなって少しでも感じたらそれ以上は絶対に踏み込まないようにします。全てを知らなくても、その先に築いていける関係性もあると思うので。
──ではここからは「モノ」に関する質問をさせてください。今ハマっている「モノ」を教えてください。
吉岡 マネージャーさんが3年前の誕生日にプレゼントしてくださったパナソニックのスチーマーです。精製水だけじゃなくて化粧水の蒸気が出せるスチーマーで、めちゃくちゃ気に入っています。しっかり保湿もできるのでずっと愛用しています。
──普通に化粧水を塗るだけとは違いますか。
吉岡 お風呂に入った後に使うんですが、浸透力があって潤う感じがします。
──美容家電はお好きなんですか。
吉岡 美容家電好きですね。かっさも使っています。電動であったかくなって、マッサージにめちゃくちゃいいんです。私は足がむくみやすいので、テレビを見ながらかっさで足をマッサージしています。最近新しいのが出たみたいで、それも気になっています(笑)。
──気に入ったら長く愛用するタイプですか。
吉岡 そうですね。買うときにすごく考えて、めちゃリサーチして電気屋さんを回って購入するので、1回買ったらずっと大事に使います。
──口コミを見てネットショッピングじゃなく、実際に店頭で商品を見られるんですね。
吉岡 そう、店舗に行って見ます。実物を見て、見た目、触り心地の良さを確かめて、「本当のところどうですか?」って店員さんにお話を伺います(笑)。そうすると親身に答えてくださって、「今こういうのを打ち出していますけど、個人的にはこれをめちゃくちゃ推しています」みたいな話をしてくださるんですよ(笑)。
連続ドラマW 湊かなえ「落日」
9月10日(日)スタート(全4話)
毎週日曜午後10:00 放送・配信(第1話無料放送)
【連続ドラマW 湊かなえ「落日」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
原作:湊かなえ『落日』(ハルキ文庫刊)
監督:内田英治
脚本:篠﨑絵里子
出演:北川景子 吉岡里帆 久保史緒里(乃木坂46) 高橋光臣 宮川一朗太 真飛 聖 / 竹内涼真 黒木 瞳 ほか
(STORY)
初の監督作品で国際的な評価も得た新進気鋭の映画監督・⻑⾕部⾹(北川)は新人脚本家・甲斐真尋(吉岡)に、映画の脚本の相談を持ちかける。その基となるのは、15年前、 引きこもりの男性・⽴⽯⼒輝⽃(⽵内)が⾼校⽣の妹・沙良(久保)を自宅で刺殺後、放⽕して両親も死に⾄らしめた“笹塚町⼀家殺害事件”。そして事件が起きた⼩さな町・笹塚町は真尋の⽣まれ故郷でもあった。真尋の師である人気脚本家・大畠凜⼦(⿊⽊)は、真尋の背中を押す⼀⽅、この事件に興味を⽰し……。
さらに、この事件を追うことは、⾹と真尋それぞれが抱える“ある過去”とも向き合うことも意味していた。判決も確定しているこの事件を、⾹はなぜ撮りたいのか。真尋はどう向き合うのか。事件を調べていくうちに、衝撃の真実にたどり着く。
撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/北原果(KiKi inc.) スタイリスト/安藤真由美(スーパーコンチネンタル)