家電
2016/12/13 17:16

“汚れが勝手に落ちる”最先端トイレはどうやって作られる? 業界2強を脅かす「アラウーノ」の生産現場に潜入!

みなさんは、あのパナソニックが便器を作っていることをご存じでしたか? その便器とは、便器自体が自動で汚れを防いでくれるハイテクトイレ「アラウーノ」。すでにタンクレストイレというカテゴリでは、業界の2強、TOTOやLIXILを脅かす存在になっています。

 

前回は、有機ガラス素材による精密な成形、少ない水で流しきる独自のターントラップ方式、2種類の泡で汚れを徹底的に落とす泡洗浄など、その革新的な技術について触れてきました。後編となる今回は、家電メーカーのパナソニックがなぜアラウーノを作るに至ったのか、その経緯をたどるとともに、愛知県幸田町の工場に潜入し、貴重なアラウーノの生産現場の様子をお届けします!

↑建物内にあった巨大アラウーノ。イベントなどで展示されるそうです
↑建物内にあった巨大アラウーノ。イベントなどで展示されるそうです

 

エコソリューションズ社で唯一アラウーノを作る幸田工場

今回はまず、これから工場見学を行う幸田工場に触れていきましょう。そもそも、パナソニックは4つの会社に分かれている(※)ことを、みなさんはご存じでしょうか? みなさんが一般的に「パナソニック」だと思っているのは、実は「アプライアンス社」や「AVCネットワークス社」で、実は4社のうちの一部だったんですね。

※アプライアンス社、エコソリューションズ社、オートモーティブ & インダストリアルシステムズ社、AVCネットワークス社の4社

 

一方、今回訪問した幸田工場は、パナソニックグループ4カンパニー制の一社、エコソリューションズ社の製品を作っています。エコソリューションズ社はアラウーノを始め、空気清浄機やシステムキッチン、LED電球、太陽光パネルなどを作っている会社。同社は8つの工場を持っており、ほとんどがシステムキッチンやバス(お風呂)を作っていますが、幸田工場は、唯一アラウーノを作っている工場になります。

 

なお、同工場には、100万台突破を記念して作成された金箔貼りアラウーノもありました。こちらは、職人の手によって、一枚一枚金箔が手貼りされ、丁寧に仕上げられた逸品だといいます。もしこんなのが自宅にあっても、恐れ多くて座れませんね。

↑こちらは100万台突破を記念して作成された金箔貼りアラウーノ。さすが愛知県、豊臣秀吉の黄金の茶室を彷彿とさせます。
↑金沢伝統工芸の金箔を使用した「金箔貼りアラウーノ」。残念ながら、非売品です

 

また、余談ですが、幸田工場がある幸田町は、自動車関連産業の生産設備もあり、製造品出荷額が国内No.1の愛知県にあって、その市区町村別の製造品出荷額ランキングでもかなりの上位に入っています。ちなみに、ランキングでトップ10入りしているのは、幸田町を除けばすべて「市」ばかり。また、製造品出荷額が1兆円を越える「町」は極めて少ないといいます。

 

トイレ事業も松下幸之助の「やってみなはれ」から始まった

次に、パナソニックのトイレ事業の歴史について。アラウーノは今年で10周年ですが、同社のトイレ市場への参入は1963年からと50年以上の歴史を持っています。参入の際は、同社の創業者、松下幸之助氏が「トイレがない家はない。やってみなはれ」と有名なフレーズでGOサインを出したとのこと。その後、1973年から簡易水洗便器での便器市場に参入し、1995年からタンクレストイレ市場に参入しました。

↑幸田工場には松下幸之助氏も訪れています。こちらは訪問時に記念として植樹された松
↑幸田工場には松下幸之助氏も訪れています。こちらは訪問時に記念として植樹された松

 

では、なぜアラウーノは有機ガラス(樹脂の一種)を採用するに至ったのでしょうか? その理由とは、同社がもともと創業当時からプラスチックをはじめとする樹脂をコア技術にしていたこと。特に1958年には住宅建材市場に参入しており、ここで蓄積していた樹脂成形のノウハウを活用したわけです。

 

加えて、陶器による便器の海外生産において、歩留まり率(不良品が出ない製品割合)が一定数から上がらないことにも着目。「これを改善するには、生産方法を根本から見直すしかない」と満を持して樹脂に切り替えたといいます。

 

いよいよ工場内へ! 最終工程では職人の技が生きていた

さて、パナソニックのトイレ事業の歴史と幸田工場について教えてもらったあとは、いよいよ工場見学です! 工場は2階建てで、まず1階で組み立て前の部品を樹脂成形し、それを組み立てます。それを2階に運び、人力でさまざまな部品を取り付け、製品が完成。なお、機械化は進んでいますが、最終工程の組み立て作業は人の技量が必要となるそうです。働いている人は、それぞれ技能によって働く場所や時間帯が変わってくるとのこと。さらに、その技能を上げるための訓練も欠かさないとか。アラウーノの生産現場では、まだまだ「職人の力」が生きているというわけですね。

↑幸田工場では、アラウーノ以外にも洗面ミラーや階段なども作っています
↑幸田工場では、アラウーノ以外にも洗面ミラーや階段なども作っています

 

↑こちらは樹脂成形した部品のバリなどを取る機械
↑こちらは樹脂成形した部品のバリなどを取る機械

 

↑ベルトコンベアでアラウーノの部品が流れてきます
↑ベルトコンベアでアラウーノの部品が流れてきます

 

↑スカートと呼ばれる本体の部品です
↑スカートと呼ばれる本体の部品です

 

↑タンクレストイレの根幹をなすターントラップを組み立てている様子
↑タンクレストイレの根幹をなすターントラップを組み立てている様子

 

↑工場は女性工員が多いとのこと。細やかな仕事は女性の方が得意のようです
↑工場は女性工員が多いとのこと。細やかな仕事は女性の方が得意のようです

 

↑製品を台車に乗せ、工程ごとに担当者に回していく循環型セル方式で最終的な組立てを行います
↑製品を台車に乗せ、工程ごとに担当者に回していく循環型セル方式で最終的な組立てを行います

 

幸田工場では、樹脂成形から組み立て、完成まで一貫して行っているのが特徴。部品から作っているわけですから、まさにメイドインジャパンそのものですね。そういえば、日本のトイレは海外セレブの御用達ということですが、この工場を見ればその理由も納得というものです。

 

今回の工場見学で、樹脂による自由成形や泡洗浄、ターントラップ方式などの画期的な技術と、精密で丁寧な生産工程を見るにつけ、「もうトイレはアラウーノじゃないとダメでしょ?」と思うまでに感化されてしまいました。ツアーに参加する前は、トイレにまったく興味がなかったのに……。それがいま、かなりリアルに欲しくなっていることを思えば、やはりアラウーノには、人の考えを180度変えるほどの大きな力があるといえるでしょう。

↑便器の蓋のカラバリを10色用意。現行色の3色中2色と新たな8色を加えた10色で展開しますカラバリはキャンペーンなので、今年12月1日から来年の11月末までの1年間限定!  トイレのフタとは思えないほど華やかな感じです
↑アラウーノのトップカバーは10色ものカラバリをラインナップ。価格は標準タイプ 本体価格 30万円 + カラー指定 1万円(税抜)