お寺に泊まりながら僧侶の日常を体験する「テンプルステイ」。 最近の韓国では、宗教的な関心とは関係なく、休息とリフレッシュを目的にテンプルステイを楽しむことがトレンドになっています。日本にも「宿坊」がありますが、どんな違いがあるのでしょうか?
リアルな修行体験
韓国のテンプルステイは、2002年の日韓ワールドカップ開催時に観光客の宿泊施設が不足していたため、お寺を宿泊施設として開放したのが始まりです。リアルな僧侶の生活を体験しながら、忙しい現代人が心を休める場所として流行しました。
韓国で仏教はキリスト教の次に信仰者が多い宗教であり、深く信仰していない人でもテンプルステイをしたり、僧侶がユーチューブで人生相談をする動画の再生回数が100万回を越えたりするなど、韓国国民にとって身近な宗教の一つです。
韓国の文化体育観光部によると、テンプルステイが始まった2002年から2022年までの20年間に、体験者数の累計は国内外を含め600万人を超えました。テンプルステイのプログラム自体は寺院によって運営されていますが、宗教に関心がなくても休息やリフレッシュ目的で参加することを寺院側も歓迎しています。
費用は一泊当たり5万~7万ウォンほど(約5800~8200円※)。実際に僧侶の服を着たり、普段僧侶が食べている質素な精進料理を食べたり、座禅に参加したり、さまざまな修行をリアルに体験できます。
※1ウォン=約0.12円で換算(2023年11月16日現在)
基本的に飲酒や喫煙は禁止されており、このルールを守らなかった場合には即刻退室させられたり、罰金が発生したりするお寺もあるそう。
お寺によってはチャダム(僧侶とのお茶会)をしているところもあり、なかには人生の悩みを打ち明け、僧侶の助言によって涙を流す体験者もいます。
おもてなしが際立つ日本
一方、日本の宿坊は、平安時代に上皇が地方を訪問した際に宿泊施設が整備されていなかったため、寺社を宿泊施設として利用したのが始まりです。韓国のテンプルステイとは対照的に、日本では皇族や貴族階級が宿坊の客だったことから、旅館のようなおもてなしがされるようになりました。
日本の宿坊は一泊当たり1万円以上のところが多く、豪勢な精進料理やお酒が振舞われ、宿坊によっては温泉に入れるところもあります。座禅体験もできますが、日本の宿坊では強制ではなく任意参加のところが多いようです。
このように、韓国と日本の宿坊では始まった時代や意図が異なるため、さまざまな違いがあるようです。
熾烈な競争社会で生きる韓国人をはじめ、禅の体験に魅力を感じる外国人も訪れるテンプルステイ。コロナ禍も終息し外国人観光客が増えた現在、観光スポットとしてさらに需要が高まっていきそうです。予約可能なテンプルステイ関連サイトには、外国人専門のテンプルステイプランもあるので、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?