個人的に「日清食品が攻めているな…」と感じる2016年でした。今までも凄かったですが、「いまだ! バカやろう!」のキャッチコピーCMが放映され始めてからどんどん強烈になっている気がします。
最近でも、グループ会社の明星食品の代表商品『明星 一平ちゃん』が12月5日からショートケーキ味を販売しているし、先日数量限定で発売開始された『RAMAD WORKER』 も食品じゃねー!とか思いつつ、思わずカートに入れてしまうくらいのいい商品だったし…、とにかく日清がアツい! ということで、日清の回しものでもなんでもない私が、『時代を切り開いた世界の10人 第6巻 安藤百福』(高木まさき・監修/学研プラス・刊)から、特に「チキンラーメン」にスポットを当ててお伝えさせていただきます。
チキンラーメンが大ヒット。しかし、13社が同じ名前で発売しちゃう!
「チキンラーメン」は戦後、ラーメンの屋台に並ぶ行列を見た安藤百福(以下、安藤さん)が、「家庭で、お湯だけでみんなが食べられるラーメンを作りたい!」という情熱から開発された商品です。
安藤さんは自宅の近くに建てた小屋にこもり研究を続けていました。発売当初は、出来上がった商品を安藤一家総出で袋詰め作業をしていたんだとか。テレビCM等で宣伝ができるようになると、なんと今では考えられない概念で、13社もの企業がちょっとずつパッケージを変えるなどして「チキンラーメン」を販売していたというのです! 安藤さんは不正競争防止法で、13社を訴えましたが以下のように抵抗されています。
これら十三社は「全国チキンラーメン協会」という団体を作って、『チキンラーメン』の商標登録に対して異議を申し立ててきたのだ。
相手の言い分は、「チキンラーメンはチキンライスと同じ普通名詞だ。」という実に信じがたいものだった。
(『時代を切り開いた世界の10人 第6巻 安藤百福』より引用)
…お、おうぅ。現代では考えられないパクリっぷり! もうお分かりだと思いますが、この異議申し立ては取り下げられ、日清食品は無事「チキンラーメン」の商標を獲得し、現代に至っております。
食中毒が発生…でもそれは日清のチキンラーメンじゃない!!
商標騒ぎでほっとしたのもつかの間、今度は「食中毒」が発生してしまったのです…。
「このままでは築き上げてきた信頼が失われてしまう…」
そう思った安藤さんは、その商品を取り寄せたのですが、よーく見てみると麺の太さ、色などが日清食品のチキンラーメンと違う…。専門機関で詳しく調べてみると、麺を揚げる温度が低かったために細菌が繁殖し、食中毒になったとの結果。日清食品の工場で作られているのは、160度もの高温の油で揚げて乾燥させた独自特許を使った製造工程を経ているので、食中毒が起こることは考えられなかったのです。
パッケージが一緒なのになんで…?? 警察が捜査に乗り出すと、驚くべき事実が明らかにぃー!
印刷会社に本物のチキンラーメンと同じパッケージを三十万枚も印刷させて、中に偽物をつめて販売していたのだ。
(『時代を切り開いた世界の10人 第6巻 安藤百福』より引用)
悪質すぎる!! 犯人たちは無事捕まりましたが、今では考えられない規模の詐欺事件です。。。
64社で日本ラーメン工業協会を設立、業界全体で成長を
この事件後、当時の食糧庁長官から「業界の協調体制を確立しなさい」とのお達しが届き、安藤さんは「一本の木ではなく、大きな森になろう」とインスタントラーメン業界全体をまとめるために動き出します。結果64社の同志が集まり、日本ラーメン工業協会、現在における「日本即席食品工業協会」を1964年に設立し、安藤さんが初代理事長を務めました。
それからというもの、インスタントラーメンは巨大産業に成長し、日本だけでなく海外へも進出し、さらには宇宙食として親しまれるなど、今では私たちの生活には欠かすことのできない存在になりました。そして、2007年1月3日。前日まで仕事をしていた安藤さんですが、早朝に熱がでてしまい、容態が急変。96歳で亡くなりました。その時のことを息子さんは「安藤百福はハレーすい星に乗って地球にやってきて、カップヌードルとチキンラーメンを置き土産に、自分が食べるスペース・ラムをしっかり持って、再び宇宙に旅立った。」と語っています。
そんな宇宙へ旅立った安藤さんに思いをはせて、さむ〜い冬の夜は、チキンラーメンを食べませんか?(私は、日清食品の回しものではありません!)
(文:つるたちかこ)
【参考文献】
時代を切り開いた世界の10人 第6巻 安藤百福
著者:高木まさき(監修)、茅野政徳(監修)、古沢保(文)、坂本ロクタク(絵)
出版社:学研プラス
「チキンラーメン」と「カップヌードル」の発明者、食文化の革命児。特許の独占期間を短縮、インスタントラーメンを世界に普及させ賞賛される。生涯を貫いた「世のために今までにないものを作る」という精神は、児童に大きな希望と勇気を与えるに違いない。