スポーツ
ランニング
2024/1/1 19:00

【2024新年版】シンプルにランニング初心者にオススメな「ランシュー」5選!/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! ランニングシューズ戦線異状なし

2023-2024冬の陣 番外編

 

「年末年始の休暇を機に、ランニングをはじめよう!」という気分は、テレビの向こうで箱根を駆ける、学生さんの神々しいまでの走りに触発されるから。ノースリーブのランシャツ&生足剝き出しのランパン。あれだけの力走だから、寒さも感じないのね〜♪

 

この時期、駅伝やマラソン大会がたくさん開催される理由は、気温。肌寒い13℃くらいだと、過度な体温上昇が抑えられ、好タイムが出るからだ。しかし、狙う記録がタイムではなく、あくまで体重の減量や維持である我々は、寒さが和らぐ、お昼ごろの冬の陽だまりのなかを走りたい。

 

という時に気になるのは、足元のシューズ。せっかくのやる気を冷やさないためにも、長く使える高性能、しかも走る自分がカッコよく見える一足が欲しい。そこでGetNavi webのランニングシューズ連載の特別編、年始に履きたい5選を紹介する。

 

【その1】“元祖”厚底、ホカの元味「クリフトン 9」

ホカ

クリフトン 9

2万900円(税込)

フランスの山々で生まれたHOKA(ホカ)。山を駆け下る際のクッション性のニーズから厚底を打ち出し、今や世界のランニングシューズの厚底トレンドを生んだブランドである。そのホカのシューズのラインナップのど真ん中に位置する、いわば元味が「クリフトン」なのだ。

 

9代目となる「クリフトン 9」は、ご覧の厚底ながら、重量はたったの248g(片足27㎝)。履いて立つだけで、見た目通りのクッション性で “これで走れるの?” と思えるほどふんわりと足を包み込んでくれる。“運動不足解消なのでウォーキングから”という方にもピッタリ、転がるように足が前に出る。

 

その理由は、ホカ独自のロッカー構造「メタロッカージオメトリー」にある。踵から爪先にかけての揺りかご状にラウンドさせたロッカー形状により、重心の移動をアシスト、転がるように足が前に出てくるというワケ。

↑路面をグリップしつつ擦り減りにくい靴裏のラバー(黄色)は高重量になりがち。効率よく配することで、ミッドソール(白色)の軟らかさを損なうことなく、軽量化にも寄与

 

1㎞を6分で走るペースで走ると(ランナーは「キロ6分」と呼びます)、衝撃の強さに応じて厚底のEVAフォーム材の反発性が高まり、バネが効いてくる。シューズは変わらないのに、走るペースで勝手にギアチェンジする感覚。クリフトン 9、まるでオートマ車なのである。

 

ちなみにガチランのペース(キロ5分以速)に速度アップしても、先ほどのギアチェンジ感は(残念ながら設計的に)得られない。しかし、ガシガシ下る坂道では、幅広の靴底とクッション性の高いミッドソールのパフォーマンスが抜群に効く。さすがのトレラン起源なのだ。

 

クリフトン 9で走る最適な速度帯は、初心者にぴったりの歩く~キロ6分代。もちろん初42.195㎞のフルマラソン、雪辱を晴らすフル4時間切りのレベルでも、クリフトン 9はしっかり対応してくれる。長~く履ける一足なのである。

 

【その2】断トツのコスパの日本ブランド、ミズノ「ウエーブライダー27」

ミズノ

ウエーブライダー27

1万4850円(税込)

日本のモノ作りを体現するブランド、ミズノ。そのミズノが、アップデートの度に絶対の自信を持って市場に投入するランニングシューズが「ウエーブライダー」である。最大の特徴は、シューズの中足部に内蔵されたミズノウエーブと呼ばれるプレートだ。

 

ミズノウエーブにより、着地から蹴り出しまでのねじれを最小限に抑え、走りを安定化。シューズ1足あれば始められるランニングだからこそ、その1足にすべてを預けられるウエーブライダーに、絶対の信頼を寄せ続ける数多くのランナーがいるのも頷ける。

 

27回目のアップデートとなる「ウエーブライダー27」は、ミズノが履き心地にこだわり抜いたモデルだ。実際に履いてみると、かかとから足首回りのホールド感は、前作26と比べても各段に向上している。“機能ではなく、履き心地をアップデート”したモデルなのだ。

↑中足部の肉抜きしたミッドソール(白色)の穴の奥に見えるのが、安定性に寄与するミズノウエーブ(黄色と青色のグラデ)である

 

海外ブランドが物価高と為替の影響で、価格を上げざるを得ない状況下にも関わらず、ウエーブライダー27は前作から据え置きの1万4850円(税込)! このスペックのモデルとしては、まさに破格のコスパ。エントリー層、乗り換え層に対して、“ライダーここに在り!”と狼煙を上げた戦略モデルでもある。

 

安定性を売りにするミズノウエーブを内蔵したライダーは、初心者が最初に選ぶ一足にもちろん相応しい。北米やヨーロッパでも日本のライダーが受け入れられている理由のひとつが、スポーティな普段履きとして、ウォーキングから近距離のジョギングでも使える点

 

ガチなスポーツも得意なミズノだけに、初フルマラソンも、もちろん申し分なし。ランニングのフォームにまだ自信がなかったり、ケガからの復帰時など、走りをサポートするプレートがあると心強いと感じた方は、一度ショップで足を入れてみることをすすめたい。

 

【その3】“シューズ通”が選ぶブルックスの大型新人「ゴーストマックス」

ブルックス

ゴーストマックス

1万9800円(税込)

日本のランニングマーケットの七不思議のひとつが、BROOKS(ブルックス)の知名度が今ひとつということ。100年以上の歴史を持ち、北米のランニングショップで圧倒的な人気とシェアを誇るアメリカの巨人だけに、ブルックスを履いているだけで“おっ、シューズ通!”のブランドなのである。

 

ガタイがデカいUSの方々が履いても、しっかり走りをサポートするクッショニングモデルと言えば「ゴースト」。今回ご紹介したいのは、不動の定番モデルであるゴーストを厚底化した「ゴーストマックス」である。2023年10月から展開が始まった、まさに大型新人モデルだ。

 

ブルックスのお家芸の素材といえば、ミッドソールのEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)。ブルックスは1975年に、業界に先立ちEVAをランニングシューズに採用。その後、名だたるスポーツメーカーで、EVAを使用しないブランドはないほどの定番素材となった。

↑靴裏のブラウンのラバーの奥に見えるベージュの部材が、最新EVAの「DNA LOFT v2」である

 

EVAの改良に余念のないブルックスは、最新のEVA素材をゴーストマックスに使用している。衝撃吸収性が高く、着地衝撃に応じて反発性が正比例して上がる「DNA  LOFT v2」である。DNA  LOFT v2をマックスに使うことで、ウォーキングから普段のジョギング、初フルマラソン完走まで、幅広く対応してくれるシューズに仕上がっている。

 

誤解を恐れず書けば、ゴーストマックスの走り心地は、ペースが遅くても早くても変化しない。スピードが上がるとバネ感が増すタイプのシューズもあるが、ゴーストマックスは安定安心なタイプのシューズと言える。

 

ランニングシューズとしての味付けがマイルドなので、「本格的なランニングシューズを選ぶのは、実は初めて……」という方にも、ゴーストマックスはピッタリな一足だ。DNA  LOFT v2は耐久性にも富んでおり、“ヘタリにくい”という点も見逃せない

 

【その4】伝統と革新が共生する新機軸、アシックス「ゲル‐カヤノ 30」

アシックス

ゲル‐カヤノ 30

1万9800円(税込)

ガチで走るランナーからの信頼も絶大なアシックス。そのアシックスのシューズのなかでも、“THE アシックス”な一足と言えば「ゲル-カヤノ」である。運動不足のためのウォーキング&ジョギングに始まり、脂肪燃焼のためのラン、42.195㎞の彼方を目指すフルマラソンまで幅広く対応する、アシックスが誇る汎用機である。

 

そのゲル-カヤノが誕生から30回目のアップデートを迎え、フルモデルチェンジとなった。刮目すべきは30回目の節目に、惜しげもなく新技術を搭載した点だ。昨今のランニングシューズの開発競争の激化に、まさに「ゲル-カヤノ 30」はアシックスのプライドをかけて一石を投じた一足なのだ。

 

注目は、衝撃吸収のゲルは新素材「ピュアゲル」へ進化。ピュアゲルはわらび餅ほどの軟らかさになり、かかと部に内蔵された。さらに筆者を驚かせたのが、走行を安定させる新システムをゲル-カヤノ 30に搭載したこと。「4Dガイダンスシステム」と呼ばれる、全く新しい構造である。

↑中足部に配されたグレーのレモン形のパッドが、4Dガイダンスシステムのキモとなる部材だ

 

4Dガイダンスシステムの狙いは、長距離走行時のフォーム変化の解析データを基に、シューズの設計と素材の配置を見直すことで、安定性と快適性を持たせた点にある。その肝はシューズの中足部に配置した、軟らかく反発性に優れた大きな部材だ。

 

従来の“硬い部材で補強する”常識を、軟らかな部材の採用で覆した、“柔よく剛を制する”画期的な発想を、シューズ全体の構造で体現したのが4Dガイダンスシステムなのだ。正直、最初はブッ飛びの変貌ぶりに面食らったが、実際に足を入れて走ってみると、全く異なるアプローチの4Dガイダンスシステムなのに、ゲル-カヤノらしい安定感なのだ。

 

ゲル-カヤノ 30のおすすめの履き方は、先入観を持たずに履いて走ってみること(笑)。その上で、またこの記事を読んでいただければ、なるほど納得いただけるだろう。伝統と革新が共生する、ランニングシューズの未来形を感じてもらえるだろう。

 

【その5】オンの優しきマッチョ、「クラウドエクリプス」

オン

クラウドエクリプス

2万1780円(税込)

“雲の上の走り”が得られるシューズと評されるOn(オン)。そのオンが2023年3月に発表した新システムが「クラウドテックフェーズ」である。雲の上の走りを極めるべく開発されたクラウドテックフェーズは、軽量にして衝撃吸収に優れた独自素材「ヘリオン」を使い、バイオメカニクス的に最適解な走りを得られるようコンピュータ解析によって設計されたミッドソールである。

 

適所に空間を配したミッドソールは、スピードを減ずることなく、着地衝撃を吸収する。このクラウドテックフェーズをメガ盛りにした新たなラインが、今回の「クラウドエクリプス」。2023年11月に発売が開始されたばかり。

 

履いて立つと、わずかに沈み込む。まさに、雲の上(乗ったことないけど…)。歩き出せば、一歩一歩が新雪を踏んでいるかのよう。つま先からかかとに掛けて、ゆりかごのようにラウンドさせたロッカー形状のため、前へ前へと転がるように足が運ばれてゆく

↑クラウドエクリプスには、二層のクラウドテックフェーズが搭載されている(肉厚の白い部材)。中足部のクリーム色の部材が「スピードボード」だ

 

運動不足解消のためのウォーキングにクラウドエクリプスを履いたら、“もう少し遠くまで歩こっかなぁ〜”になざるを得ない快適さ。誰もが散歩の達人になってしまうこと請け合いなのである。

 

走り出すと、勝手にスピードが上がる。ロッカーが効いており、ドウドウと減速させねばならぬほどだ。ソールの中足部に配された「スピードボード」の反発力も、カラダを勝手に前に進ませる。クラウドエクリプス、最初こそ優しいが、なかなかのマッチョである。

 

速度コントロールのコツは、走る姿勢。あごを引き、わずかに前傾姿勢になれば、スピードが出る。減速したければ、周囲の景色を眺めるべくあごを僅かに上げよう。下肢の筋力がランニングに不慣れなうちは、あごの力を抜き、景色を楽しみながら走るのが、正しいクラウドエクリプスの楽しみ方と言える。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】