ロープウェイというと、気持ちのいい気候の春や楽しい夏休み、そして秋の紅葉シーズンなどに乗るイメージがあり、冬はスキー場へアクセスする乗り物ぐらいにしか思われていません。しかし、冬だからこそ楽しめるロープウェイの魅力があるのです! その醍醐味をロープウェイ愛好家として全国のロープウェイに詳しい松本晋一さんに解説してもらいます。
ロマンチックな夜景が堪能できるナイター営業
冬ロープウェイの醍醐味といえば、なんといっても山頂から夜景が楽しめるナイター営業。もちろん、北海道の「函館山ロープウェイ」や長崎県の「長崎ロープウェイ」など1年中夜間まで営業しているところもありますが、三重県の「御在所ロープウエイ」や茨城県の「筑波山ロープウェイ」、徳島県の「眉山ロープウェイ」など、冬場に期間限定で夜間営業を行っているところが多いのです。
なぜ、夏ではなく夜の寒さの厳しい冬に行うのでしょうか?
それは、暖かい季節よりも空気が澄んでいて、キラキラと光る街の明かりをはっきりと見ることができるからです。暗い山道を歩いていくのは現実的ではないので、この景色はロープウェイがあればこその楽しみといえます。
また、ナイター営業では、普段体験できない暗闇を進む感覚が味わえるのも魅力のひとつ。恋人や家族と一緒に素敵な冬の夜を過ごすことができるでしょう。12月25日の聖夜を山頂で夜景を眺めながら過ごす、というのもロマンチックですよね。
冬の夜でロープウェイといえば山形県の「蔵王ロープウェイ」の樹氷ライトアップも有名ですね。こちらは来年の3月5日まで、17時から21時まで営業しています(不定期開催のため、詳細なスケジュールは公式ウェブサイトをご確認ください)。ロープウェイの車窓から見る夜の雪景色、そして山頂駅に到着すれば、これまた幻想的な樹氷の世界を満喫できます。
お月見や初日の出のための限定運行も!
今年はすでに運行が終了してしまっていますが、山梨県の「身延山ロープウェイ」は毎年9月の十五夜と10月の十三夜にお月見運転を行っています。これはその名のとおり山頂から月を鑑賞するための特別ナイター営業です。
また長野県の「竜王マウンテンパークロープウェイ」や群馬県の「谷川岳ロープウェイ」などでは星空鑑賞会を目的にした夜間営業も大人気!
意外と知られていないのが初日の出運転! 元旦に山頂から御来光を拝めるように、夜明け前から運転しているロープウェイが実は多いのです。元旦の早朝運転限定で甘酒や携帯カイロのサービスを行っているところもあります。ロープウェイ近くの温泉宿に前泊するもよし、夜中に初参りを済ませた後、そのままクルマで現地を目指すもよし。夜が明ける前にロープウェイに乗り込み、山頂駅の展望台から気持ちのいい初日の出を見ることができれば最高の気分で新年をスタートできることでしょう。山頂に宿泊施設がないところも多いので、こうした楽しみ方ができるのもロープウェイがあってこそだといえます。
初日の出運転をおこなっている主な場所は、札幌市の「もいわ山ロープウェイ」、千葉県の「鋸山ロープウェー」、山梨県の「身延山ロープウェイ」、兵庫県の「須磨浦ロープウェイ」、「摩耶ロープウェー」、滋賀県の「八幡山ロープウェー」、広島県の「千光寺山ロープウェイ」をはじめ、意外とたくさんあります。場所によっては日の出前の時間帯は非常に混雑するので、時間をずらして昼間のロープウェイを楽しむのもいいでしょう。
いずれにせよ、出かける前に各ロープウェイの公式ウェブサイトで天候や運行状況などをチェックすれば、行ってがっかりすることも少ないはず。どこも山頂は気温が低いので温かい格好を忘れず、感動がいっぱいの冬のロープウェイをぜひ堪能してみてください。
【教えてくれた人】
松本晋一さん
子どものころに持っていたロープウェイのおもちゃを大人になってから再びネットオークションで手に入れたことがきっかけで、その魅力にはまり、昭和の面影が残っているロープウェイを求めて平成17年からロープウェイ巡りを開始。同時にロープウェイ関連のコレクションも始まる。平成26年CBCテレビ「花咲かタイムズ」にロープウェイ愛好家として出演。本業はタップダンサーで、父親はコメディアンの故早野凡平。著書に『ロープウェイ探訪』(グラフィック社)。
ホームページ:「歓喜の索道」http://sakudo.web.fc2.com/
ブログ:「頭の中はロープウェイ」http://plaza.rakuten.co.jp/sakudo/