ジワジワと人気の高まっている羊食ですが、先日またひとつブームの追い風となるできごとがありました。ラム肉の魅力をさまざまな形で発信する大使「Lambassador(ラムバサダー)」に、日本屈指の有名料理人・山下春幸シェフをはじめ、新たに7名の食のプロが加わったのです。今回は就任パーティの様子とともに、ラム肉ブームの現状と背景を探っていきたいと思います。
ラーメンやカレーの賢人がラム大使に就任!
山下シェフは、2010年の「シンガポールワールドグルメサミット」に日本代表マスターシェフとして参加し、その年の世界ベストシェフに選ばれた達人。代名詞といえる新和食のレストランをはじめとして数店舗を展開しています。今回のパーティは、その一角である東京ミッドタウンの「HAL YAMASHITA東京」で行われました。
山下さん以外の6名も各界の有名人。ラム肉のラーメンで業界を驚かせたラーメンクリエイターの庄野智治さん、ミシュランガイド2013で1つ星を獲得したモダンチャイニーズの旗手・東浩司さん、「東京スパイス番長」の主宰としてインド料理に精通するシャンカール・ノグチさんなど、多彩な顔触れが並びます。
残るひとりは有名なグルメブロガーであり、レストランメニューやイベントのプロデュースも行うカレーマンさん。庄野さんとカレーマンさんは都合でパーティに参加できなかったのですが、庄野さんの代役としてお店のスタッフがイベントに参加し、料理をふるまってくれました。ということで、この日提供されたラム肉メニューの一部を紹介しましょう。
今回の7名の加入は、羊食のすそ野が広がったことを表しているといえます。その好例がブロガーや、ラーメンにカレーといった国民的フードの料理人。日本でラム肉というと、欧米の高級店でふるまわれる特別な食材という印象が強いかもしれませんが、もっと気軽に味わえるという概念が今後より広まっていくと考えられるでしょう。
リアルなデータからも羊食の活況は明らかだった!
そんなラム肉文化ですが、羊年の2015年にラムバサダーのプロジェクトが産声を上げてからもうすぐ丸2年が経過。筆者の感覚では、以前より羊食は盛り上がっているように思えますが、実際はどうなのでしょうか? そこで、羊肉好きのための理想実現機関「羊齧(かじり)協会」の菊池一弘ラムバサダーに、現状をうかがいました。
「わが協会では、グルメサイト『Retty』さんなどの協力で、羊食がどれだけ盛り上がっているかを計る『羊指数』を算出しており、これを見ても羊食はかつてないほど好調です! たとえば、2016年10月は2015年7月からの16か月間で過去最高の数値に。要因は羊肉輸入量が基準となる2015年6月以降で最大値を記録したこと。もうひとつは、Rettyさんのサイトで『マトン(大人の羊肉。ラムは仔羊)』というキーワードの検索数値が伸びたことですね」(菊池さん)
聞くところによると、羊齧協会が毎年開催している「大・羊フェスタ」も、去年は約1万5000人(下北沢で土日2日間の開催)だったのが、今年は2万人強(中野で土日2日間)と約1.4倍増加。菊池さん自身も強い手ごたえを感じており、来年は運営としてもより力を入れていきたいと意気込んでいます。
最後に、筆者の独断と偏見でこの盛り上がりを考察してみました。啓蒙活動もさることながら、パクチーやクラフトビールのように、これまでニッチだった海外のフードや食文化が受け入れやすくなってきたというのも、要因のひとつに挙げられるでしょう。さらにその背景には、グローバル化や消費者の味覚の幅が広がったことなどがあると思います。過去の統計では日本人は年間ひとりあたり、ラム肉を200gしか食べないと言われてきましたが、その数値にも変化が起きているかもしれません。ラム肉のさらなる動向とともに、これからも羊食の調査は怠らないようにしていきたいと思います。