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2024/2/29 12:00

90年代から「音声入力」を提案していた。「楽ナビ」25周年をデジタルの歴史に重ねると面白いことだらけだった

提供:パイオニア株式会社

今から26年前の1998年にローンチし、2023年で25周年目を迎えたカロッツェリア「楽ナビ」。実はモノ・コト情報誌「GetNavi」も2024年で創刊25周年を迎えました。ほぼ同じ時代をくぐり抜け、共通しているのは互いにデジタルが進化する課程の中で育ってきていること。そこで楽ナビの誕生から現在までを5モデルに絞り、デジタル関連の時代背景と共に振り返ってみることにしました。

 

 

1990年代はデジタルがクルマにも広く浸透し始めた時代

楽ナビが登場した1990年代は、デジタルの波が車載器にも押し寄せた時代。そうした中でGPS衛星からの電波を受信し測位する、いわゆる“GPSカーナビ”が誕生します。それが1990年にパイオニアが市販モデル初のGPSカーナビとして発売した、カロッツェリア「AVIC-1」でした。

 

それまでのカーナビは、使う前に必ず現在地を地図上に設定する必要がありましたが、このGPSカーナビの登場により、現在地はいつでも正しい位置に表示できるように進化。ここからGPSカーナビの歴史はスタートしたのです。ただ、AVIC-1は目的地検索ができないため、“カーナビ”というよりも正確な現在地を地図上に表示する“電子マップ”としての性格が強かったとも言えるでしょう。

 

その後、1990年後半から91年にかけて、ルートガイドを搭載したカーナビが自動車メーカーから登場します。これをきっかけとして、ルートガイドを伴った本当の意味でのカーナビの機能競争が始まることとなったのです。

 

【1998年】タクシーに乗るように目的地を音声で告げるだけ。楽ナビ「AVIC-500」

ただ、ルート案内を備えてカーナビ機能は向上したものの、その機能をうまく使いこなせない人が少なからず存在していました。カーナビでルート案内をするには目的地設定は欠かせませんが、当時はメニューを開いてカテゴリーで絞り込んでいく必要があり、この操作が“壁”となってカーナビを使いこなせない人が一定数いたのです。

 

「そんな状況を放っておいてたら真のカーナビ普及にはつながらない」。そう考えたパイオニアの開発チームは、使いやすさを徹底追求したカーナビの開発をスタートさせます。試行錯誤を繰り返した結果、目的地の検索に音声認識機能を組み合わせることが最良と判断。ここに楽ナビの初代「AVIC-500」が誕生することとなったのです。

 

AVIC-500のポイントは「タクシーに乗る時のように行き先を音声で伝えるカーナビ」にありました。それまで難しいと感じていた目的地設定は、付属するリモコンの発話ボタン「お出かけボタン」を押して行き先を告げるだけで済むようになったのです。スマホが普及した今でこそ、音声で目的地を探すのは当たり前となっていますが、ガラケーしかないこの時代にこれを実現したのはまさに画期的なことだったと言えるでしょう。

 

その認識精度や検索能力は現在のスマホとは比べものにならないほど低かったのは確かです。しかし、「カーナビを誰でも使えるようにする」との楽ナビのコンセプトはこの時に確立し、それは多くの人に受け入れられて大ヒットへとつながります。以来、楽ナビはそのコンセプトを継承しながら、時代に合わせた最適なモデルへと発展しつつも、その精神は今もなお連綿と受け継がれているというわけです。

 

GetNaviの誌面と振り返る1998年デジタルトピックス

1998年をGetNaviの誌面からも振り返ってみます。この年は、Google検索がスタート。大量の情報を「検索して探す」が一般的になっていった時期でもありますが、楽ナビは2010年代以降につながる「ボイスコントロール」を先立って提案していました。

 

また、Apple iMacの「初代」モデルが登場。普通の人でも使える「わかりやすさ」にこだわった点で楽ナビとの共通点を見出すことができます。また、PDAの拡大も見逃せないところ。PDAには地図ビューアー機能を搭載していることも多く、外部のGPSレシーバーを追加することでナビゲーション的な役割を果たしていました。懐かしいですね。

 

■iMac。Appleのディスプレイ一体型デスクトップ「iMac」が登場したのが1998年。Appleに復帰したスティーブ・ジョブズが最初に発表した製品で、これまでのパソコンのイメージを一新するポップなデザインにより大ヒット。Apple復活を印象づけました。

2018年VOL.7

 

■Palm III。イケショップなど秋葉原の店舗で「Palm(パーム) III」と日本語化キット「J-OS」が販売開始。GUI、ペン操作に対応した「PDA(パーソナルデジタルアシスタント)」が注目を集めました。

2018年VOL.4

 

■Google検索。今では当たり前の「Google検索」もこの年にスタート。検索エンジンとしては後発でしたが、特許取得の特殊アルゴリズムを使用した独自のロボット型検索エンジンにより一気に普及しました。

 

【2005年】楽ナビ「AVIC-HRZ09」はHDDを初搭載

カーナビは今も昔も、いかに多くの地図データを活用できるかがポイントです。楽ナビもデビュー当初こそデータをCD-ROMに収録していましたが、より詳細なデータを収録するために容量が7倍以上もあるDVD-ROMを採用するように進化。これによって、全国主要都市の市街地データを収録可能になり、ピンポイントでの目的地設定が可能になりました。

 

一方で、時代はカーナビにエンタテイメント性を求めるのが常識となっていました。そこで楽ナビは2005年、「AVIC-HRZ09」でデータ収録メディアをHDD(ハードディスク)とした新モデルを登場させます。

 

AVIC-HRZ09は、HDDに地図データだけでなく、再生したCDの音楽データまでも収録できるミュージックサーバーを実現。それ以外にも、当時流行っていたMD(ミニディスク)ドライブも搭載する一方、人気を集め始めていたiPodへの対応も果たすマルチメディア対応としました。

 

映像面でもディスクドライブをCDとDVDが両方楽しめるコンパチブル化を果たし、2003年からスタートした地デジにもオプションで対応。これにより幅広い映像メディアも楽しめるように進化させました。これだけ多彩なエンタテイメント機能を2DINというサイズに凝縮したわけで、このモデルで楽ナビは音楽や映像までも一括で楽しめるカーナビへと進化していったのです。

 

GetNaviの誌面と振り返る2005年デジタルトピックス

Googleマップは2005年生まれでしたが、楽ナビはすでにAVIC-HRZ09で美しさと実用性にこだわった「ターゲットマップ」を採用するなど、マップ表示からカーナビの性能を高めてました。人気を集めたiPod nanoが登場する頃には、楽ナビもiPod接続に対応。最新かつトレンドのAV機器との連携を実現していたことも見逃せません。

 

■Googleマップ。単なる地図に留まらず、衛星写真、航空写真、ストリートマップ、ストリートビュー、ナビゲーション機能を搭載。ウェブ版、Android版だけでなく、iOS版もリリースされ、世界で最も多くのユーザーに利用される地図アプリとなっています。

 

■iPod nano。iPodの1シリーズとして登場した「iPod nano」。iPod miniの後継モデルとして位置づけられ、画面を搭載するiPodの最小モデルとして人気を集めました。

2005年11月号

 

■YouTube。動画共有サイトの先駆けとして創業され、同年に正式サービスを開始。著作権などさまざまな問題をはらみつつも、巨大メディアプラットフォームとして成長を遂げました。

2007年10月号

 

 

【2008年】地図ストレージにフラッシュメモリーを採用した「楽ナビLite」の初号機「AVIC-MRZ088」!

HDDを採用したカーナビゲーションが主流になる一方で、価格を抑えられるフラッシュメモリーを採用したPND(ポータブルナビゲーション)が伸長していきます。そういった市場の変化を捉えて2008年に導入されたのがこの「楽ナビLite」になります。楽ナビLiteは登場時こそ低価格の1モデルだけでしたが、メモリーナビが主流となる市場変化に合わせてモデルを拡充させていき、多くのヒットモデルを生み出すことになります。

 

初号機になるのがこの「AVIC-MRZ088」です。低価格を売りにしながらもDVDやCDはもちろん、iPodやUSB、SDなどのメモリーオーディオとの接続を可能にするなど、日頃のドライブを楽しく快適にするモデルとなっていました。さらにカーナビとしての機能も進化させます。その立役者がパイオニアが2006年からスタートさせたプローブ型渋滞情報「スマートループ」です。

 

これはパイオニア製カーナビのユーザーが走行実績を収集して交通情報に反映させたもの。これにより、VICSの10倍近い(当時)交通情報をカーナビに反映できるようになり、より高精度に渋滞を避けたルートが案内できるようになりました。オプションの通信ユニットを必要としたものの、その採用でルート案内能力は劇的な進化を遂げたのです。

 

また、楽ナビ用PCソフト「ナビスタジオ」に対応することで、それまで何かと複雑な手続きを必要だった収録データのアップデートで大きな進化が図られました。AVIC-MRZ088で使うSDカードに、全国の天気予報を反映させるウェザーライブをはじめ、PCから音楽ファイルを転送するマイミュージックチャージなどを保存可能としたのです。また、スマートループへの走行実績のアップロードや渋滞情報をダウンロードするほか、地図データの更新もこのソフトを経由して可能になったことも見逃せないポイントとなりました。

 

GetNaviの誌面と振り返る2008年デジタルトピックス

iPhoneやAndroidのスマートフォンの登場で、人々のライフスタイルが変わりました。それらのスマートフォンを楽ナビに接続して、動画や音楽のストリーミング再生など車内空間が楽しめるようになるのは、また後の時代。

 

■iPhone。日本初上陸のiPhoneである「iPhone 3G」がソフトバンクから発売。ソフトバックショップや家電量販店に長蛇の列ができました。PCを使ってインターネットするよりも、スマホを使ってインターネットする時代が始まりました。

2008年9月号

 

■Android。Androidスマートフォン1号機「T-MobileG1」が米国T-Mobileより発売。この端末はキーボードを搭載しており、当初は実験的なコンセプトの製品も多かったです。現在でもAndroidは、さまざまな新技術がいち早く搭載されています。日本初のAndroidスマートフォン「HT-03A」は2009年に発売。

2009年8月号

 

■Google Chrome。Windows、macOS、Android、iOS、Linux用が提供されているウェブブラウザー。Googleのウェブサービスとの親和性の高さ、豊富な拡張機能などの利便性により、ウェブブラウザーのトップシェアを獲得しました。

 

【2014年】使い勝手を進化させた楽ナビ「AVIC-RL09」!

車内エンタテイメントの進化に伴い、時代はインフォテイメント系のサイズアップが重要なテーマとなりました。それを反映して楽ナビは2014年に登場した「AVIC-RL09」で、画面サイズを従来の7型から8型へと大型化。これによって地図の見やすさと、迫力映像の再生を実現させました。

 

また、見逃せないのが「スマートコマンダー」の採用です。もちろん、画面上のタッチパネルは装備していましたが、画面上に手を伸ばす必要があり、操作していると意外に疲れるものです。このコマンダーを手元に置くことで、よく使う7つの機能をショートカット的に使えるようになり、その使い勝手は飛躍的に高まりました。

 

さらに使い勝手を向上させたのは通信を介した音声認識への対応です。たとえば「近くのコンビニ」「軽井沢の観光スポット」などと音声で入力すると、AVIC-RL09はその候補を画面上にリストアップ。ここから行きたい場所を選べばすぐに目的地設定が可能となりました。コマンド入力の起動はスマートコマンダーでも行え、その使い勝手はも良好。まさに初代からの楽ナビならではの思想を感じさせてくれた採用と言えるでしょう。

 

AVIC-RL09はオーディオ機能の強化も見逃せません。きめ細かいサウンド調整が可能なデジタルプロセッサーの搭載し、タイムアライメントやイコライザーといったサウンド調整機能が楽ナビでも行えるようになったのです。自動調整ではないのが残念でしたが、それでも最適な音場設定により音楽をベストな環境で楽しめるのは嬉しい装備となりました。

 

GetNaviの誌面と振り返る2014年デジタルトピックス

スマホを使ってできた操作を手首からできるApple Watchの新しい操作感が新鮮でした。AVIC-RL09はカーナビでの新しい操作性とインターフェイスを搭載。楽ナビブランドの長い歴史が経過しようとした、この時代でも使い勝手にこだわり続けていました。

 

■PlayStation 4。北米で2013年11月15日、日本で2014年2月22日に発売。ネットワークを介したゲーム体験ができるのはPS3から存在していましたが、PS4になりそれが大衆化につながりました。普及価格帯で最新のゲーム体験ができるのがPlayStationだとすれば、普及価格帯で最新のナビ体験ができるのは楽ナビといったところに共通点を見出せるでしょうか。

2015年4月号

 

■Apple Watch。iPhone専用のスマートウォッチ。多くのiPhone用アプリがApple Watchに対応して利便性が高く、アルミニウム、ステンレス、チタニウムを使用したボディも上質。日本ではいち早くFeliCaに対応したことから普及に拍車がかかりました。

2015年5月号

 

■Uber Eats。自動車配車サービスを手がけるUberが、米国で2014年にスタート。日本上陸は2016年。当初は東京で開始したが、2021年9月に47都道府県への進出が完了しました。ロゴが描かれた大型リュックサックを日常的に見かけるようになっています。

 

【2023年】オンライン化への本格対応した最新楽ナビ「AVIC-RQ920-DC」

楽ナビの最新モデルは2023年1月に発表されました。そのラインナップは7型/8型/9型と3タイプを用意し、9型には最近のトレンドとなっているフローティング型もラインナップ。その数は15モデルにも及び、「AVIC-RQ920-DC」は通信ユニットまでも標準装備としたその最上位モデルとなります。

 

新型楽ナビのポイントは初代の楽ナビから引き継いだ「高性能×使いやすさ」にあります。時代に合った誰もが使いこなせる“使いやすさ”と、ドライブ時間の“楽しさ”を追求してきた楽ナビならではのコンセプトを具現化したものとなっているのです。

 

中でももっとも大きなトピックと言えるのが、オンライン化への本格対応です。これまでも楽ナビは音声認識による目的地検索や、オンデマンドVICS、駐車場の満空情報などでオンライン化を実現していましたが、最新モデルではサイバーナビに続いて車載用Wi-Fiが楽ナビとして初対応。さらにネットワークスティックと呼ばれる通信ユニットを同梱したモデルを用意することによって、車載用Wi-Fiをはじめとした様々なオンライン機能を手軽に活用できるようになりました。そして、よく使う機能にスムーズにアクセスできる「Doメニュー」を採用しています。

 

目的地検索は、インターネットでの検索と同じように思いついたキーワードを入力するだけ。これだけで最新スポットまでも目的地検索できる「お出かけ検索(オンライン)」を実現したのです。このメニューでは他にも「ダイレクト周辺検索」、「ショートカットキー」などを備え、まさに時代を反映した楽ナビならではの使いやすさを実現したのです。

 

オンライン化は、オンデマンドVICSやスマートループによる渋滞情報を加味したルートを示すことで抜きんでた高品質なルート案内をもたらしました。加えて、ルート案内中は「信号機カウント交差点案内」で分岐する交差点を特定し、見やすさを高めた交差点案内でその状況を詳細にガイドします。

 

大画面化によって車内での存在感も高く、しかもオンラインによって使い勝手を大幅にアップ。まさに楽ナビ史上、最強の楽ナビがここに誕生したのです。

 

GetNaviの誌面と振り返る2023年デジタルトピックス

生成AIのおかげで検索や調べるといった行為に変化が出て、Copilotでビジネスに変化が出そうと期待がかかるなか、車内Wi-Fi搭載の楽ナビAVIC-RQ920-DCによって、ただ運転するだけの車内空間から、リモートワークや動画鑑賞など車内で過ごすのも快適になりました。

 

■生成AI。OpenAIの「ChatGPT」の有料サービスが2023年2月にスタート。「Windows 11」やGoogleの検索エンジンにすでに生成AIが組み込まれており、多くの人が意識しないうちに利用を始めています。

2023年9・10月合併特大号

 

■Copilot。Microsoftが提供するAIアシスタント。OS、ブラウザーから利用するだけでなく、「Microsoft365」のアプリからもCopilotにアクセス可能。導線の多さから、AIアシスタントのなかで大きなアドバンテージを獲得していています。

 

■X。イーロン・マスク氏は旧Twitter社買収後、2023年7月23日にロゴを青い鳥からXに変更。賛否入り交じる氏の施策を象徴する出来事として、ネット上での大きな話題となりました。

 

 

デジタルトピックス監修/ジャイアン鈴木

 

 

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