最近、韓国ではCERAGEM(セラゼム)という会社が開発したマッサージベッドが話題になっています。冬の寒さが厳しい同国では温熱機能がある機器の人気が高いのですが、この製品は従来のマッサージチェアとどう違うのでしょうか? 現地からレポートします。
韓国ならではのマッサージ機器
セラゼムは1998年に設立された韓国の中堅企業で、医療機器や温熱治療器などの開発や製造、販売を行っています。マッサージベッドのヒットにより、ここ数年で一躍有名になりました。
韓国では漢方医学がメジャーで、針灸のほか、整形外科や内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、婦人科、小児科など、一般の病院と変わらない診療科をそろえています。そういった漢方医学で重要視されているのが身体を温めること。冬にはマイナス15度ほどまで気温が下がるという厳しい寒さのため、岩盤浴を含むさまざまな設備を揃えた温浴施設や床暖房など、身体を温めるための文化が広がりました。
石ベッドと土ベッドも有名で、石ベッドにはマットレス代わりに石を、土ベッドには黄土を焼いた陶器を敷きます。これらのベッドを電気で温めると、遠赤外線効果で身体が温まるというものです。
このように昔から温熱ベッド文化があった韓国ですが、温熱機能にマッサージ機能を加えて生まれたのが、セラゼムのマッサージベッドです。漢方医院での治療時に使用されていた温熱ベッドに、マッサージ機能を追加したことになります。
価格は540万ウォン(約 59万4000円※)とかなり高めですが、他にはない製品のため人気を得ています。
※1ウォン=約0.11円で換算(2024年2月26日現在)
最新機種の「セラゼムV7」には、セラゼム社のコア技術である脊椎医療器具をベースに、ユーザー固有の脊椎に対応する20のマッサージプログラムを付加。仰向けに寝てスイッチを入れると、ベッドが自動で脊椎をスキャンし、その結果からそれぞれの人に最適な温熱マッサージをしてくれるというものです。神経痛や筋肉痛、血液循環、生理痛などの改善をうたった機能で人気を呼んでいます。
国からは医療機器として品質保証システムの医療機器製造品質管理基準GMP(Good Manufacturing Practice)の認定を受けており、鎮痛などの有効性も認定されているそうです。
韓国では温熱機能があるマッサージチェアも販売されていますが、サイズがかなり大きめ。その点、マッサージベッドはスリムなベッド型で、約半分のサイズにして収納できるため、マッサージチェアに比べてコンパクトです。これも同製品が人気を集めている理由の一つです。
寝た状態だから…
このマッサージベッドでは、寝た状態でマッサージを受けられるので、マッサージチェアよりもリラックスできるうえ、重力の力も加わって、強い指圧力を感じることができます。
マッサージベッドのテレビCMには、ドラマ『イカゲーム』で海外でも有名になった俳優イ・ジョンジェが出演(以下の動画を参照)。セラゼムが運営するマッサージベッドの無料体験ができるカフェには行列ができており、1時間以上待つこともあるそうです。
マッサージベッドを体験した人は「温めながらマッサージされるので眠ってしまうほど気持ちが良い」「寝た状態のためマッサージチェアよりも指圧力が強く効く」など評価する意見が多く見られました。一方で、「指圧力が強いので、強度を1番弱くしても痛い」との声や、整形外科専門医からは「筋肉痛、血液循環の改善は見込めるが、神経痛の改善までには至らないのでは」という意見もありました。
マッサージベッドは韓国国内だけではなく、すでに米国、中国、欧州などを中心に輸出しており、約70か国で同ベッドを体験できる店舗を構えています。2024年1月には米ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー展示会「CES2024」にも出展し、数十社のグローバル企業と商談するなど注目を集めました。日本では一部の整体院などで、直輸入したとみられる古いタイプを置いているケースもあるようです。
日本でも従来から健康器具の人気は高く、長寿社会の定着でニーズがより高まることが予想されます。Kポップや韓国ドラマに続き、マッサージベットなど韓国のヘルスケアグッズが日本で注目される日が来るかもしれません。