自身の声や顔で最大限まで遊びながら、TikTokのエフェクトを駆使してエンタメに昇華し、フォロワー数440万人を誇るSATOYUさん。2023年12月14日に開催された「TikTok Creator Awards Japan 2023」で「Rising Creators of the Year」に選出されたほか、海外にもその名が轟き世界中にファンを有する。そんなSATOYUさんの、TikTokサクセス・ストーリーとは。
SATOYUさん公式TikTok @satoyu727
【SATOYUさん撮り下ろし写真】
「楽天スーパーセール!」でいきなり再生回数100万回超え
──TikTokを始めてから約4年で、現在はナレーション業や大手企業のPR動画にも出演するなど活躍中です。どんなきかっけでTikTokを始めたんでしょうか。
SATOYU 友達に勧められて、最初は遊び半分でスマホのなかにあった動画を投稿していた程度でした。今はもう消していますが、細々と声真似動画をアップしていたんです。
──手応えはいつ頃から感じましたか?
SATOYU これまで4回バズった実感がありまして、初バズりは「楽天スーパーセール」のCMでおなじみの若本規夫さんの声真似でした。再生数が100Mを越えて、「いいね」も10万超えたので「これはバズったな!」と。
──2020年3月29日の動画ですね。若本規夫さんといえば『ドラゴンボールZ』のセル、『サザエさん」のアナゴさん、『人志松本のすべらない話』のナレーションなどでおなじみですよね。なぜバズったと思いますか?
SATOYU 若本さんの声まねをする人はたくさんいるんですよ。なかでも僕は、若本さんのシャウトが得意で……ちょっと若本さんが声優を務めた『プリズン・ブレイク』のティーバッグ、やっていいですか?
「スコフィーールドッッ!」
これです。
──うわー! 目の前でやっていただいて、すごい贅沢!(笑)
SATOYU 全然やりますよ。おそらく、この声まねがズバ抜けてうまかったからだと思うんです。ずっと練習していたので。2回目が、2020年12月からやり始めた、「ピカチュウ」のエフェクトをつけてドスの効いた声を出すという動画で。3回目が2022年頃に始めたモフモフ衣装のNPCキャラクターです。
バズったNPCが、急に落ち込んだ理由
──NPCとはゲーム用語で、ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのことですよね。主人公が訪れる街などに、それぞれの役割で立っているような。TikTokクリエイターの夏絵ココさんがここに着目し、TikTokライブでファンタジー世界の住民のような猫耳美少女姿で登場し、ギフトが届いたらゲームキャラクターのように無機質に動く「無言配信」というスタイルを確立しました。SATOYUさんも、そうした夏絵さんのキャラクターをヒントにしたのでしょうか。
SATOYU そうですね。「こういう原始人みたいなキャラいそうだよね」と思いつき、ちょうど自宅にあったキャンプ用のもふもふクッションを切って着てみたんです。ヒゲは、最初は妻のアイライナーを借りて描いていました。消費量が多いので、今は100均で買っています。
──すべて身近にあったものだったんですね。そういった人気キャラクターを生み出すまでに、分析したりも?
SATOYU TikTokを見ていただけです。分析とか計算とかできないんですよ。それまでも結構なキャラクターをやってきて、そのなかのいくつかがバーンと当たっただけなんです。でも、NPCがバズった後に数字が落ちていきまして。いいときで1万人を超えていた同時接続人数が、3、4か月をすぎると100人を下回るようになっていったんです。
──なぜでしょう。
SATOYU 視聴者さんが飽きたんでしょうね。ずっと同じことをしていたら、僕が視聴者でも飽きると思います。シビアですよね。それでいろいろやりました。「ストリートファイター」のリュウとか、地雷系女子とか、10~20キャラクターはやったかなあ。この時期は“壁”でしたね。
「普通に働いたほうがいいのかな?」
──TikTokで初めて壁にぶつかったんですね。
SATOYU しかもこの時期、上京を決めたときだったんですよ。それまでは地元・愛知でトラック運転手をやっていて、ちょうど仕事を辞めたばかりで、「ヤバいな」と。
──どのくらいの期間、そういった状況が続きましたか?
SATOYU 3、4か月くらいですね。「自分、人気ないんだな……」と、メンタルにきました。結構考えて落ち込んで、一度ネガティブなことを考え出すと止まらなくて、「普通に働いたほうがいいのかな」とか。
──その時期、奥さまの反応はいかがでしたか?
SATOYU 彼女は冷静で肝が座っているんですよ。「大丈夫大丈夫、私、稼げるし」って。本当にすごいです。支えられましたね。それを経て、スーツ姿で歩く動画「月歩」で4回目のバズりを経験しました。
──「月歩」では、フォロワー数が100万人増えたそうですね。
SATOYU TikTokライブをやると、1日2万人ずつ増えていた時期でした。同時接続は最高5万人で、配信を見に来てくれた人が1000万人に達したこともありました。
──1000万人!? それはすごい。
SATOYU なぜそんなに来ていただけたのかは分かりません(笑)。
Tシャツをスーツに変え、大バズリ!
──「月歩」はどんな発想から生まれたんですか?
SATOYU もともと「歩きダンス」というパフォーマンスを海外TikTokクリエイターがやっていて、「流行ってるしやってみようかな」という感じでラフなTシャツ姿の「月歩」を投稿たんです。そのときの「いいね」は2000くらいで、可もなく不可もなくという数字でした。そんななか、コメント欄に「オシャレをしてやってみたら?」と書いてあって。ちょうどその日、映画の試写会のMCをやる仕事があり、スーツを着ていたんです。以前、友達の結婚式で着るために「洋服の青山」で勧められるままに買ったダブルのスーツで。
──それがお馴染みのスーツだったんですね! それももともと自宅にあったものだったとは。
SATOYU それがおしゃれかどうかはわかりませんでしたが、とりあえずスーツ姿で「月歩」をやってみたんです。すると思ったより再生回数が伸びて。そうしたら今度は妻が「これをTikTokライブのほうでもやってみたら?」とアドバイスしてくれて。僕は「ライブでやる必要あるかなあ?」と懐疑的でしたが、一応やってみたら1発目から同時接続人数が1万人超えたんです。
──周囲の方のさまざまな後押しがあったんですね。
SATOYU 「月歩」はいろんな偶然が重なって生まれました。たまたまそのコメントが目に入り、たまたまスーツを着ていたからやってみて、妻がアドバイスをくれて。普段はスーツなんて絶対着ていないですからね。
──「月歩」は海外受けもいいのではないかと思います。
SATOYU 海外の方が来てくれると、雰囲気ががらっと変わりますね。日本の方たちは「シェア」をあまり押さないイメージですが、海外の人たちはみんな「シェア」をしてくれるのですごく広がっていくし、一気にバズるんです。でも、やっぱり飽きられた経験を経ているので、「次もなにか用意しておかないと」と冷静に考えていました。すると最近は、海外の方たちにNPCキャラが受けはじめて、すごくうれしいんです。この前のTikTokライブは同時接続人数1万7千人で、バズっている実感があります。
──英語コメントでよく「OHIO」と言われているのを見かけます。
SATOYU そうなんですよ! 最初はそのミームがわからず「どういう意味?」状態で。調べてみて意味がわかると、イジられているんだなと。じゃあそれに乗っかろうと思い、「ジョジョの奇妙な冒険」のエンリコ・プッチのスタンド「メイド・イン・ヘブン」を文字って「メイド・イン・オハイオ!」とやったら、コメント欄に「OHIO!」「OHIO FINAL BOSS!」というコメントで溢れ返りました。
──それで代名詞的存在になり。
SATOYU とにかく目立ちたいんです、僕は。だからイジってくれてもいいし、それで「面白いヤツだ」と思われたら本望なんですが、最近では「こいつはOHIOだけど別に悪くないOHIOだよ」というコメントもあり、よくわからないんですが認められるようになりました(笑)。
──2023年にはANAのPR動画にご出演されたり、もうスーツ姿で歩くだけで仕事になる状態ですよね。
SATOYU いつも着ているスーツがダブルスーツで、パイロットさんもダブルスーツなので、そういうところでイメージが重なり起用してくれたのかもしれません。
オンラインゲームのボイスチャットでアナゴさん
──「友達が勧めてくれた」というきっかけでTikTokをはじめたと聞きましたが、昔から友達のなかで人を笑わせるのが好きだったんでしょうか。
SATOYU 「地元でおもしろいやつ」みたいな立ち位置でしたね。隙あらば笑わせたくて、面白いヤツになりたくて、隣の席の子をなんの脈略もなく勢いで笑わせたり。でも勧めてくれた友達も、「まさかここまでいくとは」とめっちゃびっくりしています。
──芸人さんを目指した時期もありましたか?
SATOYU ありました。もうひとり、僕と同じようにまわりを笑わせたいヤツがいて。その子と「吉本行きたいよね」なんて話をするだけで終わったんですけどね。
──周囲の友達を笑わせる以外に、表現の場はありましたか?
SATOYU それでいうと、中学生のときから今と同じようなことをやっていましたね。「APEX」のようなオンラインゲームをやっていて、ボイスチャットで「サザエさん」のアナゴさんの声マネで、「そっちあぶないぞ~! 気をつけて~!」とかふざけてしゃべっていました。
──当時一緒にやっていた人たち、「あのときの彼が!?」と驚くでしょうね。
SATOYU そうそう、一緒にやっていた人が僕の配信に来てくれたこともあったんです。「あのときから才能あったもんね」というコメントをくれて、覚えていてくれてうれしかったですね。
──オンラインゲームのボイスチャットが、SATOYUさんの原点だったんですね。
SATOYU そうだ、そのあと、高校生になるとスマホアプリの「斉藤さん」をやるようになったんですよ。誰かに声マネを披露したくて、最初にやったときは「俺の声マネ、どう思ってくれるんだろう」とドキドキしたのを覚えています。
TikTokがなくても、どこかで同じことをやっていた
──「斎藤さん」、なつかしい! iPhone版が2011年にリリースされた、ランダムに選ばれた相手と通話することができる「見知らぬ誰かと一期一会のコミュニケーションを楽しむ」をテーマに掲げたアプリですね。初めて人はどんなリアクションでしたか?
SATOYU 「おお! すごい!」みたいに言ってくれてうれしかったですね。自分のなかで唯一、人に褒めてもらえる特技だったのかもしれません。
──TikTok以前にも披露する場があったんですね。社会人になってからの表現の場はいかがでしたか?
SATOYU 8年ほど勤めていましたが、そういった場所はありませんでした。ただ、トラックの中では一人なので、ずっと声マネの練習していて。めちゃくちゃいい環境でした。TikTokをやり始めてからは、よりトラックの中でも練習に没頭するようになりました。そんななかで、就職してからは正直、40代、50代、60代……という、この先の未来の想像がついてしまっていたので、ちょっとちがう未来も見てみたいと思ったんです。それで本格的にクリエイターを目指すべく上京を決めました。
──会社を辞める相談は、奥さまにはしましたか?
SATOYU 「クリエイター1本でもやっていけるんじゃないか?」と思える時期だったので、打ち明けたときは「頑張ろう! 一緒にやっていこう!」と応援してくれました。妻も収入はあったし、もう本当に、妻の力は大きいですよね。
──もしTikTokを選択しない人生だったとしたら、どうなっていたでしょう。
SATOYU トラック運転手は一人になれる時間が好きなので続けているでしょうし、そのうえで、結局ほかのプラットフォームでやっていたと思います。とはいえ、ほかの場所だと伸びなかったかもしれません。TikTokの雰囲気と、僕のやりたいこととの相性が合致した結果が、いまなんだと思います。
場所はどこであれ、バズろうがそうじゃなかろうが、表現することが好きなんです。楽しいんですよね。これはずっと昔から変わらないし、これからも変わらないんだろうなあと思います。
──身一つが武器になっているさまは、TikTokクリエイターならではです。最後に、今後の展望を教えてください。
SATOYU 今までも未来のことはわからないまま、とにかく目の前にあるものを触っていく感覚で活動していました。「高い目標がないとダメだ」と言う人もいるかもしれませんが、目に見える手前のものに進んでいくだけでも十分だと思うんです。目の前が見えなくなるのは、立ち止まったときだけです。壁を感じたあの時期に「もう無理だ」「これから先もバズることがあるんだろうか」と止まりそうになりましたが、進んでいった結果、「月歩」があったし、またNPCがバズった。これからも前に進んでいくのみ、です。
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撮影/佐賀章広 取材・文/有山千春 構成/BuzzTok NEWS Buzz Tok NEWS公式HP https://buzz-tok.com/