クルマを運転する際に、ほとんどの人はナビゲーションを利用すると思いますが、その選択肢は多様化しています。一昔前なら、カーナビを使う人が主流でしたが、近年ではスマホのナビアプリなどを使用する人も増え、「Apple CarPlay」や「Android Auto」を介して大画面でアプリ画面を表示できるディスプレイオーディオ(以下、DA)や、音声でナビをしてくれるパイオニアの「NP1」のようなデバイスも登場しています。
その中でも、ガジェット好きな人たちの間で 話題となっているのがDAです。そして、このジャンルで高い人気を獲得しているのがパイオニアのカロッツェリア。「楽ナビ」や「サイバーナビ」などのカーナビで知られるブランドですが、DAだけでも複数のラインナップを用意しています。今回試用したのは、そのトップモデルである「DMH-SF700」です。
そもそもDAとは? DMH-SF700を選ぶメリット
DAとは、車載のディスプレイにスマホを接続することでアプリを表示できるデバイス。といっても、すべてのアプリが表示されるわけではなく、画面に表示されるのはApple CarPlayやAndroid Autoに対応したものだけです。基本的にはナビアプリやミュージックアプリなど、ドライブ中に使うものが表示されると考えておけばいいでしょう。
いわゆるカーナビは端末に内蔵された地図データを表示するので、地図の更新が必要になりますが、DAはスマホのナビアプリを使うため、地図は常に最新のものが利用できるのがメリットです。
カロッツェリアのDMH-SF700は、画面がフローティングした構造を採用することで9インチという大きなサイズの画面を実現。スマホの画面に比べて圧倒的に大画面なので、視認性も優れていますし、広い範囲の地図を表示させることができます。ディスプレイはHDの高画質に対応しているため、ナビアプリの地図も高解像度で表示することが可能です。
DAの自車位置情報はスマホのGPSを活用しているため、カーナビ専用機に比べて自車位置の精度が低いというデメリットもあります。ただ、DMH-SF700ではそれを補うためにGPSアンテナも装備。車体のセンサーとも接続されるため、位置情報を補正することができます(ただしアプリ側が測位された情報をどのように処理するかはわからないため、位置情報が常に補正されるとは限らないとのこと)。長年カーナビを手掛けてきたブランドらしい気遣いと言えるでしょう。また、DAと相性の良い商品として車載用Wi-Fiルーターも用意されています。試乗車にはそれも装着されていました。
カーナビアプリ「COCCHi」との組み合わせが最適解
DAはスマホアプリの画面を表示させるものだけに、ナビゲーション機能についてはアプリに依存することになります。利用者が多いアプリというと「Google Maps」や「Yahoo!カーナビ」がありますが、カロッツェリアを展開するパイオニアでも「COCCHi(コッチ)」というカーナビアプリをリリースしています。昨年9月にリリースされ、今年2月までに20万ダウンロードを達成。カーナビ事業で培ってきたノウハウが反映されたアプリです。
アプリ自体は無料でダウンロードすることができますが、Apple CarPlayやAndroid AutoでDAに表示するためには基本プラン月額350円(1か月間無料)の有料登録が必要。有料版になると、複数ルートの選択が可能となるほか、VICSとプローブ情報を反映したスマートループ渋滞情報や、オービス情報の利用、車格別のルート検索などが使えるようになります。
COCCHiの持つアドバンテージの1つが、ルート精度の高さです。カロッツェリアブランドで数多くのカーナビを手掛けてきたパイオニアには、時期や時間帯によってどこが混むかといった渋滞情報や、信号ごとの通過時間などのデータが膨大に蓄積されています。そうした情報と最新の渋滞情報などを組み合わせて提案されるルートの信頼性は高く、サーバ上でルートを検索するため、同社のフラッグシップモデル「サイバーナビ」に迫るレベルのルートを利用することができます。
実際ドライブしていても、いつもと違うルートで案内されるなと思っていたら、それは渋滞を避けるためのルートだったり、1つ手前の出口で高速道路を出るように促されたら、その先で渋滞が発生していたというようなことが何度かありました。また、地図だけではわかりづらい交差点や高速道路の出入り口などでは拡大表示もされるなど、案内もわかりやすく迷うようなことがありません。
もう1つ、使ってみて便利だと感じたのは、画面の左上をタッチすると高速道路と一般道を切り替えることができること。筆者がよく通るルートには高速道路の高架下を走る道路があるのですが、そこを走っていると一般道を通っているのにナビアプリでは高速道路を走っている表示になることがあります。そんなときに、ここに触れると一般道でのルートにワンタッチで切り替えることができました。
音声案内も、「次の信号を右です」という案内だけでなく、曲がるべき交差点で「この信号を右です」と案内してくれるなど、かなり親切。複数の車線がある道路で「右寄りの車線がおすすめです」などと、走るべき車線を案内してくれるのも便利でした。ちなみに、音声案内が多いと感じる人には、発話頻度を調整する機能も用意されています。
誰がDA+スマホカーナビアプリが最適なのか考えてみた
ここまでDAとCOCCHiのメリットについて解説してきましたが、今回のコンボはどんな人に最適なのか考えてみました。
■カーナビにコストをかけたくないユーザー
カーナビを必要とするのは、1か月に数回程度という人やカーAV機器にコストをかけたくないという人ならばDA。そもそもカーナビよりも安価で財布にも優しい。カロッツェリアにはコストを極力抑えたい方に向けたモデル「FH-8500DVS」から、このDMH700のようにこだわり層も満足できるモデルもあります。スマホと視認性が変わらないので、スマホ操作性に慣れている人にも使いやすいです。また、走行履歴で得たログデータをもとにCO2排出量やガソリン代金を可視化できるため、そのデータをもとに自身の運転を振り返って環境や財布にも優しい運転につなげていくことも可能。ガジェット好きでスマホカーナビアプリとの最先端を味わいたい人にはおすすめでしょう。
■輸入車好きのユーザー
輸入車オーナーにとっては、DA+スマホカーナビアプリの連携によって日本の本格的なナビを使えるメリットが大きいと思います。輸入車の純正カーナビは日本に最適化されていないことが多く、例えばフォルクスワーゲンやBMWなどの純正ナビだと高速道路のインターチェンジやパーキングエリアの案内パネルが表示されないといったことがあるからです。
■エンタメ好きなユーザー
DAは「Googleアシスタント」や「Siri」など音声アシスタントにも対応しており、聴きたい音楽の再生やカーナビアプリの目的地設定、簡単なメッセージの送信など様々な操作が音声で可能です。ドライバーの余計な画面タッチが減り、「ながら運転」による事故の危険性も減らせます。特にSF700は、9インチの大画面なので見やすさも抜群!
まとめ
筆者は、過去に様々なカーナビを使ってきましたが、近年はスマホのナビアプリを主に使用しています。いわば、カーナビ派からスマホ派に乗り換えた者で、ナビアプリもいくつかの種類を試してきました。そんな目から見ても、DMH-SF700とCOCCHiの組み合わせは、かなり”最強”に近いと感じます。ルートの信頼性や案内のきめ細かさ、そして長年のカーナビ開発で培ってきたドライバーへの配慮はかなり高いレベル。カーナビを使っていて、地図更新などにわずらわしさを感じている人や、スマホのナビアプリでは案内が今ひとつ物足りないと感じている人には、一度試して欲しいと思える完成度です。
ただ、この組み合わせにも欠点がないわけではありません。それは、目的地検索の使い勝手。住所などまでわかっている場合は問題ありませんが、あまり有名ではないスポットを名称で検索しても、見つけ出せない場合がありました。Googleなどスマホでのスポット検索を使い慣れていると、この辺りは不満に感じるかもしれません。
検索機能が劣っていることはパイオニアでも把握しているようで、Googleで検索した結果をCOCCHiに転送できる機能が用意されています。検索と、ルート設定や案内など、それぞれの得意分野を活用することができます。
最後に1つ触れておきたいのが、DMH-SF700で音楽再生した際の音質の良さです。ドライブ中はスマホに保存してある音楽を聴くことが多いのですが、同じ音源のはずなのにDMH-SF700で聴くと解像度がかなり高くなっていることが感じられました。実はDAのフラッグシップモデルだけあって、ノイズを処理するDSPやパワーアンプ部のコンデンサなどにはかなり高品質のパーツを採用しているとのこと。
また、圧縮音源をハイレゾ音源相当で再生する「マスターサウンドリバイブ」機能も搭載しているので、いつもの音源でも高音質で楽しむことができます。ドライブ中の音楽は気分を高めるためにも重要と考える人は、一度味わってもらいたい音質です。
現在COCCHiは、パイオニア製ディスプレイオーディオ購入者対象の6か月無料キャンペーンを行っています。
COCCHiダウンロードはコチラ:https://cocchi.onelink.me/wgPQ/lhe56cig
撮影/松川 忍
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