デジタル
2024/4/1 11:30

【西田宗千佳連載】大手2社から相次ぎ「つけっぱなし向けイヤホン」が登場する理由

Vol.136-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは最近増加中の“耳をふさがないイヤホン”。ノイキャン性能を誇る高級機が人気となっているなかで、ヒットしている理由は何か。

 

今月の注目アイテム

HUAWEI

FreeClip

実売価格2万7800円

↑形状記憶合金を使用したC-bridgeデザインを採用し、圧倒的な安定感と着けやすさを実現。さまざまな耳のサイズと形状に合い、スポーツ中でもしっかりとフィットして激しい運動でも落ちにくい。片耳単体では約5.6gと軽量だ

 

ノイキャンもないが着け心地の良さでヒット

最近、耳をふさがないタイプのイヤホンが増えている。今年に入り、大手から2つの製品が同時に登場した。HUAWEIの「FreeClip」と、BOSEの「Bose Ultra Open Earbuds」だ。

 

どちらも、それぞれのメーカーの特徴を反映したデザインにはなっているが、機能や特性はかなり似ている。

 

どちらもいわゆる完全ワイヤレス型イヤホンなのだが、耳の穴に入れるのではなく、耳の縁に挟むようにして使う。耳の穴に押しつける形ではなくなり、耳への負担感が大幅に小さくなる。耳への負担を最小限にし、周囲の音も聞こえるようにすることで、長い時間つけっぱなしで使うことを目指したイヤホン……と考えれば良いだろうか。

 

その性質上、音楽などの再生音は、周囲の音と自然に混ざって聞こえる。ノイズキャンセルももちろんできない。自分が聞いている音も、100%周囲に漏れないわけではない。だが、極端に大きな音にしなければ聞こえないように設計されており、日常的な利用には十分だろう。

 

こうした製品が注目されるのはいまに始まったことではない。コロナ禍でビデオ会議が注目された頃にも、骨伝導タイプのヘッドホンが売れた。ソニーが2022年に発売した「LinkBuds」も、耳への負担の小ささに加え、周囲の音がそのまま聞こえることがウリだった。長時間耳につける&耳の穴に入れるのは、やはり音楽向けの行為であり、長時間使い続けるのは辛い……ということなのだろう。

 

耳の側面に挟む、というスタイルにしてもこれが初めてではなく、国内でも「ambie」などが同じスタイルをずいぶん前から販売している。それだけ、こういうスタイルには価値があるということなのだろう。今後も同様の製品はもっと出てくるはずだ。

 

音声アシスタントや生成AIで変わる価値

ただ、いまはまた少し違う流れもある。それは音声アシスタントや生成AIとの関係だ。

 

音声での応答は今後より重要になる可能性がある。スマホとの連動により、単に音を聞くだけでなく、自分のアシスタントとしての価値が上がっていくわけだ。

 

そんなことから、イヤホンスタイルではなく「メガネ型」のデバイスを作るところも多い。BOSEは商品展開をやめてしまったが、HUAWEIは「Eyewear」シリーズを展開中だ。

 

日本では発売していないものの、メガネ型についてはこのほかにも、ビッグテックの取り組みが目立つ。

 

Metaはサングラスブランドのレイバンと組んで「Ray-Ban Meta」を2023年秋からアメリカなどで発売中。299ドルという手ごろな価格もあってか、かなりのヒット商品となっている。Amazonも「Echo Frames」という製品をアメリカで展開中だ。どちらもスマートフォンに専用アプリを入れて連動させ、かけたまま音楽を聞いたり、音声アシスタントを使ったりする。

 

こうした製品はどのくらい伸びる可能性があるのだろうか? 生成AIとの連動はどこまで進むのだろうか?

 

そうした未来の話は、次回以降解説していくことにしよう。

 

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