イタリアでも保育園や幼稚園、学校の送迎に、チャイルドシートを設置したママチャリは必需品です。ところが日本のようなチャイルドシート付きのママチャリだけでなく、ベンチや荷台が付いたタイプのママチャリも存在。日本では見かけない、イタリアの驚くべきママチャリを紹介します。
イタリアにおける子どもの送迎事情
大都市ミラノは公共交通機関が発達しているうえ、クルマの渋滞がひどく、侵入禁止ゾーンも多いため、通勤や通学にクルマはあまり使われていません。特に、コロナ後の都市部では公共交通機関よりも自転車、バイク、電動キックボードで移動する人が増えました。
イタリアでは、10歳以下の子どもに保護者の付き添いがないと放置虐待とみなされ、禁錮刑が科せられるため、小学校でも送迎が必須。子どもの送迎には日本のようにママチャリを使う人が目立ちます。
日本では親の送迎が必要なのは小学校入学までのため、チャイルドシートは道路交通法で「6歳未満までは同乗可能」となっています。ところが、イタリアでは10歳(ミラノは小学校卒業の11〜12歳まで)までは送迎が必要なので、チャイルドシートは22kg(平均的に9歳くらい)までとやや緩やか。それ以降は子どもも自分の自転車に乗り、親子2台で登校することになります(送迎義務がなくなる年齢からは子ども一人で通学)。
イタリアには、前や後ろにチャイルドシートを設置した日本と同じ形式の電動アシスト付きママチャリもありますが、よく見かけるのは電動アシスト機能も付いた、子どもが乗るための荷台付きママチャリです。Yuba社のママチャリはガード部分がオプションとなりますが、チャイルドシートがベンチ式になっていて二人乗せられます。こういった二人乗れるベンチシートタイプは日本では見かけたことがありませんが、イタリアでは人気があり、よく使われています。
また、大きくなった子どもや荷物が乗せられるYuba社の荷台つき自転車は、200kgまで積載が可能。普段使用している自転車やチャイルドシート付きママチャリに後付けができるので、かなり便利です。ただし、チャイルドシートタイプよりも横幅を取るため、道路幅の狭い都心の住宅街では小回りが利かなかったり、駐輪スペースがなかったりというマイナス面もあります。
荷台つき自転車がイタリアで送迎用ママチャリとして普及したのは、転倒しにくいことや、転倒しても荷台部分が横転しにくい仕組みになっているからです。乗り降りさせやすく、眠ってしまっても落ちることがないなど安全面での基準も備わっています。
なお、雨の日には、日本のように自転車のチャイルドシートにカバーを付けているのは見たことがありません。途中で降ってきた場合はレインコートを着ますが、はじめから雨ならば、クルマなど他の送迎方法に切り替えます。
その一方で問題も。街なかで最もよく見かける荷台つきママチャリ大手のBabboe社の自転車が、安全規格を満たしていないと、オランダ食品消費者製品安全局(NVWA)が指摘したのです。現在リコールの協議中で、2024年4月時点では全商品の販売が一時停止される状況となっています。この事例が他社にも適応されれば、これから荷台つきママチャリは規制の対象になる可能性があります。
イタリア式ママチャリの日本国内での普及については、道路交通法やSGマーク(製品安全協会認証)などがハードルになるでしょう。ベンチ式チャイルドシートはヘッドガードがないため自転車用幼児座席のSG基準を満たせず、荷台付き自転車は「軽車両」となるため歩道の通行ができません。こういった理由もあってか、イタリアのママチャリは日本に輸出されていないようで、実際に日本で乗ることは難しそうです。
このように、ママチャリひとつとっても、日本とイタリアにおける違いがわかります。法律や社会、道路事情、国民性などによって、その国で最も便利で効率的と考えられる商品のデザインは変わるのですね。
筆者/Ciho