時代が移り変わり、広告のあり方は大きく変容しています。テレビなどのマス広告がネット広告にとって替わられたのは大きな変化ですが、そのなかで、地域向けの広告手段が失われつつあります。
従来、地域に向けた広告といえば新聞に挟まれるチラシでしたが、その発刊数が減ったいま、効果は漸減しています。また、ポスティングお断りのマンションが増えており、チラシの投函もしにくいのが現状です。
その状況に注目したパナソニックは、各家庭にあるインターホンを広告メディアとして活用する取り組みを始めました。それが、地域情報コミュニケーションサービス「まちベル」です。
現代のインターホンは広告メディアにぴったり
インターホンは、どの家庭にもほぼ確実にある製品。操作が簡単で、子どもから大人まで、誰にでも使える機器です。昨今では、7インチの大型ディスプレイを搭載した機種が増えてきており、視認性も向上しています。
誰にでも使えて、見やすい。こんなデバイスは広告メディアにはぴったりだと、マンション向けインターホンで約50%のシェアを誇るパナソニックの担当者は考えました。そして生まれたのが「まちベル」です。
まちベルは、インターホンの画面に広告を届ける地域情報コミュニケーションサービス。地域の商業施設や店舗の広告が、そのエリア限定で配信されます。広告の内容は、新規店舗オープンのお知らせや、セール・イベントの情報など。地域に密着したものが表示されるので、住民は自らに親和性の高い情報を得られます。
その表示方法は至ってシンプル。広告が届くとインターホンの画面に「お知らせ」として通知が表示され、それをタップすると広告バナーが出現するという仕組みです。広告にはQRコードを入れることができ、広告主のサイトへの遷移を促したり、まちベル限定のクーポンを配布できます。
地域住民にぴったりな広告を確実に届ける
広告主にとってのまちベルの魅力は、高いエンゲージメント率にあります。パナソニックが行った実証実験の結果では、まちベルによって配信された広告の閲覧率は、平均30%以上。集客率は4.5%にも及んだといいます。なお、住民が広告を非表示にする設定も可能ですが、3ヶ月間に渡った実証実験では、配信先の約500戸のうち、非表示設定をしたのは1戸のみだったそうです。広告主にとっても、住民にとっても、価値が高い広告メディアであることが、実証されているといえるでしょう。
パナソニックによると、今後は新築の大型マンションに向けてまちベルの導入を進めていくとのこと。新築をターゲットにしているのは、最新機種のインターホンが導入されやすいことがひとつの要因ですが、それだけではありません。新築マンションの住民には、その地域へ新たに引っ越してきた、まだ街に慣れ親しんでいない人が多いからです。
地域に密着した広告を通して、街にもっと知り、親しんでほしい。週末のおでかけや日々の買い物など、地域での行動を促したい。新築マンションへのまちベル導入には、開発者のそういった思いが込められています。
まちベルは、2024年後半に竣工予定のタワーマンション4棟に導入されることが決定済み。将来的には小規模な物件や賃貸マンション、戸建てにも手を広げ、2030年には全国100エリアでの展開を目指しています。