提供:東京電力エナジーパートナー株式会社
今年も「くらしのラボ」と「ムー」のコラボ企画の季節がやってきた。今回は記念すべき10回目。ピラミッドとミューオン、そしてAI冷蔵庫/高精度センサー搭載のオーブンレンジをテーマとし、家電王・中村 剛さんとオカルト王・三上丈晴による対談を実施した。
接点がまったくなさそうなオカルトと家電という二つのジャンルだが、今回も意外な親和性があることが確認できる展開となった。パナソニック目黒ビルで行われた動画撮影の流れそのままで、まずはピラミッドに関する話からスタートした。
【家電王×オカルト王がピラミッドについて語る動画はコチラから】
素粒子「ミューオン」でピラミッドの内部を可視化
――家電王はピラミッドに対してどんな思いがありますか?
中村 私は小さいころからピラミッドが好きで、ぜひ行ってみたいとずっと思っていました。ですから、大学4年のとき卒業旅行で友達と一緒にエジプトに行って、ピラミッドにも登って中にも入りました。私が行ったときのリアルな話をすると、中に入る前は「写真はダメですよ」と言われるのですが、近くにはひっそりとチケット売り場らしきものが……もちろん迷わずに購入! 中に入ると役人のような人たちがいてチケットを見せると、ほかの観光客の列を整理してくれて「写真、どうぞお撮りください」という感じで接してくれました。考古学的な価値があると同時に、観光資源でもあることを実感しましたね。
中村 ピラミッドはかつては単に王墓だといわれていましたが、いまはいろいろなことがわかってきて、本当はほかの部屋もたくさんあるのではないかとか、新しい技術でわかることが増えてきたので、本当にワクワクしています。
――2023年の3月、クフ王のピラミッドで未知の部屋が発見されました。これには動画でも話に出ていた「ミューオン」というものが活用されたんですよね。
三上 今回の成果を正確に言うとしたら、「発見」ではなく「確認」ですね。ミューオンを使って「未知の部屋がある」とされていた場所が表面に非常に近かったので、マイクロスコープで確認できたということです。なお、ミューオンというのは電子の仲間の素粒子で、宇宙線のように地球に降り注いでいるものです。極めて透過性が高いので、これを活用してレントゲン写真のように物体の内部を可視化できるわけです。ミューオンを使って画像化したものが「ミュオグラフィ」で、これを活用したわけですね。
――ミューオンが使われた理由について教えてください。
三上 透過性がちょうどいいからです。レントゲンだと、撮影対象が厚いとうまくいきません。電子になると軽すぎて透過しないし、だからといってニュートリノ(より透過力の高い素粒子)になると、地球全体を貫通してしまいます。その点、ミューオンは石や火山には向いていて、ピラミッドのような大きな石の内部を透過するという意味で、非常に有効だと思います。ミュオグラフィには基本的に日本人の先生が3人関わっていて、浅間山などでもマグマがどこまで上昇しているか確かめることで、噴火のタイミングなどを推測できます。とはいえ、日本の研究チームも世界的な協力の下にプロジェクトを進めているので、日本だけのテクノロジーということではありません。
中村 ミューオンを使ったテクノロジーは、ほかの遺跡にも応用できますか?
三上 基本的に画像処理なので、あらゆる遺跡に適用できます。ピラミッドにしても、使われているのはほとんどが石灰岩で、石ひとつ単位の特徴を知ることができます。どこで採れた石なのかとか、この部分とこの部分の石はもともとひとつだったとか、そのあたりも含めていろいろなことがわかるでしょう。漠然とした状態で調査するのではなく、目的を絞った形で応用できるということです。例えばギザの三大ピラミッドでも、それぞれ石の大きさも削り方も違います。一番精度が高いのが第一ピラミッドです。ということは、おそらく建設者も違います。
中村 ちなみに、ピラミッドは奴隷が理不尽に働かされて作ったというわけでないようですね。
三上 はい。「奴隷が建設した」という話はもう完全に否定されていて、きちんと給料が支払われたうえで働いていた人たちです。ただ、文献の記述が大ピラミッドの規模や技術の完成度に見合わないところがありますが。
中身を「透視」して野菜の種類も見分ける冷蔵庫
――さて、「中身が見える」という点でミュオグラフィと共通しているのが、そこにある冷蔵庫ということですね。庫内をカメラで撮影するということですが、画像からAIによってカリフラワーとブロッコリーの見分けがつくというのは本当ですか?
中村 はい、その通りです。かねてから思っているのは、テクノロジーで画像を撮ることまではできますが、それだけではテクノロジーを使いっぱなしの状態。本来は「その画像データをどう使ったら暮らしに役立つか」まで落とし込まないと意味がない。たとえば、カリフラワーとブロッコリーの違いを機械に教えるには、やはりデータが重要。袋に入っている状態も含め、すべて学習させて認識させるところまで持っていきます。かつての時代の画像認識は、たとえば猫だったら「耳が尖っていて、目が丸くて、ひげがあって」というように、人間によるデータの入力が必要でした。でも、いまはコンピューターのパワーが上がったので、猫の画像を入れるとAIがその特徴要素を含めて、勝手に認識するようになっています。それがディープラーニングというものです。なので、ブロッコリーの画像をたくさん読み込ませれば、それだけ見分ける精度は上がってくるわけです。
三上 AIというのは基本的に画像処理ですからね。「人間の脳のようなものだろう」と漠然と考える人が多いけれど、画像処理であることに変わりはありません。1枚の画像を格子状に分割して、その中のひとコマの色が隣のコマと比べてどうなのかということを判断し、その答え合わせをフィードバックする……というプロセスを繰り返すわけですね。
――レシピまで提案してくれると聞いて驚きました。
中村 「暮らしのなかでどう役立てるか」を考えると、そもそも冷蔵庫は食品を冷やしておいしい状態を保つための保管庫なのです。庫内にある食材を使っておいしい料理を作りたいときにアプリが作り方を教えてくれるとか、次の過程で必要となるオーブンレンジと連携するとか、近いうちには一体化するかもしれません。こういうやり方なら、フードロスも減らしていけるでしょう。冷蔵庫をテーマにした省エネは、電気代削減よりもフードロス削減のほうがよっぽど効果が大きいのです。
—―データを活用したAI技術は、この先どのような方向性で活用されていくでしょうか?
中村 たとえば顔認識ですね。決済にしても犯罪防止にしても、顔認識を採用したほうが便利なことがたくさんあると思います。家に帰って顔で玄関のドアが開いたら便利ですし、一歩進めて、画像認識で子どもの後ろに不審者が映っているときはアラートを出して、解錠しないなど、そういう方向性での発展が考えられるでしょう。こういう技術を世の中で使っていくと、それは「管理」ではなくて「生活の質のレベルアップ」につながると思うんです。防犯カメラもそう。何かあったあとで検証するだけではなく、AIでリアルタイムで変な動きをしている人を見つけるとか、具合が悪そうな人、困っている人を見つけ出してすぐに対処することができます。大量の画像はそもそも見切れないので、適切なモノをピックアップするAIとの連携が必須です。
高精度センサーが「第六感」を連想させるオーブンレンジ
――お隣のオーブンレンジ、動画ではムー的な「第六感」と関連づけて取り上げていました。こちらはどんな機能があるんでしょうか?
中村 かなりいろいろなことができます。いまのオーブンレンジの進化ポイントというのは、「簡単にできて、かつプロの料理人みたいにおいしい」ということ。こちらも“見る”=可視化ということにつながるのですが、カメラで認識するのではなく、赤外線を使って食材の温度を認識します。「高精細・64眼スピードセンサー」といって、内部の温度分布を見ているんですね。そこをしっかり把握することで、冷凍食材や常温の食材などいろいろなものが混ざっているとき、どうすれば適切な調理ができるか見きわめるわけです。たとえば、温度が低い部分を感知したら電磁波をそこに集中させることになりますね。さらには、温度上昇速度から分量を把握することもしています。
三上 思わず愚痴になってしまうのですが、レンジを使う時は500Wとか600Wで説明の通りに温めても、シューマイが表面だけ変にパリパリした仕上がりになってしまうことがあります(笑)。
中村 そのあたり、最新機種はお任せ調理でもちゃんと調理してくれますよ。食材の焼き具合まで指定できるんです。自動調理器という分野もどんどん進化しています。すでに、食材と調味料さえ入れておけば、あとは勝手に調理してくれるという形ができつつありますね。パナソニックでいえばオートクッカーという製品があって、これもさらなる進化があると思います。
今回は、ピラミッドの内部を調べるテクノロジーとしてのミューオンから始まり、最新の中身が見える冷蔵庫、および高精度温度センサー付きのレンジに触れ、便利なだけではなくフードロス削減にもつながっていくという話になった。のべ10回の対談で立証されているオカルトと家電の親和性は、これから先どんな方向で展開していくのだろうか。今後も、楽しみで仕方がない。
撮影/鈴木謙介 取材・執筆/宇佐和通