デジタル
2024/8/29 20:00

【西田宗千佳連載】「Copilot+PC」でPCを刷新するマイクロソフト

Vol.141-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はマイクロソフト が進めるAI 向けに強化された機構を持つPC の普及。「Copilot+PC」と銘打ったモデルの狙いと普及に向けた課題を探る。

 

今月の注目アイテム

ASUS

Vivobook S 15 S5507QA

直販価格24万4820円~

↑ASUS初となる次世代AI機能搭載のCPU「クアルコム Snapdragon X Eliteプロセッサー」を採用。ASUSをはじめレノボ、HP、エイサーやマイクロソフトなど、大手PCメーカーから「Copilot+PC」が続々と登場している

 

AI機能の強化はこれからのPCに必須

Windows PCに、大きな変化が訪れている。AIを効率的に処理する仕組みがプロセッサーに搭載された「Copilot+PC」の登場だ。

 

マイクロソフトは今年5月からの1年間で5000万台のCopilot+PCが販売される、と予測している。PCは年間に2億5000万台以上が出荷されるため、全体の5分の1が“AI向けに強化された機構を持つPCになる”としているわけだ。

 

今年5月、マイクロソフトは同社の開発者会議「Build2024」に合わせてCopilot+PCを発表し、同社製PCである「Surface」シリーズもリニューアルして発売した。それに合わせるように、PC大手も続々とCopilot+PCを発売している。

 

Copilot+PCとは、マイクロソフトがスペックを規定し、Windows 11でAIを活用するフレームワークに沿ったPCを指す。AIの使われ方が変化していくという予測に基づいた規格と言っていい。

 

OpenAIの「ChatGPT」にしろGoogleの「Gemini」にしろ、処理はクラウドの中で行われている。マイクロソフトの「Copilot」もそうだ。最新の生成AIを使うには、クラウドにある強力なサーバーにより処理する方が有利なので、多くの生成AIサービスはクラウドで動作する。

 

PCだけである程度のAI処理完結を目指す

しかし、PCの中にあるプライベートな情報を扱う「個人のためのアシスタント」を目指すには、それらのセンシティブな情報をアップロードせず、PC内で処理するのが望ましい。そのために、AIによる推論処理を高速に実行するための「NPU」を高度化し、PC単体である程度のAI処理を完結させられる必要が出てきた。十分に高性能なNPUを搭載したPCと、NPUの存在を前提としたWindows 11の組み合わせを「Copilot+PC」と呼ぶ。

 

本記事は8月上旬に執筆している。発表から2か月が経過したが、Copilot+PCが好調に売れているか……というとそうではないように思う。

 

理由は主に3つある。

 

ひとつは、「まだ高価であること」。Copilot+PCの中心価格帯は20万円前後で、数が売れる安価なPCの領域ではない。

 

次に「ARM版が先行していること」。高性能なNPUを備え、Copilot+PC準拠のプロセッサーはまずクアルコムから発売された。PCとして一般的な「x86系」ではない。動作速度やx86系ソフトを動かす機構も進化し、過去に比べ不利は減った。だが、まだ購入に二の足を踏む人は多い。AMDやインテルのプロセッサーを使った製品は、今夏から秋にかけて登場する予定だ。

 

最後が「コア機能が欠けていること」。Copilot+PCでないと価値が出ない機能がまだ少なく、あえて選ぶ人が少ないのだ。計画よりも機能搭載が遅れ気味で、すぐにCopilot+PCを選ぶ必然性は薄い。

 

だが、こうした部分は当然解決に向かう。なぜ遅れていて、どう解決されていくのか? 結果としてCopilot+PCは普及するのか? そうした部分は次回以降で解説していく。

 

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