25年ほど前。テレビではレオタードの女性達が謎のダンスをしたり、宇宙人がお金を借りに地球に寄ったり、チワワが目をうるうるさせたりしたCMがよく流れていました。
広告の主は消費者金融会社。当時は駅前には無人契約機が所狭しと並び、学生も気楽にキャッシングをするーー。「お金は簡単に借りられる」。90年代は確かにそんな雰囲気がありました。
もちろん、お金を借りたからには返さなければいけないし、借りたお金には利子が付くのですが……。
『消費者金融ずるずる日記』(加原井末路・著・三五館シンシャ・刊)は、消費者金融業界が栄華を極めていた1990年代半ばから、法改正によってジリ貧になっていく2010年代までの20年間の内実を描いた1冊。
命を担保に貸している
いかにお金を貸すか、いかに取り立てるか、債務者たちの事情などが赤裸々に語れている本書で、特に印象に残ったのが「命を担保に取っておく:団体信用生命保険」。当時、債務者は必ず生命保険に加入させられていました。それは、仮に債務者が亡くなった場合でも保険金で補填できるから(現在は禁止されている)。
ある時、死亡診断書を受け取った著者が内容を確認すると、亡くなったのは一度追い込みの電話をかけた青年でした。
我々は「無担保」を名乗りながら「命」を担保に取っているのだ。そして、私はこの因果な商売で家族を養っている。
『消費者金融ずるずる日記』より引用
ショックを受けつつも、いちいち気にしても仕方ないと割り切ろうとする著者と、「完済できてよかった」と語る支店長に、この業界の修羅を感じました。
家の汚さと借金の額
もうひとつ強烈なエピソードが「ゴミ屋敷:多重債務者の特徴」。著者が支店長とともに取り立てに向かうとそこはゴミ屋敷。
玄関から覗き見える居間もカップ麺や空き缶、ペットボトルがあふれている。この部屋のどこに生活スペースがあるのかと思える、完全なるゴミ屋敷だ。
帰り道、車中で大橋店長がこぼす。「さっきの客の家ん中見たか?延滞客の家ってだいたい考えられないほど汚えよなあ」
『消費者金融ずるずる日記』より引用
なんというか、妙に身につまされるというか、キチンと部屋の掃除をしようと思ったエピソードでした。
本書では、いろんな人がいろんな理由でお金を借りにきます。ギャンブルのために借りる人もいれば、本当に生活に困って借りに来る人まで、理由は様々です。
皮肉なのは、貸し付けている側の著者もまた、ローンやキャッシングなどで400万の借金を作り、最終的には自宅を手放していること。お金の大切さと怖さが身にしみました。
「ご利用は計画的に」。この言葉の重さがよくわかる1冊です。
【書籍紹介】
消費者金融ずるずる日記
著者:加原井末路
発行:三五館シンシャ
1990年代の半ば、30歳のときに足を踏み入れ、50歳で退職するまでの20年を私はこの業界ですごし、お金にまつわる悲喜こもごもを目撃した。私が在籍した期間は、消費者金融業界が栄華を極めてから、2010年の法改正施行を経て、没落していく年月でもあった。
――本書にあるのはすべて私の実体験である。