世界で最も電気自動車(EV)を販売している会社といえば、アメリカのテスラ社です。2023年の世界シェアでは2割近い19.3%を達成し、2位には中国の比亜迪(BYD)が、3位には中国の上海汽車集団(SAIC Motor)が迫っているものの、同社がグローバルで安定した人気を保っているのは間違いありません。
そんなテスラ社が日本で展開する乗用車は計4車種。すべてをEVとし、価格は「Model S」がデュアルモーターAWDで1266万9000円から。SUVとなる「Model X」になると1416万9000円からとなります。一方でもっとも安価な「Model 3」のRWDは531万3000円からで、そのSUVである「Model Y」が533万7000円からとなっています。今回はこのテスラについてご紹介します。
そもそもテスラとは?
そもそもテスラ社は2003年、米国テキサス州オースティンにおいて、電動輸送機器やクリーンエネルギーの開発・販売をする会社として設立されました。世間ではEVばかりが注目される同社ですが、実は蓄電池や太陽光発電など電力インフラ系でも世界的な企業として成長しているのです。
そのテスラ社の有名人といえば、今や誰もが知っているイーロン・マスクCEOでしょう。2008年にCEOに就任したあとは、積極的にEVの開発や販売を手掛けたほか、宇宙ベンチャーのスペースXへの投資など、その言動や一挙手一投足が常に注目を浴びる存在となりました。EV事業でも順調に実績を残し、今に至っているのは冒頭で述べたとおりです。
さて、そのテスラ車、ラインナップ全般でポイントとされるのが、すべてがEV専用ボディとなっていること。そのため、そのデザインはガソリン車にありがちないかついフロントグリルはなく、見た目はかなりスマートです。これは熱源となるエンジンがボンネット内に存在しないからで、バッテリー用のラジエーターにしてもエンジン車に比べればかなりコンパクト。それがスマートなデザインを生み出した理由となっています。
また、環境に配慮したパーツを積極的に採用しているのもポイント。たとえばシートをはじめとするインテリアには、石油由来の素材や動物の皮革を使うことなく、植物性樹脂を用いた“ヴィーガンレザー”を採用するなど、サステナブル性を重視した対応を採っています。まさに走行中の排出ガスをゼロとする、EVならではの環境への配慮といえるでしょう。
クルマとしての先進性においても目を見張るものがあります。今や高度な運転アシスト機能(ADAS)を備えることは決して珍しくありませんが、テスラ車はこの分野でもAIを活用した先進性を発揮しているのです。センシングは基本的にカメラだけで行いますが、ここにAIを組み合わせることで、広範囲にわたって優れた認知性能を発揮しているのです。
【その1 Model 3】テスラ車の魅力を体験するには最適!
現時点(2024年12月時点)でテスラが製造するもっともコンパクトで身近な価格帯となっているEVとなります。とはいえ、国産車のようなコンパクトカーとは一線を画した存在です。なにせボディの全幅(ミラー含まず)は1850mmもあり、この寸法は日産・スカイラインの1820mmを超えます。ただ、それでもテスラ車で唯一、日本の機械式駐車場に入れられるサイズなのはメリット。
しかも、この幅の広さが幸いして、後席には大人3人が楽に座れます。運転席回りは、テスラらしく操作ボタンはほとんどなく、スタートボタンすらありません。エアコンをはじめとする様々な車両設定は15.4インチのディスプレイ上で行い、後席に備えた8インチディスプレイからもエアコンなどの設定が行えます。こうしたUIからも先進性を実感するでしょう。
また、フロントシートはベンチレーテッド機構付きとなっており、これは事前にスマホからエアコンと連動して作動させることが可能。デュアルサブウーファーを含む最大17スピーカーのオーディオシステムやワイヤレス充電が2台分備わっているのも注目です。
Model 3で素晴らしいのはその動力性能です。最大出力は208KW(283PS)で、EVならではのトルク特性により、停止状態から100km/hまで4.4秒(ロングレンジAWD)で到達。高級スポーツカー並みの加速力を発揮します。まさにModel 3は外観からは想像もつかないような走りを身近に味わえるものとなっているのです。
身近な価格とはいえ、「RWD」でも531万3000円となりますが、国の補助金65万円を加味すればユーザーの実質負担額は470万円ほど。これに自賠責などの諸経費を加えても500万円以内に収まります。その意味で、Model 3のRWDは、テスラ車の魅力を体験するエントリーモデルとしては最適な一台となりそうです。
【その2 Model Y】SUVでパフォーマンスの高いEV
Model 3をベースにSUVとしたのがModel Yです。全長4760mm、全幅(ミラー含まず)1925mmとModel 3を上回るボディサイズとなりましたが、その分だけユーティリティ性を高めているのがポイント。シートは2列/5人乗りで、大人が5人乗車してもゆったりとした空間を確保しています。
特にリアシートは折りたためばフラット状態にできるだけでなく、5人乗車時でのラゲッジルームの容積は854L、後席を折りたためば2041Lもの空間が生まれます。加えて、フロントボンネットには117Lの収納スペースが用意され、ラゲッジボードの下にも収納スペースが確保されています。この辺りはまさにEVならではのメリットといえますね。
車内では何といっても、空の景色が見通せるパノラマルーフが広々とした風景をもたらし、ドライブの楽しさを盛り上げてくれます。静粛性も高く、ドライブの快適性が一段と高められています。ただし、ホイールベースが2890mmと長くタイヤも太いため、最小回転半径は6.05mとなってしまいました。狭い路地では取り回しが大変かもしれません。
コクピットはテスラ車共通で物理スイッチは一切なし。あるものといえば法規上必要となるウィンカーレバーや、コラム式のシフトセレクターぐらい。オーディオや空調など、ほとんどの車載機器はセンターにある液晶パネルで設定するか、音声コマンドで操作する仕組みです。こうした先進的なUIがテスラファンを生み出している理由でしょう。
動力性能では、上位グレードの「パフォーマンス」の実力に驚かされます。なにせ158(前)/235(後)kWのシステム出力を発揮しており、これを馬力換算すると535PS! それだけに0→100km/hはわずか3.7秒で到達します。さらに、一充電走行距離も595km(WLTCモード)という長さ。それだけに価格も697万9000円となりますが、それも十分納得できるパフォーマンスといえるでしょう。
ではベースモデルの「RWD」はどうかといえば、リア駆動のみでも220kW(300PS相当)と、これでも十分なパフォーマンス。価格も533万7000円とグッと身近になってきます。SUVでパフォーマンスの高いEVを手軽に欲しい人にはマッチするグレードかもしれません。なお、国の補助金はModel Yすべてが65万円となります。
【その3 Model S】テスラ初の量産型として誕生したモデル
テスラ初の量産モデルとして誕生したモデルSは(SLA/SLP)は、フラッグシップモデルとなる4ドアセダンタイプの電気自動車。発売当初は後輪駆動モデルのみでしたが、後に前輪にもモーターを追加したAWDが発売され、2017年以降のモデルはすべてAWDとなっています。全長4978mm×全幅1964mm×全高1440mmのボディサイズでありながら、高出力モーターによる圧倒的な加速性能は、大排気量エンジンを搭載したスーパーカーにも勝ります。価格はデュアルモーターAWDが1266万9000円、対して最強グレードのPlaidは1566万9000円!
室内を覗いてみると、上半分がない近未来的なステアリングを採用し、センターコンソールに配置される17インチシネマティックディスプレイは2200×1300の解像度、超高輝度、トゥルーカラーを誇り、素早い応答性を見せます。また、左右に傾けられる機構を備えたことで、どこからでも画面が見やすくなっています。リアトランクは実用性に優れるハッチバック形式で、容量は約750Lもある。
ちなみに今年の6月4日、モデルSの最強グレードPlaidが、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースでタイムアタックを行い、7分25秒231のラップタイムを計測した、と発表しました。これは量産EVの最速記録になるとのこと。
【その4 Model X】アメリカンなサイズを体験するのも悪くはない!
現在、テスラ車が販売するEVの最上位モデルがModel Xです。グレードは「デュアルモーターAWD」(1416万9000円)と「Plaid」(1636万9000円)の2つで、価格も最上位モデルにふさわしい設定となっています。補助金はいずれも52万円。特に、リアドアが上に開く“ファルコンウイングドア”となっており、しかも開くときはドアが中折れし、車体との空間が30cmあれば乗り降りできるよう工夫されているのがありがたいですね。
とはいえ、そのサイズは全長5057mm×全高1690mm×全幅(ミラー含まず)2000mmにもなり、まさに“巨大”ともいえるサイズというほかはありません。重量も2.5tに近い重さ。当然、狭い道はもちろん、駐車をはじめとする普段の取り扱いにも苦労するのは間違いないでしょう。米国生まれのEVだけに、どうせならこのアメリカンなサイズを体験するのも悪くはないです。
しかも、Model Xにはテスラ車で唯一6人乗りに加えて7人乗りもラインナップ。つまり、テスラ車でミニバン的な使い方ができるのもModel Xだけなのです。シートをたたむと最大2614Lもの巨大な空間が生まれます。Model Xなら多めの家族や仲間とともに、テスラならではの圧倒的なパフォーマンスが楽しめるわけです。
最上位モデルだけに、そのパフォーマンスも群を抜いています。最上位のPlaidは重量が2470kgとなりますが、発揮するパフォーマンスは最大出力が623kWで馬力換算だとなんと1020PS! 最高速度は262km/hに達し、0→100km/hは2.6秒しかかかりません。また、ベースモデルでも最大出力は503kWで馬力換算すると670PS。0→100km/hは3.9秒という高いパフォーマンスを発揮するのです。
車内に目を移せば、運転席のステアリングには先進的かつ斬新な「ヨーク型」がオプションで選べるほか、世界最大のパノラミックウィンドシールドと最大7人乗りの広々としたキャビンが楽しめます。また、センターディスプレイは2230×1300ドットの高解像度設計の17インチモニターで、これを22個のスピーカーと組み合わせたオーディオシステムがドライブの楽しさを盛り立てます。
テスラの先進性と圧倒的パフォーマンスをすべてにおいて体験したいのなら、Model Xが唯一無二選択となるのは間違いありません。
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