CESは、今年1年のエレクトロニクス家電に関わる技術・製品開発がどんな方向に向かうのか、傾向をまとめていち早く知ることができるイベントです。今年の会場で見つけた、ハイレゾプレーヤーにヘッドホン・イヤホンに関連する2017年のトレンドを引っぱりそうな注目製品を紹介していきましょう。
オンキヨーから究極のハイレゾスマホが登場
ハイレゾが再生できるスマホは日本では一昨年ぐらいから数が増えてきました。いまではAndroid系を中心に、「Xperia XZ」や「isai Beat」、「HTC 10」など音質にもこだわったハイレゾスマホが発売されています。そのようななか、オーディオメーカーであるオンキヨー&パイオニアイノベーションズは、同社のオンキヨーブランドからまさしく“究極のハイレゾスマホ”と呼ぶにふさわしい端末を開発。CESで披露しました。
一般的なハイレゾスマホと違うところは、手に持つと分かる“厚み”と“重さ”。普通のハイレゾスマホが、軽くて薄いスマホ筐体をベースにハイレゾ再生機能を追加しているとすれば、オンキヨーのハイレゾスマホは真逆の方向からアプローチしています。つまり、まずハイレゾオーディオプレーヤーとして磨き上げ、そこにスマホとしての機能を巧みに融合させる、という視点で開発された製品となっているのです。このずっしりと重い筐体に、オーディオメーカーらしいモノ作りの作法を感じます。
同社で製品の開発を担当したスタッフによれば、「今どきのハイレゾスマホの音になんとなく満足ができないけれど、ポタアンや単体のハイレゾプレーヤとの2台持ちもできれば避けたいという方々に、ハイレゾスマホ単体でしっかりとしたいい音を楽しんでもらいたい」というアイデアが起点になって誕生したとのこと。
CESではそのスペックの一部が公開されましたが、ハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤー「DP-X1A」と同じく、リニアPCMは最大384kHz/24bit、DSDは11.2MHzまでのハイレゾ再生に対応。スマホとしては異例となる2.5mm 4極のバランス出力に対応しているなど、見どころたくさん。Android OS 6.0にGoogle Playストア、Wi-Fi機能を搭載しているので、SpotifyやAWAといった音楽ストリーミングサービスのハイレゾ以外の音源も、よりいい音で再生できる点にも注目です。
デザインはDP-X1Aのテイストを踏襲。本体はやや薄くなって、画面サイズも0.3インチ大きな5.0インチになっています。スマホとしては4G LTE通信が可能で、デュアルSIM対応という情報はオープンになっていますが、日本ではSIMフリー端末として発売されるのかなど詳細は今後の正式発表を心待ちにしましょう。
このほかにもオンキヨーとパイオニアから2.4インチの画面を搭載する、片手で操作できるコンパクトなハイレゾDAPも発表されました。DP-X1A、XDP-300Rの弟機になるようですが、ハイレゾ再生は兄貴分に肩を並べるほどのパフォーマンスになるのだとか。OSはAndroidではなく独自開発のもので、インターフェースの反応がよく、快適に音楽再生が楽しめそうです。Wi-Fi機能も搭載し音楽ストリーミングサービスにも一部対応することになりそう。国内でも人気の高い、DP-X1A、XDP-300Rのサウンドがより手軽に持ち歩いて楽しめるようになれば嬉しいですね。
2017年も要注目の「完全ワイヤレスイヤホン」
2016年には、世界に衝撃を与えた「EARIN」を皮切りに、アップルの「AirPods」などの完全ワイヤレスイヤホンが続々登場しましたが、その流れは2017年も継続することになりそうです。
MONSTERは日本でもお馴染みのワイヤレスヘッドホン「ELEMENTS」シリーズに、ゴージャスなダイヤモンドのようなルックスの「EARLINK WIRELESS」を発表。夏ぐらいまでに北米からリリースを順次予定しています。価格は250ドル~300ドルぐらいの見込み。女性ユーザーをターゲットに、アクセサリー感覚で身につけられるイヤホンとしてアピールするようです。
反対に、「デジモノ好きの男性ユーザーにとことん魅力を伝えたい」と開発者が力説していた完全ワイヤレスイヤホンが、スウェーデン発のブランド、YEVOの「YEVO1」です。ホワイトとブラックのクールなモノトーンのイヤホン。左右のイヤホンは、一般的に多く使われているBluetoothによる接続ではない、「NFMI(Near Field Magnetic Inductance:近距離磁界誘導)と呼ばれる接続の安定性が高い技術を使って、リスニングの快適さをアップしています。ハウジングの外側のパネルがタッチセンサーになっていて、タップして音楽再生やハンズフリー通話の操作ができるほか、マイクで外の音を取り込める機能も搭載。音楽とミックスして外の音がきこえるようになるので、より安全に音楽リスニングが楽しめます。
日本からはソニーが完全ワイヤレスイヤホンの試作機を発表。CESの時点ではまだコンセプトまでの発表だったので、型番を含めた詳細は明らかにされていませんでした。しかし、いまヒットしているワイヤレス+ノイキャン機能搭載のヘッドホン「MDR-1000X」のシリーズに加わるプレミアムモデルとしてのデビューを狙っているそうで、ソニー独自の“オーディオ品質を意識した”デジタルノイズキャンセリング機能が組み込まれるとのこと。完成すればAirPods最大のライバルになりそうですが、ソニーらしいワクワクとさせられる機能が盛り込まれるのか期待が膨らみます。
このほかにも今年のCES会場には、スマホアクセサリーやポータブルバッテリーを扱うメーカーなどからも完全ワイヤレスイヤホンが至るところで出展され、賑わっていました。従来のイヤホンよりも、通信の安定性や装着感、音質など色んな面で作り込みが難しい製品なので、完全ワイヤレスだからといってそれだけで製品が注目されることは今後あまりなくなるのではないでしょうか。各社が高品位で個性的な製品を開発し、競い合う時代がもうすぐそこにやってきていると感じました。
CESには伝統から最先端まで、いま音楽ファンが注目するオーディオの一番旬なトレンドが集まります。今年もワイヤレスからハイレゾまで、魅力的な製品がたくさん登場していました。そのなかでも、「ハイレゾ再生対応スマホ」と「完全ワイヤレスイヤホン」は、2017年のオーディオトレンドをけん引しそうな注目アイテムとなっています。いまから日本販売が楽しみですね!