あちこちで桜が咲き始め、写真撮影を趣味にする人にはうれしい季節がやってきた。ただし満開の期間は短く、シャッターチャンスは限られる。失敗せずに桜を上手に撮るにはどうすればいいのか。プロカメラマンによる桜撮影7つのテクニックをお伝えしよう。
その1「光線」にこだわる
撮影場所に着いてまず意識したいのは、その場の光の状態。桜の木に対して、太陽がどの方向からあたっているかをチェックし、そのうえで狙いに応じた最適なカメラポジションを選択しよう。
最初の写真は順光、すなわち桜に対して光が正面からあたっている状態だ。順光は、最も基本的な光であり、被写体の色や形を正確に再現しやすい。鮮やかでくっきりとした桜写真が撮りたいなら順光がおすすめ。特に青空を背景にすると、桜色がいっそう引き立つ。
ただ順光は、陰影がほとんどないため、平坦な印象になりやすいというデメリットもある。メリハリを与え、桜をより立体的に表現したい場合は、真正面ではなく、斜めや横から光が差す状態を狙うのがいい。次のカットは、横から光があたった状態をクローズアップで捉えたもの。
さらに印象を強くしたいときは、逆光を選択しよう。逆光では花びらが透き通るように輝き、力強い桜写真になる。順光やサイド光とは違って青空は表現しにくいが、その代わり下の写真のように逆光+黒バッグ、または逆光+白バックを選ぶと、桜の美しさを際立たせることが可能だ。
その2「天候」にこだわる
晴れの日は、桜の撮影日和。晴天では高コントラストな写りが得られ、花の色を鮮明に表現できる。前述の順光/サイド光/逆光による表現も、晴天のときにこそ違いが明確に出る。
とはいえ、撮影日が曇天や雨天だったとしても悲観することはない。曇天や雨天は、ソフトでしっとりとした雰囲気の桜が撮れるチャンスでもある。たとえ同じ桜でも、天候次第でまったく違った表情が見られることは桜写真の面白さといっていい。
撮影時の注意点は、晴天時とは違って、空をできるだけ画面に入れないようにすること。曇天や雨天の空は写真上では真っ白に写り、あまり見栄えがよくないからだ。ズームアップしたり、撮影ポジションに工夫したりして、白い空が極力入らないフレーミングを選択しよう。
その3「ボケ」にこだわる
桜写真に深みを与えるワザのひとつとして、「ボケ」を取り入れるのも面白いだろう。人間の眼では、近景から遠景までのすべての範囲にピントが合ったように見えるが、写真の場合は1ヶ所のみにピントを合わせて前後をぼかして表現できる。つまり、桜の背景部分をぼかすことで、花のみを浮かび上がらせ、その存在感を強調できるのだ。
そのためには、ひとつの花にグッと迫ってクローズアップで捉えること。花に近寄れば近寄るほど、背景のボケの度合いは大きくなる。
上の写真のように、被写体の背景に生じたボケは「後ろボケ」と呼ばれる。一方でシーンによっては被写体の手前に生じた「前ボケ」が効果的なこともある。下の写真は、目の前にあった桜の花ごしのカメラを構えることで、その花を前ボケとして写し込んだもの。
こうした前ボケは、画面に奥行きを与えたり、ソフトな雰囲気を作り出したりする働きがある。注意点は、接近すれば自動的に生じる後ろボケとは異なり、前ボケを作るには、ボケとして利用する被写体を意識的に写し込む必要があること。さまざまな角度から被写体を眺め、バランスのいい前ボケが入るカメラアングルを探してみよう。
その4「副題」にこだわる
桜そのものをストレートに撮ることは必要だが、それだけでは単なる記録写真になりがち。より面白い桜写真を目指すなら、桜だけでなく、そこに+αする別の要素を盛り込んでみよう。つまり、主題である桜をより際立たせるために、副題となる被写体を取り入れるのだ。
副題として生かせるのは、例えば鳥や昆虫、ほかの植物、乗り物、建物、看板、歩行者など。桜以外の要素は邪魔だと考えがちだが、あえてそうした脇役を写したほうが、主役が引き立つだけでなく、写真にオリジナリティを与えられるだろう。
桜を撮影できる期間は限られているので、必ずしも狙った条件になるとは限らない。しかし、思いもよらないベストショットが撮れるチャンスともいえる。状況にあわせてベストな方法を選択することが重要だ。
次回は後編として、残り3つのこだわりを紹介しよう。