2014年に発売されたハイレゾ再生対応のAndroidスマートフォン「Xperia Z3」を皮切りに、音楽再生時の音質にこだわった高音質スマホが続々と登場しています。音楽再生専用プレーヤーを使わずにスマホで音楽を楽しむ人が増えるなか、スマホでもより高音質なサウンドを求めるユーザーのニーズと、コモディティ化が進むスマホ市場において、音質を高めることで他社との差別化を図りたいメーカーの意図が、その背景にあります。
しかし、ひと口に高音質スマホといっても、そのアプローチは各社様々。そこで今回、GetNavi webでは、人気の高音質スマホ5機種を一挙に聴き比べ、そのサウンドを細かくチェックして採点しました(※)。試聴機種は、オンキヨー「GRANBEAT」、ソニーモバイル「Xperia XZ Premium」、ZTE「AXON 7」、HTC「HTC U11」、LGエレクトロニクス「V20 PRO」(isai Beat)の5機種。いずれもハイレゾ再生に対応し、独自の高音質技術を採用しています。
※:今回の採点は音楽再生機能だけにフォーカスを当てたもので、スマホとしての使い勝手やカメラ機能などは評価していません。
採点したのは、オーディオライターの山本 敦さん、デジタルライターの武者良太さん、編集部オーディオ担当の一條 徹の3人。いずれも、普段使用しているイヤホン/ヘッドホンを持参し、聴き込んだハイレゾ音源を試聴しています。
【使用したイヤホン/ヘッドホン】
山本:JH Audio「Michelle」
武者:音茶楽「Flat4-緋櫻Plus」
一條:Philips「Fidelio X1」
各機種レビュー
1.ソニーモバイル「Xperia XZ Premium」
ココに注目:圧縮音源やストリーミング音源をハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE HX」を搭載。独自のハイレゾワイヤレス規格「LDAC」にも対応している。
合計:22点/30点
2.ZTE「AXON 7」
ココに注目:スマホで世界初となる旭化成のDACチップ「AK4490」とHD録音チップ「AK4961」を搭載。最新の音響技術「ドルビーアトモス」にも対応している。
合計:21点/30点
3.LGエレクトロニクス「V20 PRO」(isai Beat)
ココに注目:4つのDACで構成される「32bit Hi-Fi Quad DAC」に加え、「2VRMSヘッドフォンアンプ」と「アナログボリュームコントロール(AVC)」を統合したESS Technology製「ES9218 SABRE HiFiシステム・オン・チップ(SOC)」を搭載。
合計:25点/30点
4.HTC「U11」
ココに注目:同梱のハイレゾ対応イヤホン「HTC USonic earbuds」は、エコーで耳の形を判別して、最も聞こえやすい音域に調整するキャリブレーション機能を搭載。USB Type-C接続のため、充電不要でノイズキャンセル機能も使用できる。
合計18点/30点
5.オンキヨー「GRANBEAT」
ココに注目:DACとアンプを2基ずつ備えたデュアル仕様に、オーディオ基板を分離したセパレート構造、電源のクリーン化回路など、こだわりの設計を採用。バランス出力にも対応する。
合計:29点/30点
オンキヨー「GRANBEAT」が1番人気
5機種を聴き比べた結果、最も得点が高かったのはオンキヨー「GRANBEAT」で、なんと30点満点中29点を獲得。満場一致で1位となりました。スマホの音質を高めるのではなく、DAP(Digital Audio Player)に通信機能をつけるという従来の高音質スマホとは逆の設計思想が評価された結果に。「もはやスマホというよりDAPクラスの音。高音質スマホのなかでも別格です」(山本さん)。
2位はLGエレクトロニクスの「V20 Pro」(isai Beat)で、得点は25点。「SN比が高く、ノイズが少なくてクリア。細かい音もしっかり拾って、いろんなタイプの曲に対応できる」(武者さん)、「DACをディスクリートで積む意義を感じます。アンプも積んでいるのでパワフル」(山本さん)と、パーツのこだわりから生まれた高品位なサウンドが人気を集めました。
3位に選ばれたのはソニーモバイルの「Xperia XZ Premium」(22点/30点)。「ソニーらしいまとまりのある優等生サウンド」(武者さん)、「ハイレゾスマホの先駆者なので、音作りの勘どころをわかっている感じ。個人的には結構好きな音です」(山本さん)と、ソニーらしい音作りが評価されました。
僅差で4位になったのはZTE「AXON 7」(21点/30点)。「明るく元気のあるサウンドはよかったのですが、高音質モード(スーパー)にすると立体感が崩れる印象。ノーマルのほうが好みです」(山本さん)と、サウンドモードが不評だった様子。
残念ながら最下位になってしまったのはHTC「U11」(18点/30点)。「ウリのキャリブレーション機能は、ブースト感が否めない印象。解像感も下がってしまいます」(山本さん)、「MP3を再生すると嫌味のない音になったので、配信やストリーミング音源の再生を意識した音作りなのかも」(武者さん)と、付属のハイレゾイヤホンとキャリブレーション機能に賛否が集まりました。
スマホでもいい音で音楽を聴きたい、ハイレゾ楽曲も楽しみたい、とお考えの方は、今回の採点結果を参考にしてみて下さい。