ソニーのフラッグシップ機「α9」は、メモリー内蔵のフルサイズセンサーを採用し、秒間約20コマの超高速連写に対応するのが魅力。本稿では、モータースポーツを主戦場とするカメラマン・池之平昌信さんに、その実力を評価していただきました。
ソニー α9
メモリー内蔵35㎜フルサイズ積層型CMOSセンサーを採用し、撮影データを高速に読み出せます。約20コマ/秒の連写が行えて、速いだけでなく、撮影時にファインダーが暗くなることもありません。最高ISO204800の超高感度撮影に対応するのもウリ。
●撮像素子:約35.6×23.8㎜、有効約2420万画素 Exmor RS CMOSセンサー ●背面モニター:3型144万ドット チルト式タッチパネル ●シャッター速度:1/8000~30秒 バルブ ●サイズ:W126.9×H95.6×63.0㎜ ●実売価格:51万7000円(ボディ)
【私がチェックしました】
カメラマン
池之平昌信さん
「流し撮り職人」の自動車写真家。夏場は各地のレースを巡るが、熱中症が心配なので軽量なミラーレス一眼は重宝。
クルマのわずかな挙動や背景の変化を逃さず撮れる
一眼レフと比べてファインダー表示のタイムラグが大きく、AF速度も遅いミラーレス一眼は、動体の撮影には向いていないとされてきました。しかし、最近のモデルはこれらの課題を解消しつつあり、取り回しも良いことから、プロでもミラーレス一眼を使用する人が増えています。
ソニーのミラーレス一眼フラッグシップ機α9は、高性能センサーの採用によってさらに高速化。電子シャッター使用で秒間約20コマの連写を実現し、スペックにおいては一眼レフのプロ機すら凌駕するほどです。とはいえスポーツ撮影の領域では、多くのカメラマンが一眼レフカメラを使用。今回、私の専門分野であるモータースポーツ撮影に対応できるかという視点から、本機の性能をチェックしました。
まずは、ミラーレスの泣き所ともいえるファインダー表示。タイムラグはわずかにあるものの、同社のαシリーズ従来機からは短縮されていると感じました。少し慣れれば、速い動きモノ撮影でも十分に対応できるでしょう。続いてはAF性能をチェック。正面から向かってくる被写体に対しては高い精度で合うものの、被写体が横方向や斜め方向に移動する場合は確率が少し下がり、改良の余地があると感じました。とはいえ、これは高速で走るクルマを撮影したときの話。タッチAFの精度も上々で、AF性能は一般ユーザーなら十分満足できるレベルです。
電子シャッターを使用することで秒間20コマ連写が可能で、無音撮影にも対応。ただ音も振動もないので、シャッターを押した実感は乏しく、撮影のタイミングがつかみにくいこともありました。機械式シャッターに切り替えることもできますが、その場合は連写が約5コマ/秒に制限されてしまう点は、少々残念に思うところ。
一眼レフカメラのフラッグシップ機は、「どんな被写体でも確実に撮れる」ことを目指して作られています。一方α9の特徴は、秒間約20コマという連写性能を生かして、従来のカメラでは撮れない写真を撮れること。モータースポーツでは、複数のクルマの配置や背景などのわずかな違いで写真の印象がだいぶ変わることも多いです。一眼レフのプロ機でも撮れない写真を撮れる可能性がある点でも、α9の価値は高いといえます。
実写でチェック! α9で撮りたい3つのシーン
α9の連写やAF性能は、スポーツ撮影でこそ本領発揮。「被写体を止める」「背景を流す」「高感度で止める」の3シーンを撮影しました。
※画像をクリックすると拡大できます。ただし、原寸ではなく、長辺3000ピクセルにリサイズしたものです
【シーン①被写体を止める】
高速連写によりベストな構図を押さえる
走行するバイクをブレさせず撮るには高速シャッターが必要で、バランスの良い構図を押さえるには連写が有効。1/640秒で秒間20コマ連写を用い、ベストな位置で止めて写せました。
【シーン②背景を流す】
ファインダーが暗転せず被写体を追いやすい
低速シャッターで被写体を追いながら撮って背景をブレさせる流し撮りは、ファインダー性能がキモ。わずかにタイムラグはありますが、ファインダーが暗転せず被写体を追えました。
【シーン③高感度で止める】
高感度撮影でもノイズが発生しにくい
夕暮れ時のレースでクルマを止めて写すには高感度が必要。ここでは、ISO6400にセットし、シャッター速度を1/8000秒に上げています。ノイズが少なく、画像の荒れも最小限でした。
α9はミラーレス一眼ということもあり、キヤノンやニコンのフラッグシップ機(一眼レフ)と比べて圧倒的に軽量コンパクトなのは大きな魅力。ボディ単体で比較すると、α9の質量は他モデルの半分以下です。当然ながら、カメラを保持して移動する時間が長くなるほど、体力の消耗度合いは上がります。高画質で撮影したいが、同時に機動力も求めるユーザーにはもってこいのモデルです。
撮影/高原マサキ(TK.c/静物)、池之平昌信(作例)