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2017/9/15 20:00

最新ミラーレスと割安な旧モデル、トータルではどっちが“買い”? キヤノン「EOS M6」と「EOS M3」のコスパを比べてみた

キヤノンのミラーレス一眼の現行モデルは、EVFを内蔵したEOS M5と小型でEVFを外付けにしたEOS M6、エントリーモデルのEOS M100、EOS M10の4機種がラインナップされている。このうち、中核モデルとなるのがEOS M6で初級ユーザーから中級ユーザーに人気のモデルとなっている。そこで、このEOS M6と旧モデルとなるEOS M3の画質や連写性能、価格などを比較し、その進化点や実力の程を吉森信哉カメラマンや永山昌克カメラマンの意見を交えつつチェックしてみた。後編となる今回は、連写性能や価格を中心にチェックした。

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↑EOS M3は2015年の発売から2年が経過し、スペック的には最新のEOS M6が上。では、その価格差はどの程度だろうか? トータルでお買い得なのはどちらかも気になる
↑EOS M3は2015年の発売から2年が経過し、スペック的には最新のEOS M6が上。では、その価格差はどの程度だろうか? トータルでお買い得なのはどちらかも気になる

 

【連写性能を比較】速度重視のM6と精度重視のM3

連写性能はEOS M6の秒9コマに対してM3は秒4.2コマ。数値上はM6の圧勝だ。そこで、撮影をJPEG・ラージ・ファインとし、ピントの精度も含めて比較してみた。

 

するとEOS M6は、連写は速いものの、ピントが追いついていないカットが多少あった。それに対し、M3は連写枚数は少ないもののピントの合ったカットが多かった。もちろん、撮影条件によって結果は変わると思われるが、今回のテストでは上記の傾向が見られた。

 

「EOS M6の連写はさすがに速く、同じ区間の電車を連写して、M6は27枚、M3は7枚撮影できました。ただ、ピント精度を見るとM6は27枚中11枚で、わずかにピントがずれていました。M3は7枚中6枚がピントの合った写真。結果として、どちらもベストなタイミングで電車を写し止めること自体はできました」(吉森)。

 

「EOS M6の連写は、エントリークラスのカメラとしては驚異的ですが、連写が速すぎて、ピントが追いついていないのかもしれません。ただ、多少ピントがずれていても、連写が速いほうがチャンスを逃さず撮れるので、撮っていてありがたいのは、やはりM6だと思います」(永山)。

↑「JPEG・ラージ・ファイン」で撮影。写真の位置に電車が来たタイミングで連写し、先頭が見切れるまで撮影。フレームアウトする直前のカットを掲載した
↑「JPEG・ラージ・ファイン」で撮影。写真の位置に電車が来たタイミングで連写し、先頭が見切れるまで撮影。フレームアウトする直前のカットを掲載した

 

↑240ミリ相当のレンズを使用して撮影。撮影するタイミングがよかったのか、ほぼ同じ位置で撮ることができた。EOS M6の連写が速度優先なのに対して、EOS M3は確実にピントが合ってから写しているという印象があったが、実際にピントが合っている確率も高めであった
↑240ミリ相当のレンズを使用して撮影。撮影するタイミングがよかったのか、ほぼ同じ位置で撮ることができた。EOS M6の連写が速度優先なのに対して、EOS M3は確実にピントが合ってから写しているという印象があったが、実際にピントが合っている確率も高めであった

 

【吉森信哉さんの連写性能の10段階評価】

EOS M6:7/10
EOS M3:7/10

実際に撮影した感想としては、速度のM6、慎重さのM3といった印象。結果として、同じ位置でベストな写真が撮れているのが意外。なので評価はイーブンとしたい。

 

【永山昌克さんの連写性能の10段階評価】

EOS M6:7/10
EOS M3:5/10

連写は速いほうがいいと思うが、確かにピントが合っている確率も重要だと思う。ただ、さずがに約4.2コマ/秒と約9コマ/秒の差は大きく、ここではM6を評価する。

 

【価格比較】低価格なM3も魅力的だがお買い得感は「?」

EOS M3はすでに流通在庫のみとなっており、EOS M6との単純比較は難しい部分もあるが、価格.comのEOS M3 EF-M15-45 IS STM レンズキットの8月29日時点での平均価格をチェックすると5万2144円となっている。一方、EOS M6 EF-M15-45 IS STMレンズキットは、9万8061円で4万6000円程度の差がある。

 

この価格差は、EVF(EVF-DC1)やEF-EOS Mマウントアダプターなどのアクセサリーを追加購入できる価格差だ。とはいえ、今回の実写でも見てきたようにEOS M3は2年前の機種ということもあり、スペック的な差が大きい。ただ、現時点でEOSの一眼レフユーザーで、手軽なサブ機がほしいという場合には、M3も十分魅力的だ。

 

「私が購入した時点でも比較的安価でしたが、EOS Mシリーズ用のEF-Mレンズは、手頃な価格の製品が多く、そうしたレンズを楽しみたいという人にはEOS M3も候補になると思います」(吉森)。

 

「私は、どちらかを購入するならM6を購入します。価格差の約4万6000円は、EVFなどのアクセサリーなどを揃えると必要になる金額。そのぶんをひとまず我慢すれば、最新機種を買えますからね」(永山)。

 

確かに、M3を購入してアクセサリーを揃えるとしたら、金額的にはあまり差はないようにも思える。

↑キヤノン EVF-DC1(参考価格/3万380円)。EOS M3などに使用できる外付けEVF。接眼部がチルトし、カメラの上からファインダー像を見ることができる。パワーショットG1 X マークIIなどと併用可能
↑キヤノン EVF-DC1(参考価格/2万7200円)。EOS M3などに使用できる外付けEVF。接眼部がチルトし、カメラの上からファインダー像を見ることができる。パワーショットG1 X マークIIなどと併用可能

 

↑キヤノン EF-EOS Mマウントアダプター(参考価格/9540円)。同社の一眼レフ用レンズをEOS Mシリーズに取り付けるためのアダプター。AFやAEなども問題なく機能するので、EOS一眼レフユーザーなら、持っておきたい
↑キヤノン EF-EOS Mマウントアダプター(参考価格/9540円)。同社の一眼レフ用レンズをEOS Mシリーズに取り付けるためのアダプター。AFやAEなども問題なく機能するので、EOS一眼レフユーザーなら、持っておきたい

 

【吉森信哉さんのコスパの0段階評価】

EOS M6:6/10
EOS M3:7/10

最新機種を見てしまうとやはり新型が欲しくなるが、現時点でM3ユーザーということもあり、購入するならM6が欲しい。ただ、M6がもう少し安くなるのを待ちたい。

 

【永山昌克さんのコスパの0段階評価】

EOS M6:6/10
EOS M3:6/10

M3が安いといっても性能差を見ると、お買い得かは悩んでしまう。M6はやや高価な印象だが、ミラーレス機は進歩が速く、その時々の最新機種を購入するのがいい。

 

【今後の価格動向予想】値動きは激しく様子見もアリ

EOS M6は入門~中級機に該当するので、価格変動は比較的激しい。発売からしばらくは価格が低下しがちなので、ある程度、様子を見てみるのもいいだろう。ただ、すでに多少は価格が下がっている時期ではあるので、すぐに使いたいなら購入してしまっても問題ない。では、今後はどういった価格変動をしていくのかを、「価格.com」に掲載のEOS M3ダブルズームキットの平均価格グラフを参考に予想してみよう。

↑グラフの青い線が価格情報サイト「価格.com」でのEOS M3ダブルレンズキットの平均価格(赤い線は最安値)だ。初値は9万7566 円で半年程度で7万円台まで下がっている。その後は6万5000円~ 8万円程度の範囲で細かく変動している。※2017年8月30日現在
↑グラフの青い線が購買支援サイト「価格.com」でのEOS M3ダブルズームキットの平均価格(赤い線は最安値)だ。初値は9万7566 円で、概ね半年間程度で8万円台、1年間程度で7万円台まで下がっている。その後は、M6登場のアナウンスの時期まで7万円台から8万円台で推移している。(2017年8月30日時点)

 

EOS M3は、2015年3月に発売されたが、そのときのダブルズームキットの初値は9万7566円となっている。この価格は、EOS M6ダブルズームキットの初値12万6359円よりも3万円近く安い。M6は機能や性能が上がっているぶん、高値が付いているようだ。

 

EOS M3の発売後の価格動向を見ていくと、最初の半年で7万円台まで値下がりし、その後は、7万円台から8万円台で推移。M6登場時期の前後に少し乱高下しているようだが、流通在庫のみとなっている現在は、6万円台だ。つまり、最初の半年は様子を見たほうがよく、その後は比較的安定した値動きになるものと予測できる。

 

現在はM6発売から5か月ほど経過し、基本的には価格が低下している時期ということになる。そのため、いますぐに必要というのでなければ、あと1~2か月ほど様子をみても良さそうだ。もっとも、EOS M3を狙っているならその間に流通在庫がなくなってしまう可能性が高い。少しでも安くミラーレス一眼やレンズをすぐ欲しいという場合には、とりあえずEOS M3を買うという選択もアリだ。

 

【総合評価】性能重視ならEOS M6だがキットレンズを考えるとM3も魅力的

EOS M6は、とにかく連写が速く操作性も上々。一方のM3は性能はそこそこだが低価格で、マクロレンズが付く「クリエイティブマクロ ダブルレンズキット」なども用意されていたので、流通在庫が残っていれば、カメラ以外の部分にも魅力がある。

 

「M3のキットのマクロレンズは、レンズ先端にLEDライトが付いていて身近なものを撮るのにちょうどいいレンズ。このレンズ欲しさにM3を購入するというのもアリだと思います。で、M3で撮影してみて、物足りなかったらM6に買い替える。そんな買い方もいいでしょう」(吉森)。

 

「そうですね。マクロレンズは確かに魅力的です。単体で買うと3万円以上するレンズなので、予備のボディが付いてくると考えるとお得かもしれません」(永山)。

 

進化の速いミラーレス一眼だけに、購入のタイミングは難しいが、キットレンズの性能や魅力も踏まえて、どちらがお得か悩んでみる価値はありそうだ。ただ、性能差が気になるなら、最新型を購入すべし。

 

【吉森信哉さんの総合評価】

EOS M6:38/50
EOS M3:35/50

M6は連写に強いので、その点は評価したい。描写も鮮やかでボクの好みだ。M3はスペック以上にレスポンスが遅めなのがつらい。ただ、連写時のピント精度はよかった。

 

【永山昌克さんの総合評価】

EOS M6:37/50
EOS M3:29/50

連写時のピント精度は気になるが、M6の約9コマ/秒の連写は入門機としては魅力的。M3はいま、購入する気にはならないが、低価格で気軽に使える1台としては悪くない。

 

■EOS M6がオススメなのはこんな人

●小さなボディで気軽に撮りたい人
●最新機の機能・性能が気になる人
●小型機でも連写を楽しみたい人

 

■EOS M3がオススメなのはこんな人

●キットのマクロが気になる人
●低価格なミラーレスが欲しい人
●手軽なサブ機が欲しい人

 

写真/吉森信哉 解説/河野弘道 協力/価格.com

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