リコーのハイエンドコンパクトデジカメといえば、「GR」シリーズだ。筆者は初代GR DIGITALを愛用していた時期がある。28mm相当の広角レンズはスナップ撮影に便利で、常に持ち歩いて日常の何気ないシーンを撮影していた。
発色が独特で、特に青空の描写は他のデジカメとはちょっと違う感じが気に入っており、当時、数台持っていたコンパクトデジカメのなかでも、GR DIGITALの色が好きだった。
GR DIGITALが発売されたのが2005年。それから10年あまりが経過し、GRは「GR II」となった。コンパクトサイズながら、撮像素子はデジタル一眼にも採用されるAPS-CサイズのCMOSとなっており、有効画素数は約1620万画素。あまり画素数を欲張っていないところに、画質への期待が高まる。
今回は、リコー創業80周年の記念モデルである「GR II Silver Edition」をお借りして撮影を行った。こちらは、ボディーカラーや外装が特別仕様になっているが、レンズや撮像素子など基本性能は通常モデルと同一となっている。
直観的に使える秀逸なデザインと気軽に持ち出せる堅牢ボディ
まずは外観から見ていこう。見た目は、ほぼ初代GR DIGITALと同じ感じ。必要なところに必要なボタンやダイヤル類が配置され、直感的に使える。
手に持った感じは、とてもしっくりくる。マグネシウム合金のボディは堅牢で、少々荒い使い方をしてもよいという安心感がある。初代GR DIGITALのボディデザインとあまり変わっていないが、逆にGR DIGITALのデザインが優れていたという証拠でもあるだろう。本体の大きさは、ちょうどいい。ちょっとGパンの尻ポケットに入れて散歩、というのも可能だ。
個人的に、露出補正を頻繁に行うため、右手上にある露出補正レバーは重要。これがあるおかげで、素早く好みの露出に設定できる。クロップモード(通常28mm相当の画角を、35mm相当に切り替えられるモード)の際にも利用するが、個人的にはデジタルズームはまったく使わないので、ここは露出補正専用だ。
左手側の側面には、ストロボ用のポップアップスイッチと、「Effect」ボタンを配置。「Effect」ボタンを押すと、エフェクトモードを簡単に切り替えることができる。選べるエフェクトは、従来の「ポジフィルム調」や「ブリーチバイパス」に加え、新たに「HDR調」、「明瞭コントロール」、「光沢コントロール」、「雅(MIYABI)」、「鮮やか」、「人物」の6種類が追加され、全17種類に。このEffectボタンは、Wi-Fi接続や絞りプレビューボタンの機能も持つ。
左が標準モードで、右がエフェクトモード「かすか」を適用したもの。淡い色調が独特の雰囲気を醸し出している。
ストロボが付いているのはありがたい。普段あまり使わないが、いざというときストロボが使えるという安心感は、撮影を攻めの姿勢にしてくれる。
Wi-Fi経由でリモートコントロールが可能
GR IIはWi-Fi機能を内蔵している。専用スマホアプリ「Image Sync」をスマホにインストールすると、GR II内の画像を手軽に転送できる。
ただし、それだけではない。もうひとつ「GR Remote」という専用アプリが存在する。これは、ウェブブラウザから利用するウェブアプリで、専用のアプリをインストールする必要はない。スマホやタブレットのブラウザにアクセスし、GR IIとWi-Fi接続すれば使えるようになる。
GR Remoteでは、GR IIを遠隔操作できる。リモートシャッターはもちろん、タッチ操作によるAFや、ISO感度の設定や各種パラメータの調整なども行える。三脚を使った撮影をする場合や、自分を含めた記念撮影などの際にかなり便利。特にタブレットで使うと、被写体を大きく表示できるため、ピントの確認などがしやすい。手軽で高機能なGR Remoteを駆使すれば、GR IIでの撮影の可能性を大きく広げることができるだろう。
高感度に強く、悪天候や夜のお散歩もきれいに撮れる
では、実際の作例を見ていこう。下の写真の撮影時はあまり天気がよくなかったため、曇り空の下での撮影となってしまった。
早朝のヒカリエ。暗い部分のトーンもしっかり出ている。
28mm F2.8相当のレンズは、切れ味バツグン。かつ、ボケの描写も素直だ。マクロモードにすると、レンズ先端から10cmまで寄れるため、ついつい広角マクロ的な撮影をしてしまう。
3枚とも絞り開放で撮影。ピントの合っている部分はシャープ。そして、溶けるようにボケが美しい。GRシリーズを手にすると、どうしてもこのようなカットが増えてしまう。
室内や夜景を手持ちで撮影するときには、どうしても手ブレが気になる。簡単な回避方法としてISO感度を上げてシャッタースピードを上げるという方法がある。しかし、高感度になればなるほどノイズも発生する。GR IIではどうだろうか?
ISO 800での撮影。目立ったノイズが見られない。描写もISO 100のときとそれほど変わらず、良好。常用感度として安心して使える。28mm相当の広角レンズのため、手ブレしづらいという点を考えると、ISO感度はそれほど高くしなくてもよいとも考えられる。
ISO 6400での撮影。シャッタースピードは1/90秒。思ったほどノイズは気にならない。空の部分などを見ればノイズはあるのだが、ノイズを無理やり消して不自然な感じになるというよりは、細部をしっかりと描写する方向性のよう。正直、筆者としてはまったく気にならないので、高感度でもバシバシ撮影するだろう。
ISO 25600での撮影では、さすがに全体的にノイズが目立つ。非常用と考えておいたほうがいいだろう。
初代GRの系譜を受け継ぐ優れた描写力
ハイエンドコンパクトデジカメという市場を形成したフロンティアである「GR」シリーズ。その系譜は脈々と受け継がれている。GR IIではAPS-CサイズのCMOSセンサーを採用したことで、より描写力がアップし、高感度にも強くなっている。
標準的な35mm角よりやや広い28mmという画角は、使い慣れていない人だと最初はとまどうかもしれない。しかし、慣れてくるとこれほどスナップ撮影に向いた画角はないといえる。広い範囲を入れた風景写真はもちろんのこと、被写体にググッと寄っての広角マクロ撮影も楽しい。レンズ性能の高いGR IIならば、背景のボケがきれいなため、さらに広角マクロの魅力に取り憑かれるだろう。
リコーイメージング
GR II Silver Edition
実売価格9万9900円
ざらりとした手触りのレザートーン塗装を施した特別なGR II。リコー創業80周年を記念した、全世界3200台の数量限定モデル。本革のカメラケースを同梱している。
【SPEC】
撮像素子:1690万画素(有効1620万画素)CMOS
レンズ:約28mm相当(35ミリ判換算)、F2.8~F16
モニター:3.0型/約123万画素
サイズ:W117×H62.8×D34.7mm/約251g(電池等含む)
【URL】
リコーイメージング http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/
GR II Silver Edition http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gr-2/silver/
GR Remote(ウェブアプリ) http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gr_remote/
Image Sync(iOS) https://itunes.apple.com/jp/app/image-sync/id959773524?mt=8
Image Sync(Android) https://play.google.com/store/apps/details?id=com.ricohimaging.imagesync