オンキヨーグループが開発したAI(人工知能)アシスタントを搭載するスマートスピーカー2モデルが11月末に発売されました。この2モデルは、それぞれ異なるAIアシスタントに対応しており、ユーザーが自分の好きなAIに対応したスピーカーを選べるようになっている点が特徴です。
Googleアシスタント搭載の「G3(VC-GX30)」はブラックとホワイトの2色展開。価格はオープンですが、想定売価は2.5万円前後になります。
アマゾンAlexa搭載の「P3(VC-PX30)」はブラックの1色で、オープン価格。想定売価は3万円前後です。G3は家電量販店などで一般販売されますが、P3については発売当初、アマゾンのオンラインショッピングサイトで一部のアマゾン・プライム会員向けに招待制として限定的に販売されます。
オンキヨーグループは「マルチAI戦略」の名の下に、今年の春にはアップルのボイスアシスタント「Siri」に対応したLightning端子直結のイヤホン「RAYZ」シリーズや、Lightning接続のポケットスピーカー「RAYZ Rally」を発売しています。今回の2モデルは同じ戦略に続くスマートスピーカー。9月にベルリンで開催されたエレクトロニクスのイベント「IFA2017」で欧米向けモデルとして発表された製品が、それぞれのAIアシスタントの日本語対応を受けていよいよ国内で発売されます。
音楽性を重視したスマートスピーカー
今回の新製品では「新しい音体験をつくること」を目指したと語るのは、開発プロジェクトを指揮したオンキヨー AI/IoT事業戦略室 室長の宮崎武雄氏です。「AIの技術革新は日々ものすごいスピードで進んでいます。2015年にスマートスピーカーが発売されたアメリカからは、音楽を好きな方々が声で操作できるスマートスピーカーに日々馴染んで、新しいリスニングスタイルのなかに定着しつつあるという声が聞こえてきます。音声操作という新しいインターフェースも加えて、これからのスピーカーは音楽を聴くためのツールだけでなく、様々な用途に『使うスピーカー』になるだろうとオンキヨーは考えています。今回発売した新製品を皮切りに、様々なパートナーと手を組みながらスマートスピーカーの多彩な使用シーンを開拓していきたい」。宮崎氏が意気込みをアピールしました。
ふたつの新製品はともに、オーディオメーカーであるオンキヨーの独自技術を活かした「音楽好きのためのスマートスピーカー」であると宮崎氏が製品の特徴を説明しています。各製品のポイントを紹介しましょう。
Googleアシスタントを搭載する「G3」はコンパクトな本体に2cmのトゥイーター、8cmのウーファーを搭載した2ウェイ構成のモノラルスピーカーです。ウーファーは同サイズの従来スピーカーユニットに比べて約1.5倍の振幅量を持たせて、駆動力の高いマグネットを搭載したカスタム仕様。この新開発のウーファーユニットを強固なフレームで固定して剛性を高めることで、サイズを超えたパワフルな中低音が再現されます。エンクロージャーを敢えて振動させて、独自の解析技術でコントロールしながら豊かな音の響きも加えました。オンキヨーのスタッフに聞いたところ「G3はどちらかと言えばクリアで繊細なニュアンスを再現できるサウンド」であるとのこと。
アマゾンのAlexaを搭載した「P3」は、本体の正面側に2基の2.5インチ・フルレンジウーファーを搭載。背面側にデュアルパッシブラジエーターを設けて、厚みと広がりのある音を再現します。本機のサウンドの傾向は、「マッシブな低音が再現できる、エネルギッシュなアメリカンサウンド」を目指してチューニングしているそうです。
どちらのスピーカーも本体の天面に複数のマイクユニットを搭載しています。ある程度大きな音を出しながら音楽を聴いている時にも、マイクが音声コマンドを正確に拾ってくれるのか心配なところですが、そこは本体の設計ルールに従って、ノイズリダクション回路を含めたマイクシステムのチューニングを行ったことで、より正確で安定感のある性能を発揮するそうです。
その他のインターネットにつないで楽しめるスマート系サービスは、どちらも本家のスマートスピーカーと同じことができます。音楽配信サービスについては、G3がGoogle PlayミュージックとSpotify、P3がAmazon Music Unlimitedとdヒッツに対応。IPインターネットラジオはともにradiko.jpの聴取に対応したほか、P3はTuneInのサービスも聴けます。
複数のスマートスピーカーによるマルチルームリスニングについては、G3は同じGoolgeアシスタントを搭載するGoogle Homeと連携できるほか、グーグルのChromecast built-inの機能に対応するコンポーネントとWi-Fiを経由してつながることができます。
アマゾンのAlexaを搭載するスマートスピーカーには現在のところ本家の「Echoシリーズ」があります。こちらはマルチルーム再生機能の日本語対応が間もなくローンチ予定ですが、その後もEchoシリーズのAlexa搭載スマートスピーカーとはクラウドを介して同じホームネットワーク上で認識はできるものの、マルチルーム再生のタイミングがうまく同期しなかったり、いくつかの機能的な制限が生まれるようです。代わりにP3が搭載するDTSの「Play-Fi機能」を使えば、マルチルーム再生や2台のP3によるステレオ再生、Spotifyのストリーミングなど多彩なコンテンツへのアクセスが広がります。
なお、オンキヨーグループで展開するオンキヨー、パイオニアの両ブランドからはChromecast built-in、DTS Play-Fiに対応するネットワークオーディオ機器も「70機種以上」と数多くあるので、スマートスピーカー以外にもマルチルーム再生を楽しむための製品に豊富な選択肢が揃っています。
将来は家のアチコチにスピーカー&マイクが設置される?
「オンキヨーグループとして、今後も徹底してAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーの開発・販売を強化していきたい」とオンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの社長である荒木健氏が壇上で宣言しました。「音楽を通じて一人ひとりの生活を豊かにしていきたい」という荒木氏は、AIのテクノロジーを活用して、今後はさらに多様な可能性が広げられると構想を語りました。スマートスピーカーについてもG3やP3のようにリビングやプライベートルームに置いて使うタイプのものだけでなく、天井に埋め込んだり、キッチンの壁にビルトインするタイプのスピーカーに、外付けのマイクやAIコントローラーを組み合わせてスペースを有効に活用しながら設置していく方法があると指摘しました。現在は国内の住宅総合メーカーとパートナーシップを組んで、お風呂の壁面を振動させて音を鳴らす「加振器」にAIアシスタントを組み込んだBtoB向け商品開発にも取り組んでいるようです。
またGoogleアシスタントやAlexa以外にも、アメリカのSOUNDHOUND社が開発するAIアシスタント「HOUNDIFY」を組み込んだスマートデバイスや、オートモーティブ(自動車)用のインフォテインメント機器と同社のスマートスピーカーの技術をつないでいく方向にも様々な取り組みを模索しているのだとか。今回発売されたG3/P3は、オンキヨーグループのAI&スマート戦略の氷山の一角なのかもしれません。続く今後の展開も楽しみですね。