ビデオレコーダーはテレビ番組を録画する機械。それはVHSの時代から変わっていません。これまで、テレビの放送をいかにキレイに録画して便利に観るか、ということにメーカー各社は心血を注ぎ、機能・性能を進化させてきました。ところが、4月3日に都内で開催されたパナソニックのブルーレイディスクレコーダー「ディーガ」の新製品発表会のプレゼンでは、録画機能の説明を一切しない、という一風変わったものでした。その背景には、ユーザーの変化を見越したパナソニックの明確な狙いがありました。以下で、その発表会をレポートしていきましょう。
DEWKs層をターゲットとした新たなテーマが「家族をつなぐ」
パナソニックは今年創業100周年を迎えるにあたり、昨年秋から「Creative! 毎日を、ちょっとクリエイティブに。」をスローガンとした新しいプロモーションを展開中。その中心となる「Creativeセレクション」商品群に、今回発表したブルーレイディスクレコーダー「おうちクラウドディーガ」6機種が加わることとなりました。
「Creative!」の旗印のもと同社は、「提供価値の革新」と「顧客とのつながり強化」という2つの面でのチェンジを進めています。「提供価値の革新」については、4つのくらしの役立ち、すなわち「家事シェア」「おいしい7days」「健康なわが家」「どこでも楽しむAVライフ」について、それぞれに具体的に製品を当てはめ、ユーザーに新しい家電ライフを提案します。
ユーザーターゲットとして考えているのは、近年の消費文化の中心となっているDEWKs層(※)。いわゆる、共働き子どもあり世帯です。執行役員コンシューマーマーケティングジャパン本部長の河野 明氏は、同ターゲット世帯に向けた新製品のコンセプトを次のように語ります。「DEWKs層の人々は、忙しくても夫婦や家族との時間を大切にしたいと思っている。しかし、実際にはなかなか時間が取れません。あと少しだけ、家族とのコミュニケーションを充実させたい、そんな願いから生まれた『Creative!』の新たなテーマが『家族をつなぐ』です」。
※DEWKs(デュークス)……Double Employed with Kidsの略で、子どものいる共働き家庭のこと
離れて暮らす家族、同じ空間で別のことをする家族をディーガでつなげたい
同社AVC商品部の梶恵理華さんも、現代の家族の状況が今回の新製品につながったと説明します。
「離れて暮らしている親と会うのは月に1回以下が62.7%と多く、加えて、週に1回以上電話などで連絡する人もそう多くはありません。同居家族においても、全員がリビングにいながら別々の行動をとっている割合が高い。それでも、家族とのつながりを今よりもっと大切にしたいと考えている人が多いんです。そこで、同居家族、同居していない家族とほんの少しでも会話やコミュニケーションができたら素敵だな、と考え、『おうちクラウドディーガ』を提案しました」
ディーガと専用アプリを介して祖父母と写真や動画が共有できる
おうちクラウドディーガは、放送番組だけでなく、自分で撮影した写真や動画、CD音楽も楽しめるのが特徴。例えば、公園で子どもと遊んでいる最中にスマートフォンで撮った写真、動画をその場からインターネットを通じて自宅のディーガに送ることができます。自宅だけでなく、専用アプリに登録した祖父母の家のディーガにもスマホから直接送信可能。祖父母宅では、視聴中のテレビ画面に写真・動画を受信したことがポップアップ表示されるので、そのままリモコンで実行すれば、送られてきた写真・動画を簡単に見ることができるのです。「これまでは写真をプリントしたり、動画をDVDに焼いたりして郵送していましたが、ディーガならばその手間は不要。そのときの感動をすぐに共有できる良さがあります」と梶さんは説明します。
録画に言及しないのは、「録画需要が減っても使ってもらえる価値」を強調するため
さて、今回発表されたのは、11チューナー・HDD7TB搭載機など全自動録画モデル3機種と、 6チューナーモデル1機種、2チューナーモデル2機種の合計6機種。なかでも、全自動モデルの11チューナー搭載機「DMR-UBX7050」(実売予想価格23万円前後・税抜)は、ユーザーが自分で録画予約をすることなく最大10チャンネルを28日分丸々録画できるので、見たかった番組の取り逃しが防げます。
…と、録画機能も充実しているのですが、実は、今回の発表会では録画に関する言及が一切ありませんでした。その理由を河野本部長は次のように説明します。
「早晩、録画機市場は頭打ちになる。観たいときにビデオ・オン・デマンド・サービスで観ればいいと、テレビ番組は録画しないユーザーが増えていくでしょう。『ユーザーの行動が変化しても、ディーガを使ってもらう価値とはなにか』という点を考えた結果、それが、おうちクラウドによる『家族をつなぐ』という提案になりました」
なるほど、確かに「レコーダーの録画以外の価値」に焦点を当てたのは納得です。筆者の家庭でも家族4人全員がスマホを持ち、デジカメ・デジタルビデオを数台保有しているなかで、撮影した写真・動画が家の中でバラバラに存在していることに頭を悩ませていました。その点、今回登場したディーガのように、レコーダーを「テレビ録画機」ととらえるのではなく、「ホームサーバー」として位置づければ、こうした悩みが一気に解決します。スマホの「ひとり1台」が当たり前となったいま、家電がネットワークでつながることで、その役割は大きな転換期を迎えているわけですね。
音を家族で共有できるシーリングライト搭載スピーカーも紹介
発表会では、ディーガ以外の「家族をつなぐ」群として2月に発売したスピーカー搭載LEDシーリングライト「AIR PANEL LED THE SOUND」と、参考出品として今年度内発売予定の短焦点プロジェクターも紹介されました。
「AIR PANEL LED THE SOUND」は、テレビのヘッドホン端子に付属のワイヤレス送信機をつなぐことで、音声をテレビと天井のシーリングライト搭載スピーカー両方から流すことができるもの。映画やスポーツ観戦で使えば、部屋が音で包まれ、臨場感溢れる映像が楽しめるのです。つられて自然と家族がリビングに集まり、同じ空間で同じ楽しみを共有できる、という寸法ですね。
スマホの音楽を飛ばすこともできるので、環境音楽をかければ、カフェのような落ち着いた空間になりそう。子どもは勉強、お母さんは読書、お父さんは昼寝がはかどるでしょうね。ディーガも含め、家族で楽しめる未来のビジョンが見えた発表会でした。