3月にキヤノンから、EOS Kissシリーズ初のミラーレスカメラ「EOS Kiss M」が発売された。これまで同社のミラーレスカメラはEOS Mシリーズとして独自の展開を遂げてきたが、本機は一眼レフカメラ入門機のベストセラーモデル「EOS Kissシリーズ」の思想を取り入れ、初心者でも扱いやすく、しかも上位機種並みの高性能という伝統を受け継いだモデルとなっている。ここでは、その実力や操作性などを、実写を交えて紹介する。
キヤノン
EOS Kiss M
実売価格/7万9380円(ボディ)、9万5580円(15-45㎜レンズキット)、12万9340円(18-150mmレンズキット)、11万4980円(ダブルズームキット)、11万2290円(ダブルレンズキット)
EVF搭載で小さな一眼レフのような外観を持つミラーレス一眼。ボディカラーは、ホワイトとブラックの2色が用意されている。製品名がボディ上面に記されていることもあり、正面から見るとスッキリとした印象を受ける。
【基本スペックをチェック!】
最新映像エンジン採用でエントリー機とは思えぬハイスペックに!
まずは、本機の基本スペックをチェックしてみよう。
撮像素子は有効約2410万画素のAPS-Cサイズで、現行のEOS Mシリーズと同等だ(厳密には、ほかのモデルは有効約2420万画素)。一方で、映像エンジンには最新の「DIGIC8」を採用。現行のEOS Mシリーズは「DIGIC7」採用なので、それによる進化が注目される。
実際、連写速度は約10コマ/秒(シングルAF時、サーボAF時は約7.4コマ/秒)と高速化。これはEOS Mシリーズ最上位モデルの「EOS M5」の約9コマ/秒を超え、同社製一眼レフの中級機「EOS 7D MarkⅡ」と同等だ。
また、常用最高感度はISO25600とほかのMシリーズ同等ながら、拡張感度設定によりISO51200相当まで対応している。AFも像面位相差AFとコントラストAFを併用した「デュアルピクセルCMOS AF」を採用し、測距点は最大143点にアップ。より細やかなAFが可能なので、フレーミングの自由度なども高まっている。
そのほか、Wi-FiやBluetooth、NFCへの対応により、スマホなどへの画像の転送もスムーズでSNSへの画像アップロードも快適。同社のミラーレスカメラとしては初の4K動画撮影にも対応し、写真や動画撮影を存分に楽しめる仕様となっている。
【操作性をチェック!】
小型軽量ながらファインダー&バリアングル液晶搭載の本格派
次に操作性を見ていこう。まずは、ボディ背面のボタン類が右手側に集中配置されていることに注目したい。これは、EOS Kissシリーズの伝統を色濃く引き継いでいる点で、右手だけで撮影から再生といった操作のほとんどが行えるため、初心者でも迷わず操作しやすい。ちなみに、上面の撮影モードダイヤルなども右手側に配置されている。
ユーザーインターフェイスも初心者にやさしい作りとなっており、各撮影モードを使うことで得られる効果が作例の表示により視覚的にわかる「撮影モードガイド」や、説明付きで分かりやすいメニュー表示などが採用されている。
また、小型軽量ながら高性能EVFや可動式液晶を備えている点も、本機の操作性を高めている一因だ。タッチパネルの採用もうれしい。
【実写でチェック!】
携行性、AF、手ブレ補正――実に軽快に撮影が楽しめる!
実際に手にして撮影してみると、まず驚くのがその軽さだ。現行Mシリーズの最軽量モデルは「EOS M100」の約302gだが、こちらのモデルはEVFを搭載していない。EVF搭載モデルとしては、EOS M5があるが、こちらは最上位機種ということもあり約427gとやや重い。
その点EOS Kiss Mは約387gでM5よりも約40gも軽量となっている。ミラーレスカメラは小型モデルが多いこともあり、その見た目から実際よりも重く感じられるケースも少なくないが、本機は適度な大きさのグリップが備わっていることもあり、持ちやすく軽快に撮影が楽しめる。
画質も十分に高精細で、ジャイロセンサーと撮像素子からのブレ情報を活用した「デュアルセンシングIS」により、手持ち撮影を行っても高精度に手ブレが補正され、ブレによる失敗が少ない。また、高感度でもノイズが発生しにくく、夕景や夜景、室内撮影なども安心して行える。
続いて、AFと連写性能をチェック。向かってくる列車をAIサーボAFでピントを合わせながら高速連写で撮影した。動きはそこまで速くなかったものの、AFが十分に追従していることを確認できた。
また、簡単な設定でさまざまな写真表現が可能な「クリエイティブフィルター」も楽しい。写真を印象的に仕上げたい場合に活躍するだろう。
【総まとめ】
扱いやすさと高性能を両立した、入門機を超えた入門機! サブカメラにも◎
EOS Kiss Mは、軽量で操作しやすく入門機として魅力的なのはもちろん、基本性能が高く、中・上級者にとっても不満なく使用できるパフォーマンスを持っている。そのため、入門者の最初の1台としてはもちろん、同社の一眼レフのサブカメラとして捉えても活躍が期待できる1台だ。
数少ない弱点としては、専用のEF-M交換レンズの数が執筆時点で6本と少ないのが気になるところ。ただ、この点に関しても「マウントアダプター EF-EOS M」を使用すれば、ほとんどすべての一眼レフ用EF&EF-Sレンズを使用することができる。
そのため、本機で大口径レンズを使っで大きなボケ描写をしたい、超望遠レンズで遠くの被写体を大きく写したい、といった場合には、このアダプターと目的に合ったEF&EF-Sレンズを揃えるのがおすすめ。むしろ、そうしたレンズや外付けフラッシュなどの拡張性の高さも魅力の1つと言えるだろう。
協力:楽天市場