耳に装着して音楽を楽しむイヤホンは、エレクトロニクス製品の中でも古くから存在する“ウェアラブルデバイス”のひとつであると解釈することもできそうですが、そのイヤホンの中にも最近はBluetoothによるワイヤレス再生やスマホアプリと連携できる機能が搭載する製品が増えています。身に着けて音楽を聴くだけでなく、様々なスマート機能が使えるイヤホンは“ヒアラブル”と呼ばれることもありますが、日本のスタートアップ、NAIN(ネイン)もヒアラブルテクノロジーのエキスパートです。
そのネインが、身に着けて音楽再生やハンズフリー通話が楽しめるだけでなく、LINEやメールの通知を読みあげてくれるワイヤレスイヤホン「Zeeny(ジーニー)」を発売します。本日ネインが都内で新製品発表会を開催しました。
Amazon.co.jpでの予約販売は4月24日から開始。店頭では二子玉川の蔦谷家電、ビックカメラ、e☆イヤホンで5月下旬から販売がスタート予定です。価格は1万4040円。グローバルではIndieGogoでのクラウドファンディングキャンペーンも5月上旬から始まります。
カラバリはブラック/レッド、ホワイト/ターコイズ、ブラック/ゴールド、ホワイト/ローズの4色展開になります。
装着スタイルはネックバンド。左右にバッテリーパックやBTレシーバーを分散させたことで、身に着けた時の負担感を最小化するデザインとしています。右側ケーブルのインラインは3ボタンのリモコン付マイクを搭載。イヤホンのハウジングに内蔵するマグネットを背中合わせにするとペンダントのように身に着けることができます。
イヤーチップはノーマルとダブルフランジの2種類が付属。耳元によりしっかりと固定できるようにイヤーウィングもS/M/Lの3サイズを用意しています。
音声でメールやメッセージをチェック
Zeenyはどのあたりが普通のイヤホンと違うのでしょうか。本機専用のアプリ「Zeeny」をスマホにセットアップすると、スマホに届いたメールやSNSの通知を「音で聞く」ことが可能になります。例えば満員電車で手が離せないとき、屋外を急ぎ足で歩いている時に、スマホの画面に目を落とさなくても通知がチェックできるのは便利に感じられるでしょう。
スマホアプリはAndroid版とiOS版をリリースしますが、Android版ではユーザーの発声をテキスト化できる機能が加わります。つまりメールやLINEの返事を声でダイレクトに返信ができるようにもなるのです。iOS版は読み上げにのみ対応。OS間で“できること”の違いが発生していることについては、今後ソフトウェアアップデートなどにより解消が図られる見込みです。
音声で通知を読み上げてほしいアプリはZeenyの設定画面から、スマホにインストールされているアプリを対象として細かく読み上げのオン・オフが選択可能。音楽や動画コンテンツを楽しんでいる間だけ全ての通知をミュートしたいときには、ホーム画面右上にあるスピーカーアイコンをタップするとミュートの設定が切り替わります。
メールやLINEなどのSNSアプリは全文の読み上げも可能ですが、長い文書の読み上げはスキップしたくなるもの。その際にはイヤホンの曲送りボタンを長押ししたり、スマホの画面からスキップ選択できます。なお停止アイコンを押すと、そこまでに届いていた通知の読み上げがすべてキャンセルされるので注意。またメールのタイトルに「キャンペーン」など特定の文字列が入っているものは、ワードを指定して全件読み上げをキャンセルしたり条件は細かい設定が行えます。
リモコンのセンターボタンを長押しすると、ペアリングしているスマホに合わせて音声アシスタントのGoogleアシスタントやSiriが起動します。ネインの代表取締役兼CEOの山本健太郎氏は「将来はアップデートによってほかのAIアシスタントにも対応を広げたい」と語っています。
イヤホンの音楽再生の性能についても触れておきましょう。本体には10mm口径のダイナミック型ドライバーと高精度なDSPを搭載して厚みのある音を再現します。BluetoothのオーディオコーデックはaptX/AAC/SBCに対応しています。
ネイン独自のイコライザー機能「Spicetone(スパイストーン)」もZeenyに採用されています。Zeenyアプリからイコライザー機能にアクセスして、3種類がプリセットされているEQフィルターを切り替えて好みの音質が選択可能。発売後のアップデートによって、ユーザーが自身でパラメトリックEQを使って音質を調節できる機能が追加される予定です。
内蔵バッテリーによる音楽再生は最大8時間。約2時間でフル充電にできます。付属品にはノーマルタイプとダブルフランジタイプのイヤーチップのほか、耳のくぼみに掛けるシリコン製のウィングチップも含めてS/M/Lの3サイズのアクセサリーが揃います。
読み上げ機能で歩きスマホを減らしたい
記者向けに開催された発表会にはネインのCEOである山本氏が出席して、同社がヒアラブル製品に注力する狙いについて「現代人がスマホに依存していると言われている問題を解決したい。音で通知を聴いたり、応答も可能になれば歩きスマホを減らすことにつながるかもしれない」と説明しました。
LINEやメールのメッセージを音声で受けて、Android端末では応答もできる機能については、ネインが過去に発売していたAndroid端末対応のスマートイヤホン「APlay」で実現できていたことですが、Zeenyではアプリも含めてさらに使い勝手が向上しています。通勤中やオフィスで過ごす仕事時間のあいだにも音だけで通知をチェックしたり、Android端末なら音声でかんたんなメッセージを返せる機能は便利さを実感できそう。
今後の展開について、山本氏は「韓国では販売が決定している。海外でコンセプトを出展した経験が生きてきて、現在は北米や欧州、中国の小売店、代理店から問い合わせが寄せられている。今後はグローバルに展開を広げていきたい」と語っていました。またSpicetoneはアプリ単体でのローンチも検討されているそうです。
ネインが今回発売するZeenyの開発にはオンキヨーもサポートに入っています。オンキヨー、パイオニアブランドのワイヤレスイヤホン・ヘッドホンが対応する通知読み上げアプリ「Notification App」の開発にはネインが深く関わっています。両社のコラボレーションが進んで、これから色々な“ヒアラブルデバイス”が誕生することも期待しましょう。