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カメラ
2018/5/1 20:00

風景撮影の必需品!! カメラ初心者にもわかる「PLフィルター」の効果&選び方

カメラや写真の「フィルター」というと、カメラを買ったときにセットで売られることの多い「保護フィルター」やカメラに搭載されている「デジタルフィルター」機能を思い浮かべる人も多いと思います。このうち、保護フィルターはレンズの先端に物理的に取り付けて使用する、いわば“アナログフィルター”で、レンズなどと同様に光学ガラスなどで作られた「光学フィルター」です。

 

フィルムカメラの時代には、数多くの効果が得られる光学フィルターが用意されていました。しかし、デジタルカメラの時代になって、前出のデジタルフィルターや画像加工で同様の効果が得られるものが増え、保護フィルター以外は注目されにくくなってしまいました。

 

とはいえ、デジタルカメラでも光学フィルターを使用しないと同様の効果が得られないものもあります。その代表格といえるのが「PLフィルター」で、これからの季節、海や山など風景を色鮮やかに撮るのに必須のフィルターです。ここでは、PLフィルターの使い方や効果、適したシーンなどについて、カメラ初心者にもわかりやすく解説します。

↑PLフィルターは、数ある光学フィルターの中でも高価な部類に入り、写真の72㎜径の製品の実売価格で1万2210円程度。しかしながら、写真の仕上がりが劇的に変化するため、風景写真家を中心にプロ・アマ問わず高い人気を誇ります

 

イチからわかる「PLフィルター」の仕組みと使い方

PLフィルターは、Polarized Light Filterの略で「偏光フィルター」とも呼ばれ、光による被写体のテカリや空中で乱反射した光をカットし、被写体本来の色を引き出したり、被写体のコントラストをアップさせたりする効果を持つフィルターです。

 

使い方は、フィルターをレンズの先端に取り付ける点は保護フィルターなどと同様ですが、フィルターの枠が2重になっており、枠を回転させることで効果の強弱が変化する仕組みになっています。そのため撮影時には、手で枠を回転させながら、その効果をファインダーや背面モニターで確認し、最適な効果が得られる位置で枠を止めて撮影します。

↑フィルター枠が二重になっており、使用時は上の写真のように前枠を指で回転させ、ファインダーやモニターで効果を見ながら、最適な位置にセットして撮影します

 

PLフィルターの構造は、ガラスとガラスの間に「偏向膜」と呼ばれる特殊な膜を挟み込んだものとなっています。偏光膜は極細かい“すだれ”状となっていて、一定方向の光(偏光)のみを透過させます。これにより、被写体から反射してくる余計な光(偏光)をカットしたり、反射光を強調したりできるようになっています。

 

あり・なし画像比較で丸わかり! PLフィルターが役立つシーン

どういったシーンでPLフィルターが有効かというと、例えば木の葉に光が反射して白っぽく写ってしまうのを本来の葉の色に写したり、空気中の水蒸気やチリに光が反射して白っぽく写ってしまう青空を濃い青色に写す場合に有効です。そのため、風景写真の愛好家の間で多用される傾向にあります。

 

では、具体的な活用シーンを見ていきましょう。まずは、次の2枚の写真を見比べてみてください。


PLフィルターを使用せずに撮影した上の写真は葉にテカリが出ているのに対し、PLフィルターを使用した下の写真はテカリが除去され、葉の本来の色で写っています。ただし、テカリを除去すると立体感は弱くなりがちなので、ケースバイケースで使い分けましょう。

 

次の2枚も同様に、1枚目がPLフィルターなし、2枚目がPLフィルターありで撮影したものです。

PLフィルター不使用の上の写真では、空気中の水蒸気や細かいチリなどに光が乱反射して、空が白っぽく写っています。また、木の葉も多少沈んで見えます。一方、PLフィルターを使用した下の写真では、空の色が濃くなり、木の葉のテカリも除去されて葉が浮き上がって見えるのがわかります。結果、画面全体のコントラストが上がって、色鮮やかな写真に仕上がっています。

 

このほか、湖や池などの水面の光の反射を取り除いて水中の様子を鮮明に写したり、ガラスに反射した光を取り除いてガラスの奥にある被写体を鮮明に写したり、といったことが可能です。

 

次の写真は池に浮かぶスイレンの花を撮影して比較したものです。

PLフィルターなしの上の写真では、水面や葉に光が反射して白っぽくなり、花の印象が弱く感じられます。一方、PLフィルターを使用した下の写真では、水面や葉に反射した光が除去され、花や葉が引き立って見えるます。

 

PLフィルターというと風景撮影に使用するイメージが強いかもしれませんが、次の写真のようにショーウィンドウなどのガラスの反射を取り除きたい場合にも有効です。

PLフィルターなしの上の写真では、ガラスの反射によりガラスの奥にある被写体がくすんで見えますが、PLフィルターを使った下の写真では、被写体を鮮明に写すことができました。

便利だが万能ではない――PLフィルター使用時の注意点

このように風景などを撮る際に非常に効力を発揮するPLフィルターですが、デメリットもあります。それは、一定方向の光以外をカットするため、光の総量が少なくなり、撮像素子に届く光が一般に2~3段程度暗くなってしまう点です。そのため、保護フィルターのように常用するには向かないフィルターといえます。

 

また、一定方向の光のみを透過させるため、角度の異なる光が複数存在する場合には、必ずしも効果が得られません。特に広角レンズで広い範囲を写すような場合には、PLの効果にムラが出てしまうことがあります。そのため撮影時には、効果を試してみて思いどおりの効果が得られない場合には、使用しないほうが良い結果が得られるといったケースもあります。

 

同じようで全然違う!! 失敗しないPLフィルターの選び方

一見、どれも同じように見えるPLフィルターですが、購入する際はいくつかの注意点があります。

 

①使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶ

まず1つは、当然ながら使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶこと。特にレンズの径よりも小さなものは、物理的に取り付けることができません。

 

ただ、フィルターとしては高価な部類に入るものなので、複数のレンズで共用したいというケースもあると思います。そうした場合は、いちばん径の大きなレンズに合ったものを選んでおけば、「ステップアップリング」というフィルター径を変換するリングを併用することで使用することが可能です。この場合も、広角レンズにステップアップリングを使用すると、画面の四隅がけられて暗く写る場合があるので、注意が必要です。

↑ステップアップリングは、レンズとフィルターの間に取り付けることで、レンズのフィルター径よりも大きな径のフィルターを取り付けることができます。様々な組み合わせの製品が用意されているので、使用するレンズとフィルターの径に合ったものを購入しましょう

 

②「サーキュラーPL」を選ぶべし

次の注意点としては、必ず「サーキュラーPL」と呼ばれるタイプのものを用意すること。PLフィルターには、通常のPLフィルターとサーキュラーPL(円偏光)フィルターの2種類があり、通常のPLフィルターを使用すると構造上AFなどが正確に機能しない場合があります。そのため、購入の際はサーキュラーPLと記されているか確認するようにしましょう。

↑サーキュラーPLかどうかは、多くの場合、製品のパッケージやフィルター枠に記載されています。「CIRCULAR P.L」「C-PL」などと記載されている場合もあります

 

③広角レンズで使うなら「薄枠タイプ」がベター

こちらは必須ではありませんが、特に広角レンズで使用するフィルターは、できるだけ「薄枠タイプ」と呼ばれるものを使用すること。これは、前に記したステップアップリング使用時と同様の理由で、フィルター枠の太いものを使用すると画面の四隅がけられてしまう(暗く写る)場合があるためです。ちなみに、この薄枠タイプのフィルターは、多少強度の面で弱い製品もありますが、標準や望遠レンズに使用しても問題はありません。

 

④防汚コート・撥水コート仕様ならお手入れ簡単!

最後も必須とはいえないものの、フィルター表面が防汚コートや撥水コートされたものを選ぶことです。特にPLフィルターはフィルターの枠を手で回転させて使用するため、フィルター表面をうっかり指で触ってしまうことも少なくありません。また風景撮影では、土ぼこりが舞っていたり、雨に降られたりするケースもあります。

 

そうしたとき、防汚コートや撥水コートがされていると、レンズクリーニングクロスなどでフィルター表面を軽く拭うだけで撮影を続行することができ、フィルターも傷みにくいため長い間使用することができます。

↑防汚コートや撥水コートされた製品は、汚れや水を弾く性質があり、これらの除去も簡単。油汚れにも強いので、万が一フィルター面に触って指紋などが着いてしまっても安心です

 

以上のような注意点を高いレベルで実現している製品は多くはなく、マルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」など、フィルターメーカー各社の看板商品になっています。決して安価ではありませんが、寿命も長い製品なので購入して損することはないでしょう。何より、撮影中の安心感が抜群に高いのが魅力です。

↑マルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」。同社の最上位グレードの製品で、防汚コートや撥水コートの採用はもちろん、静電気が発生しにくく、光の透過率が高くてファインダーの視野が明るいなど、数多くの利点を備えた使いやすい製品です

 

PLフィルターを使ってワンランク上の写真を撮ろう!

フィルターの構造などを考えてしまうと、少しとっつきにくい印象もあるPLフィルターですが、その使い方は簡単で、フィルター枠を回転させるだけで景色が劇的に変化していく様子はちょっと感動的ですらあります。

 

特に春から秋にかけては、風景が刻一刻と変化して写真を撮るのが楽しい季節。そうした風景をより鮮やかに印象的な写真に残すには、PLフィルターは必須アイテムです。ぜひ、今年はPLフィルターを使用して、ワンランク上の写真を狙ってみましょう。