一眼レフの分野でトップシェアを誇るキヤノンは、最近、急激にミラーレス一眼に力を注ぎ始めました。なかでも最新作の「EOS Kiss M」は、同社の技術力を集結した今春最大の注目モデルです。今回は、そんな同モデルの実力を画質・休日力・旅行力の3分野で判定。休日力は家族の週末などにおける使い方での実力を、旅行力は旅先での使い勝手について評価しました。
Kissブランド初のミラーレスが早くも人気
キヤノンは、フィルム時代から続く入門者向けレンズ交換式カメラの定番シリーズ「Kiss」の名を冠した初のミラーレス一眼「EOS Kiss M」を今年3月に発売。ブランド力の高さに加えて、気軽に持ち運べる小型軽量ボディや充実した高機能が評価され、早くも人気機種となっています。
特に注目は、連写とAFが進化したこと。これまでの一眼レフのKissシリーズに遜色ない動体撮影性能を備えているのです。激しく動き回るペットや子どもの撮影用にもうってつけといえます。
また既存モデルでは、コストパフォーマンスに優れた「EOS M100」も狙い目。電子ビューファインダーは非搭載ですが、よりビギナー向けのシンプル操作やオプションのカバーを付けて着飾れる薄型ボディが特徴になっています。
【今回テストしたモデルはコレ!】
一眼レフを上回る高速連写と広範囲AFを実現
キヤノン
EOS Kiss M
実売価格9万4620円(15-45キット)、11万8560円(ダブルズームキット)
【2410万画素】【秒約7.4コマ連写】【常用最高ISO25600】【約387g】
新エンジン「DIGIC 8」の採用によって連写やAFが高速化したほか、無音で撮影できるサイレントモードや、目にピントを合わせる瞳AF、4K動画などの機能に新対応。また、モニターが前モデルのチルト式からバリアングル式に変更になり、初級者向けのガイド機能もいっそう充実しました。
SPEC●撮像素子:有効2410万画素APS-C型CMOSセンサー ●レンズマウント:EF-Mマウント ●液晶:3.0型、104万ドット ●メモリ:SDXCほか ●サイズ:W116.3×H88.1×D58.7mm
【特徴01】
同社ミラーレスでは初のバリアングル背面モニター
上下左右に可動するバリアングル液晶を搭載。ラクに自分撮りができるほか、カメラの横/縦位置を問わず、自由なアングルから撮影しやすいです。
【特徴02】
AFエリアが広くなり構図の自由度が大きく向上
独自の技術「デュアルピクセルCMOS AF」がさらに進化し、測距点は画面のほぼ全域をカバー。画面端にある被写体にもスムーズに合焦します。
画質・休日力・旅行力の3分野で実力を判定!
<評価内容>
●画質
色味:オート撮影時の色味を判定。偏りや、実際と記憶のどちらに近い色味かをチェックしました。
高感度:各機種の最高感度まで、同一条件でテスト。ノイズと解像度のバランスを確認しました。
※テスト条件:色味は、屋外にて感度を最低感度に設定し、そのほかの機能を揃えて撮影。高感度は、屋内にて条件を揃えて撮影。掲載カット以外にも、全感度で撮影して評価しました
●休日力
AF:AFの範囲や速度、精度。子どもやペットなど動き回る被写体を追えるか注目しました。
フィルター機能:画像をデジタル加工して個性的な描写にするフィルター機能。数と効果をチェック。
スマホ連携:撮影中のリモコン機能や、撮影後の転送機能などの使い勝手を判定。対応機能もまとめました。
●旅行力
軽さ:撮影時、携帯時ともに重要なフルセットでの質量を実測。軽いほど持ち歩きはラクです。
バッテリー性能:ミラーレス一眼の泣き所のバッテリー持ちを比較。USB充電への対応も確認しました。
モニターの見やすさ:屋外で撮ることの多い旅先。晴天下での背面モニターの見やすさをチェックしました。
【画質】8/10
色味:☆×4
やや赤っぽいが見栄えのする色
わずかにマゼンタに寄った発色で、実際よりもレンガの色が赤っぽく感じます。コントラストはやや高めで、適度なメリハリがあります。
高感度:☆×4
ISO6400まではノイズが目立たない
ISO12800では暗部ノイズがやや目立ちますが、それでも小さな印刷やウェブ用途なら十分に使えるレベル。ISO25600では、ノイズリダクション処理の影響で細部の解像感が低下します。
【休日力】14/15
AF(測距点の数&範囲):☆×5
スピーディなAF性能を実感
デュアルピクセルCMOS AFの測距点は143点で、横88×縦100%の範囲をカバー。実写では高速で正確なAF性能を確認できました。
フィルター機能:☆×4
撮影時または撮影後に適用可能
油絵風や水彩風、ソフトフォーカスなど7種類のフィルター効果と4種類のHDR効果を用意。撮影時だけでなく、撮影後の適用も対応可能です。
スマホ連携:☆×5
【Bluetooth:○、NFC:○、QRコード:×、自動転送:○】
撮影直後に自動転送できるのがラク!
スマホやタブレットからのリモート撮影や画像確認、撮影直後の画像自動転送が可能。QRコードはアプリダウンロード用のものは有り。
【旅行力】11/15
軽さ(※):☆×4
Kissシリーズでは最小軽量ボディ
総質量は540g。EVF付きでこの軽さは見事です。ボディだけでなく、キット付属の標準ズームが約130gと軽量なことも特筆に値します。
※:ボディ+キットレンズ+カード+バッテリー+ストラップの合計(編集部調べ)
バッテリー性能:☆×2
予備バッテリーを用意したい
CIPA準拠の撮影可能枚数は、ファインダー撮影でも背景モニター撮影でも約235枚。少々心もとない枚数です。USB充電非対応も残念。
モニターの見やすさ:☆×5
屋外でも視認性は良好
十分な輝度があり、屋外でもくっきり見られます。モニターを一時的に明るくする機能をカスタムボタンに割り当てられる点も便利です。
EOS Kiss Mの総合評価は?
ビギナーでも扱いやすいEOS Kissシリーズの伝統と、最新技術満載のEOS Mシリーズの高機能が融合した、小型軽量で使い勝手に優れたミラーレス一眼です。樹脂外装のボディにあまり高級感がないことと、バッテリー持久力の低さは惜しいですが、実用性は極めて高いです。
コスパ最重視ならコッチがおすすめ! 上位機と同じセンサーを備えたローエンドモデル
キヤノン
EOS M100
実売価格6万1630円(15-45キット)、6万9800円(ダブルズームキット)
【2420万画素】【秒約4コマ連写】【常用最高ISO25600】【約302g】
EOS Mシリーズのローエンドに位置するモデル。センサーやエンジンは上位モデル「EOS M5」や「EOS M6」と同等のものを搭載し、49点測距のデュアルピクセルCMOS AFにも対応。より薄型軽量なボディと、よりシンプルな操作系、おしゃれに着飾れるアクセサリーなどが魅力です。
SPEC●撮像素子:有効2420万画素APS-C型CMOSセンサー ●レンズマウント:EF-Mマウント ●液晶:3.0型、104万ドット ●メモリ:SDXCほか ●サイズ:W108.2×H67.1×D35.1㎜
【特徴01】
ファッション感覚で着せ替えが楽しめる
アクセサリーとして9種類のフェイスジャケットが同社オンラインショップで限定発売中。3色のボディカラーと組み合わせて、27通りのスタイルが選べます。
【特徴02】
ビギナーでも迷わず扱えるシンプルな操作性
ボタンやダイヤルの数は最小限に抑えられ、ほとんどの操作をタッチパネルによって直感的に行えます。ビギナーでも安心!
【EOS Kiss Mとココが違う!】
電子ビューファンダーはオプションでも非対応
標準でもオプションでも、電子ファインダーには非対応。液晶モニター撮影に限られるので、望遠レンズ装着時はやや安定感に欠けます。またAFや連写の性能も控えめ。
【レンズも注目】
この1本で写真が変わる! 軽量コンパクトで描写性能に優れたEF-M
キヤノンのミラーレス用「EF-Mレンズ」は現状では6製品。他社に比べて少なめであり、特にボケを楽しめる明るいレンズがあまりないのが残念です。ただ、描写力と携帯性はいずれも良好。ここでは、比較的ボケに有利な単焦点レンズと、利便性に優れた高倍率ズームを紹介しましょう。
大きなボケが欲しいならコレ!
キヤノン
EF-M22mmF2 STM
実売価格2万4060円
【焦点距離35mm相当】【フィルター径43mm】【全長23.7mm】【約105g】
焦点距離が短いため、あまり大きなボケは期待できませんが、圧倒的な薄さと軽さを誇り、描写性能にも優れたパンケーキタイプの単焦点レンズ。最短撮影距離は0.15mと短く、マクロ表現も楽しめます。
ワイドもテレも1本で撮りたいならコレ!
キヤノン
EF-M18-150mmF3.5-6.3 IS STM
実売価格5万2740円
【焦点距離29〜240mm相当】【フィルター径55mm】【全長86.5mm】【約300g】
EF-Mレンズでは最大となる約8.3倍の高倍率に対応しながら、質量わずか約300gの軽量コンパクトを実現。0.25mまで寄れる近接性能や、シャッター速度換算で約4段分の手ブレ補正も魅力です。
文・作例撮影/永山昌克