話題のタムロンのフルサイズEマウント用レンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)」がついに発売されましたね。このレンズは28mmから75mmの焦点距離をカバーするF2.8通しの大口径標準ズームでありながら、実売価格で10万円を切る価格帯が大きな特徴となっています。何を隠そう実は筆者もEマウントユーザーでして、このレンズには注目していました。ということで、早速レビューしてみたいと思います。
Gマスターと同等のF値と焦点距離をカバー
ソニーのフルサイズEマウントの標準ズームレンズと言えば、Gマスターの名を冠した「FE 24-70mm F2.8 GM(以下、SEL2470GM)」というレンズがフラグシップに君臨しています。筆者も愛用し、その画質には大いに満足しているのですが、実売価格が25万円前後と高額なため、いくら標準ズームと言っても最初の1本としてはなかなか手を出しづらいもの。
そこで、SEL2470GMと同じF値とほぼ同等の焦点距離をカバーしつつ、価格は半分以下という本レンズに注目しているEマウントユーザーも多いはず。まずは製品概要を見てみましょう。
α7シリーズのボディと相性ヨシ!
今回は筆者が普段から愛用している「α7II」に本レンズを装着。鏡胴は樹脂性素材を採用しているため、重量は550gで大口径ズームレンズとしては軽量な部類に入ります。SEL2470GMが1kg弱であることを考えると、機動力の高さを感じます。
サイズ感ですが、SEL2470GMと比較するとそのコンパクトさは一目瞭然。鏡胴だけでなくレンズ口径も大きく違うので、当然サイズ感も違ってくるのですが、普段からヘビー級とも言えるSEL2470GMを使用している筆者としては、その軽量さとコンパクトさがとても印象的です。
重量が約600gのα7IIに約1kgもあるSEL2470GMを装着すると、明らかにフロントヘビーとなり、携行時や撮影時などバランスがやや悪く感じることがあります。その点、本レンズであれば重量バランスは良好。特に撮影時にカメラを構えた際のホールド感は違和感がなく、フットワークの軽い撮影ができる印象です。
一方、軽量コンパクトとはいえ、そこはF2.8通しの標準ズーム。それなりに迫力はあります。フィールドワークや三脚固定時などは、SEL2470GMにも勝るとも劣らない大口径レンズらしい存在感があり、撮影者をその気にさせる雰囲気を漂わせています。
広角側で4mm、望遠側で5mmの焦点距離の差はいかに?
本レンズのスペックを見たときに、SEL2470GMと比べて微妙にずれてるな? という印象でした。というのも、SEL2470GMは、24-70mmで、ニコンやキヤノンにも同じF2.8通しのレンズがラインナップされているほど、一般的な焦点距離です。ところが、本レンズは28-75mmと広角がわずかに狭く、望遠がわずかに長いという仕様。そこで、両者の画角の違いを比べてみました。
まずは広角側。両レンズの広角端で、同じ位置から撮影しています。
一見、大差ないように見えますが、注目していただきたいのは、24mmは左右にポールのようなものが画角に入っていること。28mmだと両サイドとも画角から外れてしまっています。広角4mmの差は数値以上に大きいと感じました。
一方の望遠側は、5mmの差があるのでもちろん画角に違いは出るのですが、広角側ほど大きな違いは感じられません。撮影スタイルにもよるとは思うのですが、70mmを使用していて「あと5mm足りない……」と枕を涙で濡らすシチュエーションはあまりないと筆者は感じました。
まとめると、筆者の感想としては、望遠の恩恵はあまり感じられず、逆にシーンによっては広角側が物足りなく感じることはありそうです。
彩度・ボケ感ともに合格点
やはりF2.8通しの大口径レンズといえばボケ感を試したくなりますよね。そこで、彩度やボケ感を試してみます。撮影当日は曇り気味の空模様でしたが、そのぶんしっとりとした写真が撮れました。
まず彩度ですが、少し明るくするために露出補正+1で撮影したところ、ビビッドな色合いに。カラフルさを強調したい被写体の場合は、これぐらい鮮明な彩度のほうが良作が生まれやすいでしょう。
次にボケ感ですが、さすがF2.8と言ったところでしょうか、強調したい被写体以外を簡単にボケさせることができます。ただし、ボケが気持ちいいからといって、これみよがしに開放しまくっていると肝心なところまでボケてしまうという「大口径レンズ初心者あるある」に陥ってしまうので、ある程度の加減と慣れは必要です。
暗い場所でもしっかり解像する
続いて、暗所の性能について試すべく、知人のライブにて作例を撮影させてもらいました。ライブ写真というものは「暗い」「派手なアクション」「ストロボ発光禁止」という三重苦。非常に悪条件のなかでの撮影になるので、レンズの明るさはもちろん、カメラの設定もシビアに。
今回は、ド派手なアクションにも追従できるシャッタースピードを軸に、ISO感度と絞りに負荷をかけて連写するというスタイルで撮影。ミスショットもありましたが、成功したショットではライブハウスの雰囲気を表現することができました。
毛1本まで解像する動物写真
最後に動物写真だけは外せません。作例をご覧いただければ一目瞭然ですが、SNSなどにアップされているスマホで撮影された写真とは一線を画す仕上がり。背景のボケもさることながら、毛や瞳の解像感が大満足の域に達しています。このあたりは、フルサイズセンサーの実力を遺憾なく引き出した絵づくりと言えるでしょう。
【まとめ】タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXDは買い?
さて、今回レビューした28-75mm F/2.8 Di III RXDですが、率直な感想として絵作りはSEL2470GMには及ばないものの、価格以上の性能は十分に有していると感じました。もし、話題のα7IIIを新調するなどして、フルサイズEマウントユーザーとしてデビューするのであれば、コスパや扱いやすさの面から最初の1本として特におすすめできます。
競合するレンズとして、カールツァイス銘の「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」(実売価格11万3000円)やソニーGレンズの「FE 24-105mm F4 G OSS」(実売価格16万1600円)なども候補に挙げられますが、どちらも明るさが開放F4。焦点距離に違いがあるとはいえ、コストパフォーマンスやそれらに勝るとも劣らない画質性能を考えると、本レンズを筆頭候補に挙げてもよいかもしれません。どれを選ぶにせよ、ユーザーの選択肢が広がるのは喜ばしい限りです。
低価格や軽量コンパクトなだけでなく、絵作りなどの扱いやすさも本レンズの優れている点。初心者から中級者まで幅広く支持されるレンズと言えるでしょう。