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2018/6/22 17:50

イヤホンなのに音楽が聴けない? ボーズが睡眠用イヤホン「Bose sleepbus」を発表

現代人の心のストレス、身体の病は「不眠」にも起因しているといわれています。特に人口が密集する都市部に暮らしている方は、日々様々な種類の騒音に囲まれがちなので、不眠・寝不足に悩みやすいともいえるのではないでしょうか。

 

これまで不眠への対策としては食生活を改善したり、寝付きを良くするためのサプリメントや薬剤を採り入れる方法が一般的だったかもしれません。今回筆者はアメリカの人気オーディオブランドとして知られているボーズが「睡眠改善をサポートするイヤホン」という、目の付け所が斬新なスマートデバイスを開発したと聞いて、ニューヨークで行われた新製品発表会を取材してきました。

 

↑心地よい眠りをサポートしてくれるイヤホンを多くの人々が待ち望んでいるであろう、大都市・ニューヨークでボーズの新製品発表会が開催されました

 

音楽を聴けない睡眠用イヤホンとは?

ボーズが発表した新製品は「Bose noise-masking sleepbuds」という、見た目には完全ワイヤレスイヤホンのかたちをした画期的なデバイスです。円形のケースのフタをスライドさせて開けると、中からとても小さなイヤホンがふたつ顔をのぞかせます。ボーズからは音楽リスニング用の完全ワイヤレスイヤホン「Bose SoundSport Free wireless headphones」が既に発売されていますが、こちらの新製品はサイズが一回り以上もコンパクトで軽いのが特徴です。

 

↑完全ワイヤレスイヤホンのようなルックスの「Bose noise-masking sleepbuds」。アルミケースがとてもスタイリッシュです

 

Bose noise-masking sleepbuds

実売価格3万2400円

 

このBose noise-masking sleepbuds(以下:Bose sleepbuds)は、どんなことができる製品なのでしょうか。ボーズの新製品開発チームでシステムエンジニアとして活躍するダニエル・リー氏に訊ねてみました。

 

↑ケースから取りだしたイヤホンはとてもコンパクト。片方の質量は約14g

 

Bose sleepbudsはボーズが新たに開発した「ノイズマスキングテクノロジー」を搭載した入眠サポート用のイヤホンです。ケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンのデザインによく似たBose sleepbudsの本体にはフラッシュメモリーが内蔵されていて、10種類の「sleeptrack」がプリインストールされています。使用時にはまず本体を両耳に装着して、BLE(Bluetooth Low Energy)に対応するiPhoneまたはAndroidスマホとペアリングします。

 

↑専用アプリ「Bose Sleep」のシンプルなメインメニュー

 

スマホに専用アプリ「Bose Sleep App」をインストールしておくと、10種類の音源選択やボリューム操作、目覚ましやスリープタイマーなど本機の機能が設定できるようになります。ちなみに10種類のsleeptrackとは「いびき」や「ざわつく人の声」「交通騒音」など、不眠の原因になりがちな生活ノイズを効果的にマスキング(打ち消す/覆い隠す)するためにボーズが独自に開発した技術に基づいて作られた特殊な音源です。

 

↑アプリには10種類のsleeptrackがプリインストールされています。今後ソフトウェアのアップデートによって、新しいトラックが次々と追加される予定なのだとか

 

Bose sleepbudsはイヤホンの形をしていますが、ユーザーが好きな音楽を聴くためのものではありません。スマホとペアリングしてアプリから操作するように設計されていますが、Bluetooth接続はイヤホンをリモコン操作するためのものでしかなく、スマホから音楽をストリーミング再生したり、楽曲ファイルをイヤホンの内蔵メモリーに転送・保存して聴くといった使い方はできません。「なぜならノイズマスキングとは科学であり、単にイヤホンを装着してリラックスできる音楽を再生するだけでは心地よい睡眠をサポートすることができないからです」とリー氏が本機ならではの仕様の理由を説明しています。

 

また、ボーズといえば独自のアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するイヤホンやヘッドホンがあまりにも有名ですが、Bose sleepbudsに搭載されているのはノイズキャンセリング技術とは異なるものです。

 

「昼間に目の覚めている状態で生活している時に、周囲のノイズを消して集中力や生産性を高めるためにはQuietComfortシリーズのような当社のアクティブノイズキャンセリング技術を搭載したオーディオ機器が有効かもしれません。でも、夜間に眠るときには必ずしもそうではありません。静かな環境の中できこえてくるノイズの性質を理解して、より効果的なノイズマスキングを実現することに私たちボーズの開発チームは注力してきました」(リー氏)

 

↑Bose sleepbudsの開発に携わったシステムエンジニアのダニエル・リー氏

 

リー氏によれば、QuietComfortシリーズのようなアクティブノイズキャンセリングヘッドホンは、継続的に響いているロードノイズやファンノイズのような低域付近の不快なノイズを打ち消す効果には優れているものの、独自のアルゴリズムはいびきや人の声を消すためには設計されていないそうです。

 

またQuietComfortシリーズはそもそも音楽を聴くためのポータブルオーディオ製品なので、大型のバッテリーにDSP、より強力な通信用モジュールなどを搭載する必要があります。そのためサイズが大きくなってしまうので、飛行機に乗って旅する時など一時的に静かな環境を得ることには向いているものの、耳や頭に装着して毎日ベッドで眠る時に使うデバイスとしては最適ではありません。

 

ボーズが得意とする「音」まわりの研究技術を活かしながら、睡眠をサポートすることに特化したイヤホンを、「Comfortable(快適)・Efficient(高効率)・Effective(効果的)」であることを重視して作った製品がBose sleepbudsなのです。だからこそのこのサイズ感、シンプルな操作性が実現できたのだといえそうです。

 

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